転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~

夜州

第五十話 ドリントルの内政2

 外壁だけ大きく変わったドリントルの街の領民や冒険者達は皆驚いた。
 たった一日で街の城壁の外側に高さ十メートルの新しい城壁ができたからだ。
 城壁は堀で囲まれており、どこかの小国の王城かと思うほどの立派な出来栄えとなっている。
 城壁だけを見てみれば、エスフォートの王都城壁に勝るとも劣らない出来となっている。
 元は二キロ四方しかない小さな街であったドリントルは、四方に二キロずつ大きくなり、六キロ四方の大きな街となることになる。
 面積で言えば九倍の広さになったこともあり、他の大きな街とも遜色ないほど広くなった。
 カインは、アレクとルーラに大まかなインフラの設計をお願いして王都へ戻ることにした。
 昼間は学園で授業を受け、放課後にドリントルの街へ転移して、整備を続けている。
 旧城壁と新しい城壁の間は、草原となっており、主に草刈や整地を行う必要があるからだ。
 ただ、領民が入ってくるとカインの魔法が露呈してしまうため、旧門から新門へ一直線で進めるように三メートルほどの塀を両側に造り、広大な敷地は覗けないようになっている。
 カインは魔法を駆使し、ひたすら広大な面積となったドリントルの土地を整地している。

「こんなに働く必要があるとは思わなかった……」

 魔力は無制限に使えるとはいえ、同じ作業の繰り返しでは次第に飽きてくる。
 さすがのカインも愚痴を言いたくなった。

「カイン様、もう少しです。頑張ってください!」

 アレクは代官としての職務もあるため、ルーラとダルメシアと三人で移動しながらの作業を続けている。
 アレクには領民に向けての広報や、街の有力者との調整をしてもらっている。城門が各門二箇所に増えてしまったため、衛兵の配置も再考する必要があるからだ。
 ドリントルの街の拡張や、今後、建てられる住宅の資材や大工などの人の手配は、優秀な執事であるダルメシアに一任している。

「その件につきましてはお任せください」

 ダルメシアはそう返事をしたので、安心している。
 ルーラからの応援の言葉を聞きながら、カインは魔法を行使していく。いくら放課後の作業とはいえ、カインの規格外の魔法もあり四日間で大まかな作業は終わった。
 ルーラはカインが学園に通っている間に、図面を描き、既に大まかなインフラの図面が出来上がっていた。
 図面と言っても、門に向かって真っすぐ伸びていく道や、学園や孤児院を建てる区画を決めていくだけだが。
 新しい道は、馬車や人が問題なく通れるほど広く確保している。
 しかもルーラは前世の知識を活かし、コンクリートの研究も行っていた。カインの創造魔法を最大限に利用し、学園や孤児院はコンクリート造を考えている。
 コンクリート造の建物は、カインがいないと建てることはできないが。
 日が進むにつれ、なぜか建設用の木材が次第に増えていく。数日の間に大量の木材が置かれていた。

「ダルメシア、この木材って……」

「もちろん森から伐採してきております。伐採しているのは私の使い魔達ですが。お呼びいたしましょうか?」

 カインは、以前、屋敷で使い魔を呼ぼうとした時のことを思い出してブルって身体を震わせた。

「いや、呼ばなくていい。なるべく森にいる冒険者たちに見つからないように。ギルドに変な報告がいっても問題になるから」

「もちろんでございます。作業は寝静まった夜間に行っておりますからご安心ください。ただ、家を建てるとなると私の使い魔では難しいので、商会にお願いする予定でございます。そちらのほうが街に金銭が流通いたしますから街の発展には不可欠です」

 ダルメシアの言葉にカインは頷く。これから領民を増やすにあたり仕事がなければ仕方ない。公共事業のように領主が資金を出し、仕事を回すことにより経済が発展するのは、どこの世界でも一緒だ。前世で受けた授業でも少しは習っていた。仕事が増え、人が増えることによって、商会の売上もあがり、税収も増える。
 最終的には現在冒険者を含めて三千人しかいない人口を、一万人を超える街にしたいとカインは思っていた。
 作業も一通り目処がつき、ダルメシアが用意した紅茶で一息ついた。

「あともう少しで落ち着きそうだね」

 土地はすでに整地され、山のように積まれている資材を眺めながらカインが呟く。

「あとは、旧城壁の解体が終われば、大々的に建築ブームになると思います。商会を通じて王都にも職人の手配をしておりますので、次第に人も増えるかと思われます」

 後ろで控えているダルメシアが教えてくれる。さすが万能執事のダルメシアだとカインは改めて感心する。
 ルーラは隣に座り自分で描いた図面を眺めている。

「よし、旧城壁の解体をしちゃおうか」

 最後の一口を飲み尽くしたカインが立ち上がり宣言する。

「そんなこと言っても解体は大変ですよ?」

 ルーラはそう言うが、カインには無制限の魔力がある。解体よりも、また一周ドリントルの街を回るほうがカインは大変だと思っている。
 カインは旧城壁に手を付き魔力を流していく。

『解体』 

 カインの一言で城壁は音を立てて崩れていく。城壁に使用されている石材は、今後、石畳などに使われるため、カインのアイテムボックスに入れられている。

「……チート過ぎますね」

 ルーラが呆れる中、数百メートルに渡って、数十年の間、この街を守ってきた城壁が崩れ去った。しかも崩れたはずの城壁の瓦礫は消え去っている。常識外のことで誰もが驚きを隠せない。
 城壁付近は解体のため、立ち入り禁止の表示はしているが、解体に伴う大きな音がしたため領民が集まってくる。
そして、魔法を行使した領主であるカインが、解体された城壁の反対側に立っていることに驚く。
 カインは前に立ち、集まっている領民に向けて話し始めた。

「皆、驚かせてすまない。領主のカイン・フォン・シルフォード・ドリントルだ。このドリントルの街を拡大するのに、どうしても邪魔だったから城壁を撤去させてもらった。噂では聞いているかもしれないが、私の背後に見えている新しくできた城壁までがドリントルの街となる。今後、区画に沿って街を作っていく予定だ。大工の経験や、土木が出来る者。仕事がない者は手伝って欲しい。もちろん見合った給金は支払う事を約束する」

 カインの言葉に領民は喜んだ。この地域はスラムと近いこともあり、仕事がない人も多い。事前に代官から街のいたるところで広報をしてもらっていたが、半信半疑の者が多かった。目の前で直接、新しく仕事を与えられ、給金を払うと言っている領主に歓迎の言葉しかない。

「「「おおおぉぉぉ!!!!!」」」

 喜ぶ領民を手で制し、カインは話しを続けた。

「この新地域に新しく住居もつくることとなる。そして今あるスラムは解体する。もちろんスラムにいる人たちは用意した住居に住んでもらい、今後、仕事をしてもらうことになる。それだけは理解しておいてくれ。僕からの話は以上だ」

 解体区域にいるスラムの人たちも、住居と仕事を与えられることで喜んだ。カインは集まった領民に背を向けて次の解体場所へ移動していく。
 次々と旧城壁を解体していき、瓦礫はカインのアイテムボックスに収容していく。そして城壁跡を整地して次の場所へ移っていく。
 数日を掛け、旧城壁の解体は全て終わった。
 カインたちは屋敷に戻り、執務室で休憩した。

「これからについては、みんなに任せたよ」

 カインはアレクに、資材から工事に伴う費用を渡す。今まで溜め込んだ白金貨の小袋だ。中には百枚ほどの白金貨が入っており、換算すると十億円ほどになる。
 魔物の素材や、商会を通して売った商品の代金などで、また王家に売ったガラス製品の代金もこの中に入っている。
それでも、カインのアイテムボックスの中には、まだ同じくらいの白金貨が入っている。

「これだけあれば、なんとかなると思う。衛兵の増員も王都に依頼した。あとは職人が来たら始めるよ」

 アレクは執務室にある金庫に保管した後にそう言う。

「もうすぐ夏休みだから、もう少しここに滞在したいと思う。ただ、テレスからマルビーク領に呼ばれているから、一度行く事になる。あとは、ティファーナの実家にも顔を出す必要があるから、そんなに長くはいれないと思うけど」
 学園には二ヶ月ほどの夏休みがある。夏休みが長いのは、各領地から貴族の子供が集まっているからであり、自領の往復だけでも遠いものは一ヶ月掛かる。
 王都に屋敷を持っている者もいるが、大半は学園内にある寮で生活を送っている。

「わかったよ。その間は任せて」

 アレクの言葉に、カインは頷いた。
 ドリントルの街のことは三人に任せて、カインは王都に転移する。
 王都の屋敷の執務室に転移したカインは、コランとシルビアに帰ってきたことを告げた。

「――カイン様、お手紙が届いております……」

 恐縮しきったコランから手紙を受け取り、裏の封蝋の紋章を確認する。
 いつも呼ばれている王城に掲げられている旗と同じ紋章だ。
 そして開封し、中を確認する。
 手紙には一文だけ書かれていた。

『見たらすぐに王城に来い  レックス・テラ・エスフォート』

 カインは大きなため息をつく。そして中身をコランに手渡す。コランはその内容を確認し、やはりと思ったようだ。

「コラン、今から王城に行くよ。御者を頼んでもいいかな」

「わかりました。すぐに馬車を屋敷前に用意いたします」

 コランは王城からの呼び出しということもあり、急いで執務室を退出し、馬車の用意に向かった。
 すぐに用意を終わらせたコランに声を掛けられ、カインは馬車に乗り王城に向かう。
 すでに日は沈んでおり、これから王城に向かう馬車は緊急時以外にない。門兵にも連絡が伝わっていたことにより問題なく入城できた。
 カインはすぐにいつもの応接室に案内される。
 メイドから用意された紅茶を飲んでいると、すぐに国王と宰相が現れた。
 カインは席から立ち上がり、礼節を取る。

「緊急ですまんな」

 国王はいつもの席に座り、その隣にはマグナ宰相が座る。
 カインは、ドリントルの件でまた責められると思っていたのだが、思惑は外れていた。

「実はな、マリンフォート教国から聖女が視察でこの国を訪れることになった。ちょうど学園は夏休みになる頃だ。一週間程度の滞在となる予定だが、今世の聖女はお主と年は変わらん。テレスティアとシルク嬢で相手をすることになる。お主はその護衛だな。年も近いし、そのほうが聖女も気が楽であろう」


 ドリントルの内政で忙しいのに、また新しい案件が待っていた。





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コメント

  • べりあすた

    アパート建てたれw

    0
  • I♡ジョゼ(*^^*)

    ハーレムの予感…
    うほっ(^o^)

    0
  • 真砂土

    ひぇー3週目なのに集中して見れるとかこれおかしいだろ。

    0
  • ノベルバユーザー250446

    これは増えるね( ̄∀ ̄)

    0
  • ペンギン

    頑張れ!カイン!

    2
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