転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~

夜州

第六話 王都到着


 聖女を乗せた馬車一向は王都に到着した。カインの護衛にあたっていた二人の近衛騎士が先行して王都に向かい、前日までには王都に住む住民にまで流布されていた。
 王都の門を潜ると、大勢の住民が馬車の通り道に溢れ出し、衛兵が交通整理に追われている。
 聖女を一目見ようと群がる住民にカインとシルクの二人は驚いた。

「まさかここまで人が集まっているなんて……本当にすごい」

「聖女様を一目見たいと集まっているんだね。なんか私たちの結婚のパレードで祝福されているみたい」

「……」

 シルクの想定外な妄想に苦笑いしながらも馬車は王都を進んでいる。住民街を抜け貴族街を通り馬車は王城へ到着した。
 カインたちは先行して馬車を降り、王城の前に並んでいる出迎えの貴族たちの列に一緒に並ぶ。
 正面に着けられた馬車からは、真っ白で金の刺繍が施されているローブに正装した聖女が、侍女に手をとられ馬車から降りてきた。
 カインは数日一緒に同行していたので気にしていないが、初めて見る貴族達はその美しさに見惚れていた。

「まだ幼く見えるのに神々しいまでの美しさだ……」

 貴族達からそんな言葉が漏れる。
 エスフォート王国に派遣されている司教がまず挨拶を交わし、聖女を王城へと案内する。
 カイン達貴族一向もその後に着いていく。そして司教と聖女は一度控え室に向かい、カイン達下級貴族達はそのまま謁見の間まで進んだ。
 出迎えに王城の外に並んでいたのは、子爵以下下級貴族達となっており、上級貴族達は謁見の間にすでに並んでいる。カインも同じ子爵の列に並ぶ。
 そして王家の面々が登場し、国王が玉座に座った。

「それでは、聖女様の登場になります」

 係の者が声を上げたあと、扉が開かれ聖女と司教の二人が並んで入場してくる。
 玉座の手前にて二人は止まり、膝をつき頭を垂れる。

「面を上げよ」

 国王の声が通り、司教と聖女の二人は顔を上げる。
 国王は笑みを浮かべながら聖女に声を掛ける。

「遠路ご苦労であった。護衛からすでに報告は受けておる。襲撃の件もな。幼いながらもうちの護衛は優秀であろう?」

「はい、護衛にあたっていただいたカイン様には何度も助けていただきました。カイン様がおりませんでしたら、ここまで辿り着けることもなかったでしょう」

 聖女は神々しいまでの笑みを浮かべ、国王の問いに答えた。国王はその言葉に頷き、宰相のマグナに小声で話しかける。
 そしてマグナから言葉が続けられる。

「シルフォード子爵、前に」

 いきなり呼ばれ、少し動揺しながらもカインは列から出て、司教の隣まで歩き同じように膝をつき頭を垂れる。

「カイン・フォン・シルフォード・ドリントル、ここに」

「面を上げよ」

 カインは国王の声に顔を上げた。

「カイン、この度は聖女殿の護衛ご苦労であった。お主には別途褒美を取らせる。詳細はマグナから後で聞くと良い」

「ははっ、ありがたき幸せ」

 カインの返事に頷いた国王はそのまま言葉を続ける。

「聖女殿は長旅で疲れておるだろう。謁見はここまでとする。聖女殿は本日はゆっくりと休まれよ。司教殿、後はよろしく頼む」

 国王の言葉にカインの隣にいる司教は頷いた。
 謁見は終わり散会していく。カインは別室に呼ばれいつもの応接室に案内されていた。
 少しの時間が空き、国王とマグナ宰相、エリック公爵、ダイム副騎士団長が入ってきた。

「待たせたな、では、道中の話を改めて聞こうか。多少は護衛の近衛から聞いておる。他に何かあるか」

 国王の言葉にカインは頷いた。
 教皇派と聖女派の確執、このエスフォート王国内で聖女を亡き者にしようと暗躍している者がいること。道中、食材に毒が仕込まれていたこと。魔物避けではなく、魔物寄せの香を巻いたことなど。カインは順に沿って説明していく。

「なるほど……。お主を護衛に選んで正解だったということか。シルク嬢は歳が近いことがあり選んだが、お主がいなかったら聖女殿を含めシルク嬢まで危なかったな……」

 近衛騎士の護衛はいたが、王城へ先行した者もおり、八名しか残っていなかった。低級が多かったとはいえあれだけの数の魔物に襲われれば無傷とはいかないだろう。

「カインくん、またうちのシルクが助けられちゃったね。本当にありがとう」

 礼を言うエリック公爵にカインは笑顔を向ける。

「シルク嬢は私の婚約者ですから守るのは当たり前です」

 その言葉にエリックは笑顔で頷いた。

「それでじゃ、今回は聖女殿もいた。お主の褒賞として白金貨十枚を渡そう。街の再開発で多額の資金が必要であろう? その足しにでもしてくれ」

「ありがとうございます」

「でな、今回聖女殿もおる。お主の婚約発表をしようと思ってな。テレスティアからも「いつになったら発表できるのですか」と催促がきておっての。しかも公表しておらぬから国内の名だたる貴族の当主から、お主との縁談の仲介を頼まれておるのじゃ。あれだけの武才を持ち、あの問題だらけのお荷物だったドリントルをうまくまとめ上げている情報を国内に知れ渡っておる。毎日のようにわしとマグナのところに嘆願に来られてはたまったものではない」

 国王の言葉にマグナ宰相も同意し頷いた。

「そんなことに……」

「うむ、お主にはこの聖女の視察の護衛を主にしてもらい、最終日の晩餐に発表を行う。頼んだぞ」

「わかりました」

 カインはいよいよ発表かと思いに耽る。まだ十歳でありながら男爵に叙爵され、婚約者を三名もち国に縛られている感はあるが、不快には思っていない。
 自分の屋敷に戻り、コランやシルビアに声を掛けた後に執務室に入る。
 書類や手紙などに目を通していくが、やはりお見合いの手紙が主となっていた。同時にキャンパスに描かれた娘の絵を送るのが主流になっているこの世界には写真などはない。絵師に描いてもらいその絵を相手に送って気に入ればお見合いをすることも多い。
 実際に会ってみると絵とかけ離れた令嬢が来ることが多いとコランから説明された。
いつか、写真をこの世界に広めていこうと心に刻み、コランが整理して置いてある書類に目を通していく。
 明日からは王国内の視察を行う予定となっており、カインは護衛として案内係を務める。教会に行き、その後は城下町の視察を行う。教皇派が何を仕掛けてくるかわからないので気を抜けない仕事だ。
 そして教会に行ったらまた神様たちと会うんだろうなーって思いながらも夜は更けていった。

 早朝にカインは屋敷を出て馬車で王城へ向かった。今回、聖女を案内するのはカインの馬車である。本当なら聖女用に教会が馬車を用意することも可能だったが、民衆が集まってしまい通行できなくなる恐れを考慮して今回の策を練った。
 教皇派の護衛が懸念をしたが、マグナ宰相の説得により渋々ながら納得した。宰相の立場としても国内で聖女が暗殺されてしまっては堪ったものではない。カインの素性を知っているマグナ宰相だからこその判断だ。
 カインは王城の入口付近で馬車を停めて待機する。すぐに扉が開かれ、シルクに連れられた聖女が出てくる。司教はすでに教会に戻っており、本日の視察の準備を行っている。
 教国の護衛隊長は馬車については納得したが同行すると固持し、王国側とそれぞれ二名ずつ護衛を出し計四名が同行することになった。

(正直、四人いても意味ないんだけどな……)

 護衛が例え千人集まろうと、正直カインの敵ではない。武力、魔法威力に関してはすでに亜神となっているカインはこの世界の生物で最強である。
 馬車の隣で待っていると侍女に付き添われた聖女が出てきた。
 カインの案内で馬車に乗り込む。そして馬車は教会に向けて出発した。
 貴族の馬車に聖女が乗っているとは誰も思わず、何事もなく教会にたどり着く。教会内は帯剣が緊急時意外は禁止されているめ、四人の護衛は馬車で待つことになった。

「カイン殿、何かありましたら……わかっていますよね?」
 カインと聖女の二人は受付をしているシスターに案内され、祭壇の間へと通される。すでに司教は準備が終わり待機していた。

「聖女様、お待たせいたしました。どうぞこちらへ」

 聖女は頷くと祭壇の前まで進んでいく。そしてカインに視線を送り手招きをする。

「カイン様もどうぞこちらへ」

 カインは促されるまま、聖女と隣に膝をついた。
 そして二人で祈りを捧げ、いつものように目の前は真っ白に染まっていった。
 気がつくと、目の前には大きなテーブルが置かれており、その周りを七柱の神が囲んでいた。
 いつもの光景に頬を緩ませて、一礼し挨拶をした。

「お久しぶりです。今日は聖女の護衛ということで教会に伺うことになりました」

「うむ、わかっておる。まぁそこの空いている席に座るといい、「二人とも」な」

「え……?」

 カインは「二人とも」という声に反応して後ろを振り返る。
 後ろに佇んでいる人を見てカインは目を大きく開く。

 そこには隣で祈りを捧げていた聖女が放心状態で立ち尽くしていた。

「えぇぇぇぇぇ!!! なんでいるの???」

 カインの言葉が神の世界に響き渡った。

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コメント

  • ノベルバユーザー27545

    ✖️ 「キャンパス」は大学等の構内のこと

    1
  • 白ネコ

    10歳では男爵じゃなくて、子爵じゃ無いんですか?

    1
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