転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~
第四十四話 会談
馬車の中で二人は感慨に耽りながら無言のままだ。ダルメシアが御者をしている馬車は街を抜けていく。
冒険者ギルドの前に到着すると、ダルメシアが馬車の扉を開ける。
「カイン様、アレク様、冒険者ギルドに到着いたしました」
二人は馬車を降り、ダルメシアが開けた扉を潜り冒険者ギルドの中に入る。
ホールの中は朝の忙しい時間を終え、閑散とした雰囲気だった。受付嬢たちは雑談をしながら待機していたが、奥でレティアだけは机の上に書類を山積みにし、忙しそうに動いていた。
ギルドに入ってきた子供が領主のカインだとわかると、受付嬢たちが一瞬にして緊張した雰囲気が流れる。一人の受付嬢がレティアのところに向かっていき小声でカインが来たことを伝えると、レティアは作業を一度止め、奥からホールに出てきた。
「カイン様、わざわざありがとうございます。ギルドマスターの部屋へご案内いたします」
レティアは近くにいた受付嬢に紅茶の準備をするように手配した後、カイン達を執務室に案内した。
ギルドマスターの執務室につくと、ノックしカインが来たことを伝えた。レティアが扉を開けようとしたところで、先に勢いよく内側より扉が開かれた。
「カイン様、わざわざすいません。こちらへどうぞ」
ギルドマスターのリキセツが、恐縮したようにカインのことをソファーに案内する。
カインとアレクの二人は、案内されたソファーに座り、対面にリキセツとレティアが座る。
「新しい代官が赴任したので紹介しようとお伺いしました。次兄のアレクです」
「この度、ドリントルの代官に赴任したアレク・フォン・シルフォードです。どうぞよろしく」
二メートルほどの大男で筋肉に覆われたリキセツと、細めのアレクが握手をすると、成人しているアレクが子供に見えてしまうほどの体格差だ。
「アレク殿、ギルドマスターのリキセツです。この度はギルドの失態、申し訳ございません。今、レティア殿と一緒にギルドの浄化を図っております。既にベティの下で裏工作をしていた職員二人については、捕縛して本日王都のギルドに移送する準備を進めております」
今回の件については、ギルドマスターの管理不足も影響している関係で、リキセツは終始低姿勢となっている。
特に王都の統括マスターのエディンまで、ドリントルに来ていることもあり、早急にまとめあげる必要がある。
「職員についてはそちらに任せるよ。ギルド職員だから王都でエディンさんが裁くことになると思うし」
全員が頷く。
リキセツもレティアさんも忙しいこともあり、カインたちは早々にギルドを後にした。
カイン達が去ったあとのギルドでは受付嬢がまた騒ぎ出す。
「あのカイン様と一緒にいた人は誰? 新しい代官が来るとは聞いているけど、あの若いイケメンがそうなのっ!?」
「カイン様は年下過ぎるけど、あの代官の人は成人しているみたいだし、狙うならあの人かもっ!」
受付嬢たちは仕事が落ち着いている時間ということもあり、領主と一緒にきた人の噂話で盛り上がる。
パンパン
いきなり手を叩く音がする。受付嬢達が振り返ると、叩いた手を腰に当てて、サブギルドマスターでもあるレティアが怒っている。
「ハイハイ、噂話はそれくらいにして。あの人は新しい代官で、アレク・フォン・シルフォード様よ」
「シルフォードって言ったら……」
「そう、カイン様のお兄様よ。辺境伯様の次男にあたるわ。次男だから将来は準貴族扱いね」
「「「アレク様……」」」
受付嬢たちが青い髪の美男子アレクに思いを寄せる。貴族の当主でもあるカインは高嶺の花となるが、アレクなら貴族の子供としての扱いになる。貴族の令嬢が妻になることも多いが、平民にも十分のチャンスはあるのだ。
「まったくあなたたちは……」
レティアはため息をつきながら、自分の机に山積みになっている書類に目を通し始めた。
ギルドを後にしたカインたちは領主邸に戻った。
執務室のソファーにはカインとアレクが座っている。ダルメシアは紅茶の用意をするために一度席を外していた。
「これで内政に力を入れることができるね」
アレクが代官邸にある本を数冊持ち出して、執務室の机に置いた。
「まずは、城壁の拡張をしたいですね。スラム街の解体をするのにも住んでいる人に引越ししてもらわないといけませんし。夏休みに入ってからが本番ですね」
カインの言葉に、アレクは呆れた。
「カイン、城壁の拡張なんて数年掛かるし、人の手配も大変なのだよ。それに莫大な費用がかかる。もっと身近なところからやったほうがいいのでは」
「それは大丈夫ですよ。魔法で創りますし、魔力は相当使いますけど、なんとかなると思います。アレク兄様にはそのあとの整備関係をお願いしますね」
「そういえば、陛下から言われていたね……。カインは常識外のことをするって……。わかった。城壁の事はカインに任せるよ」
話を続けていると、扉がノックされ、ダルメシアが入ってくる。
「お待たせいたしました。紅茶の準備が出来ました。それと来客ですが、どうしましょうか」
カインとアレクの前に紅茶を置き、ダルメシアが訪ねてきた。
カインは目の前に置かれた紅茶に口をつける。
「客? 珍しいね。いったい誰が来たのだろう」
「――それが、セト様がお見えになられています……」
ダルメシアが申し訳なさそうに答える。
「ブハッ!」
カインは口に含んだ紅茶を吹き出した。
アレクはセトのことを知らないので、カインの対応に首をかしげる。
「今、外でお待ちになられているのですが、中にお入れしても宜しいでしょうか」
玄関の外にあの魔王セトが立っていたら、周りの人は驚くだろう。
「す、すぐにここに案内してっ! あのまま外に立っていられたらそれこそ困る」
ダルメシアは一礼をし、執務室を出て行った。
少しすると、勢いよく扉が開かれた。
入ってきたのはもちろん魔王セトだ。相変わらず三本の角を額からだし、高貴な服とマントをつけている。
「カインさまぁぁぁぁ! 聞いてくれよっ!」
ただ、半泣きになった魔王は威厳もまったくなかった。
その姿に、ただカインは驚くだけだった。
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