転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~

夜州

第四十七話 一年後……そして

 今日はあいつの命日だ。

 一年前のあの夏休みの日。愛美を庇って死んじゃった和也の命日だ。
 愛美は中学を卒業し、私の高校に入学してきた。私も一学年上がり三年生になった。
 二年生の間は、和也の席は教室に残されていたが、さすがに三年生になると当たり前のように、和也の席は用意されることはなかった。
 一年が過ぎると、学校で和也の話題など触れる生徒は誰もいなくなる。
 家で愛美や家族とはまだ和也の話をしている。小さい頃から一緒に撮ったアルバムの写真を見ながら。
 今日は三人・・で和也の墓参りに来ている。
 本当は二人で来るはずだったのに。

「なぁ沙織さぁ、早く墓参り終わらして遊びに行こうぜ」

 後ろから声を掛けてくるのは、二年生の頃から同じクラスメイトである、谷市 剛たにいち ごうだ。
 和也が死んだあと、ずっと落ち込んでいる私に、何かと声を掛けてきてくれた。元々、和也ともクラスメイトということもあり、今日の墓参りにもついてきたのだ。

「お姉ちゃん、もう一年経つんだよね」

 墓の前で線香に火を付けながら、愛美が聞いてくる。
 愛美も高校生となったことで、少し大人びてきた。中学の頃は肩に付くくらいの長さの髪も、すでに胸の前まで伸びていた。

「そうだよね。一年なんてあっという間」

 愛美から線香を受け取り、和也の墓に供える。

「きっと、和也にいちゃん天国へ行けているよね? 私のこと助けてくれたし」

 愛美の問いかけに私は手を合わせて、頷くしか出来なかった。
 花と線香を供えたあと、和也の墓をあとにする。

「もうさ、一年経つんだぜ? 和也の事が好きだったのは知っているけど、もう死んだ奴のこと思っていても仕方ないし、次の男を探そうぜ」

 谷市の言葉に私と妹は額にシワを寄せる。

「――ぅるさい」

 思わず言葉に出てしまった。
 たとえもう和也とは会えないとわかっているとはいえ、一年経っても心の整理がまだついていなかった。
 心を抉られるような谷市の言葉に、妹と一緒にイラついてしまう。

「もう今日はこれで帰る。じゃぁね」
「谷市先輩さようなら」

 冷たく谷市にそれだけ伝え、愛美と一緒に家に戻っていく。
 後ろから谷市の声が聞こえてくるが、振り向くことはなかった。
 家に戻ったあとは、ベッドに寝転び携帯で和也とやり取りしたメールを眺めていた。

「和也、あんた、本当に天国に行っているんでしょうね?」

 携帯を片手に私は呟いた。



 ◇◇◇


「ハッハッ……ハックシュン!」

「風邪ですかカイン様」
「大丈夫? カインくん」

 大きなくしゃみに二人が心配している。

「誰かが噂でもしているのかな?」

 カインが笑いながら答えると、二人とも呆れている。

「たしかにそうかもそれませんわね。カイン様が色々と想定外のことをするので、お父様もいつも悩んでおりますし」
「うちのお父様はいつもカインくんの話で笑っているよ」

 そこまで酷いことはしていないとカインは思いつつ紅茶に口をつける。

 今日は学園の帰りに王城のテラスで、テレスティアとシルクとお茶会をしている。
 テラスからは王城を囲んでいる綺麗に整備された庭園が見える。
 三人が座っているテーブルの周りには、王城に勤めているメイドが三人ほど控えており、紅茶のお代わりやお菓子の準備をしている。

「カイン様、最近忙しいからってお付き合いしていただけないから、私は寂しいですわ」
「カインくんもまだ十歳なのに、もう子爵なのよね。もうちょっとしたら婚約の公開をしていいって、お父様が言っていたよ」
「私も早く「カイン様が婚約者なのよ」と堂々と言えるようになりたいですわ」

 ドリントルの領主になってから色々と忙しかったのもあり、ゆっくりと三人でお茶会をする暇がなかった。
 アレク兄様が代官に赴任して、ギルドもレティアさんが来たことにより落ち着くと思う。
 また学園が夏休みになったら、本格的に内政をアレク兄様とルーラを含め一緒に行うつもりなので、束の間の休息だ。

「出来るなら夏休みが終わってからがいいかな。ドリントルもその時には落ち着いていると思うし」

 アレクとルーラが内政に加わったことにより、カインはドリントルの街をもっと広くしたいと思っている。
 夏休みになれば集中して内政を行うことが可能となり、その間で一気に仕上げたいと考えていた。

「夏休みは私もシルクと一緒にマルビーク領にいきます。道中ご一緒したいですけど、無理だとわかっておりますので我慢いたします」
「あ、道中は一緒にいけないけど、マルビーク領には行くつもりだよ。二日あれば行けると思うし。それと二人に作ったものがあるから渡すよ」

 カインはアイテムボックスから二つの箱を取り出し、テレスとシルクに手渡した。
 二人は受け取った箱を開けると、目を大きくし驚いた。

「素敵なネックレス……」
「うん、本当に綺麗……」

 テレスとシルクはネックレスを手にとり、目を輝かせながら眺めている。
 二人に贈ったのは、魔石と白金から創造魔法制作クリエイティブメイクでつくったネックレスだ。
 白金のチェーンに、綺麗な楕円形に形を整えられた二センチほどの魔石がついている。テレスが赤色の魔石で、シルクは緑だ。

「魔石と白金から創ったんだ。よかったら付けてくれるかな」

 カインの言葉に二人は顔を赤くする。
 まだ正式に婚約を発表していないこともあり、人前でカインが直接王女殿下に触れることは許されていない。メイドが代わりに二人にネックレスを付けていた。
 控えていたメイドから渡された手鏡で自分の姿を見ながら、二人はうっとりとしている。

「そのネックレスには僕の魔力が込められていて、もし何か危険なことがあれば、その魔石を握って魔力を込めれば、僕に伝わるようになっているんだ」

 カインの創造魔法だからこそ出来ることであって、国が抱えている魔道具士でも作ることはできない、国宝に近いと言ってもいい代物だった。
 テレスやシルクはこのネックレスがどれほどの価値があるのかわかっていなかった。もちろんカインもである。
 ただ、カインからのプレゼントをもらったという気持ちだけが先行していた。
 カインについては、二人が心配で思いついたものを実現化させたものだ。
 もちろん周りに控えているメイドたちは、三人の会話を聞いて冷や汗をかいていた。

 お茶会も終わり、カインは王城から歩いていると後ろから声を掛けられた。
 振り返るとそこにはティファーナが和やかな笑顔を向けてくる。

「旦那様、お久しぶりですね。最近模擬戦して愛し合ってくれないので寂しかったです。まだ時間が少しありますから行きましょう」

 もちろんカインは断れる訳もなく、ティファーナ戦闘狂にそのまま訓練場へ連れて行かれた。
 そしてメイドから宰相に報告がいき、後日、カインはまた王城の呼び出されるのであった。




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