転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~

夜州

第四十六話 ルーラの正体

 ドリントルでの用事も終わり、カインは王都の屋敷に転移した。
 誰もいない執務室の椅子に座って背筋を伸ばす。
 少しのんびりとしたあと、カインは執務室を出て、コランに戻ったことを告げ、白狐姉妹の様子をシルビアに聞いた。

「姉のルーラですが、落ち着いた様子で既にメイドとしてやっていけると思います。知識についても十分かと。妹のローラはまだ見習いですね。年相応な育ち方をしております。奴隷商で教育をされていたお陰で、奴隷期間が長い割にはまともだと思います」

 用意してくれた紅茶を飲みながら、シルビアの報告を聞く。

「一度、ルーラと話をしたいから呼んでもらえるかな?」

 カインの言葉に、シルビアが頷き、ルーラを呼びに執務室を退出した。
 程なくして、扉がノックされ、カインが許可を出すとルーラが執務室に入ってきた。
 すでにメイドとしての仕事を勉強しているようで、メイド服姿だった。歩くことにもすでに慣れたようで、問題ないようだ。
 しかも食事もし、お風呂も入って顔色も良くなったことで美人度がさらに増していた。

「ご主人様、私のことをお呼びとのことですが……」

 不安そうな顔をしながら、執務室の入口に控えている。

「うん、この前はまだここに来たばかりだから言わなかったけど、昨日話した続きをしようと思ってね。とりあえず座ってよ」

 カインはルーラに目の前のソファーに座るように促す。
 『昨日』と聞き、ルーラは少し恐々としながらも、カインの対面に座った。

「馬車の中で言ったと思うけど、二人のことは鑑定させてもらっている。それで聞きたいことがあったんだ」

 カインはそう言うと、一度立ち上がり、執務室の机の引き出しから一冊のノートを出した。そしてルーラの前に置き、中を見るように促す。
 恐る恐るルーラは、置かれたノートを開く。そして中を見た瞬間、目を大きく見開いた。

 そしてカインのことを見つめながら、涙をボロボロと流しはじめる。

「やっぱりそうだよね。隠蔽で隠していたけど、称号に『転生者』と出ていたから、もしかしてと思ったんだ。だから二人のことを購入させてもらった。神獣の加護を持っていたのもあったけど」

 ルーラに見せたのは、時間があるときに、これからドリントルで行う内政についてまとめたものだ。もちろん前世の知識を活かして内政を行うために、他の人が読めぬ様日本語・・・で書いてある。日本語で書かれていることに反応を示しているということは、ルーラが転生前の前世が日本人だと確定した。

「ご主人様はもしかして……」

 ルーラの問いにカインは無言で頷く。
 カインの頷いた姿を見て、ルーラはさらに目に涙を溜める。
 そして、ルーラはソファーから立ち上がり、カインに抱きついて泣き始めた。
 カインは、ルーラの頭を撫でながら話しかける。

「日本人の記憶を持っていると、奴隷は辛かったよね。もう安心していいよ。これからはローラを含め僕が面倒を見るから」

 ルーラはカインの胸で泣きながらも何度も頷く。
 数分だろうか、ルーラが泣いている間、ずっとカインはルーラの頭を撫でていた。


「ご主人様、すいません。胸を貸していただいて……」

 ルーラは落ち着いたあと、子供の胸を借りて泣いたのが恥ずかしいのか、真っ赤な顔をしたルーラが照れくさそうにソファーに座り直す。

「構わないよ。ルーラの前世の話を聞かせてくれるかい? 今、ドリントルという街を治めているのだけど、人材が不足していて、ルーラの前世が活かせるなら協力して欲しいと思ってね」

 カインの言葉にルーラは顔を引き締めて、カインを真っすぐ見つめる。

「私の前世は、大学で建築学科を専攻していて、インフラと建物の設計について勉強していました。二十歳の時に信号無視の車に撥ねられて死んじゃったんだと思います。そこまでしか記憶がないので。転生してからは、五歳の時に洗礼を受けたのですが、その時に前世の記憶を取り戻したのです。狐人族では、白狐は先祖返りとして迫害されており、早くに両親を亡くしたこともあり、同じく白狐で生まれたローラと一緒にずっと二人で暮らしていました。建築についてなら少しは勉強しましたのでお役に立てるかもしれません」

 カインは前世が自分よりも年上だという事に驚いた。カインも自分の前世についてルーラに教えた。この件については、コランもシルビアも知らないため、内緒ということに念押ししておいた。

「ドリントルでは、これから学園や孤児院、他にも色々と建設することになってくる。僕の兄が代官としているけど、内政官として建築系を手伝ってくれるかい? もちろんローラも一緒に来て構わない。それと、ご主人様と呼ばなくていいよ。カインで。前世が同じ日本人だということを考えればおかしいと思うし」

 カインは伝えたが、ルーラは顔を横に振る。

「流石にそれはできません。今はこの世界を生きているので。他の人の対面もあります。ただ、二人の時に少しだけ前世の話をさせてください。アニメの話とか……」

 カインはルーラの言葉に頷く。
 その後、ドリントルについて話していき、今後の方針をルーラに伝えた。

「それならば私でもお役に立てると思います。週末にもドリントルに行くようにシルビアさんにも伝えます」

「それは、僕からもシルビアに話しておくよ。学園ができたら、ローラも通わせることもできるし。よろしく頼むね」

 カインの言葉にルーラは頷く。
 話が終わり、ルーラはシルビアの手伝いのために退出した。
 入れ替わりでコランが来たこともあり、週末ルーラとローラの二人をドリントルに連れて行くことを伝えた。

「カイン様、それは構いませんが、ルーラに内政官を任せて平気なのでしょうか」

 コランはルーラの前世のことを知らないこともあり、ルーラに任せることに疑問を感じているようだ。

「それは僕が見るから問題ないよ。早く学園を建設して、ローラやドリントルの孤児たちに勉強をする場所を提供してあげたいんだ」

「わかりました、カイン様がそうおっしゃるなら大丈夫でしょう。今日、学園を休んだこともあり、テレスティア王女殿下とシルク嬢がお見えになられました。手紙を置いていかれましたので、ご確認ください」

 コランから手紙を受け取り、封蝋を開け中身を読んでいく。明日、学園が終わったら王城でお茶会をするのでお招きの手紙だった。

「明日、学園が終わったらそのまま王城へ行くよ。テレスとシルクからのお誘いだった」

 コランはカインの言葉に頷く。

「そうですね、カイン様は最近お忙しいこともあり、婚約者の皆様と会う機会がほとんどありません。時間があるときにはお付き合いすることも必要かと存じます。それと、もう少しで食事の準備が整います」

「そうだね。もう少し考えたいことがあるから、食事の準備が出来たら呼びに来て。それまでここで仕事をしているよ」

 コランは了承したあと、一礼をして執務室を退出した。
 カインはソファーに背を伸ばして寄りかかる。

「まさか日本人が他にも転生しているとは……。神様たちも教えてくれればいいのに……」

 カインは先ほどルーラに見せたノートに、今後のことをさらに加筆していった。
 夕食が出来たことで、シルビアが迎えにきたのでダイニングに向かう。
 すでに全員が着席して待っていた。ルーラとローラはメイド服姿でシルビアの手伝いをしている。ローラは十歳ということもあり、まだ慣れない手付きだが、頑張っているように見えた。
 食事が終わり、カインは執務室に篭もり、今後のドリントルについてノートにまとめていく。

「うん。こんなもんだな。あとはアレク兄様とルーラを含めて相談だ」

 書き込んだノートを机の中へ仕舞い、一度大きなあくびをした後に、着替えてベッドへ入り意識を手放した。





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