転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~

夜州

第二十話 子爵就任

 陛下の説明が終わり開放されたあと、王家用の馬車でカインの屋敷まで送られた。
 送ってくれたのは近衛騎士たちだった。

「送ってくれてありがとうございます!」

 カインは頭を下げて、近衛騎士たちにお礼を言った。

「何いってるんですかカイン様、カイン様はうちの団長の婚約者なんですから、これくらい当然です」

「また訓練にも来てくださいね!」

 騎士たちは笑顔で手を振りながら帰っていった。
 屋敷に入り、扉を開けるとシルビアが待っていた。

「おかえりなさいませ、カイン様、今日は遅かったのですね」

「陛下に呼ばれてたんだ。話があるからコランと一緒に、執務室に来てくれるかな」

「わかりました、すぐにお伺いします」

 シルビアは一礼したあとに、コランを呼びに行った。
 執務室という名前にはなっているが、実際はカインの勉強するための部屋だ。
 部屋で制服から着替えたあと、ソファーに座ってゆっくりしていると扉がノックされた。

「失礼します。コランです。お呼びということで」

 コランとシルビアが部屋に入ってきた。

「うん、報告があるんだけど、今日陛下に呼ばれて、来週の謁見で、子爵に陞爵だって。それと街を一つ見ろって言われたんだけど……」

「おぉ! それはおめでとうございます! すぐにガルム辺境伯様にもご連絡しないといけませんね。それでどこの街の領主になられるんですか」

 コランとシルビアはカインが陞爵することが、かなり嬉しいみたいだった。

「それについては、当日、説明を受けることになっているから、まだ知らされていないんだ。王都の近くとは聞いてるけど」

「カイン様だったら、どんな街でも大丈夫ですよっ! 今日は身内だけでもお祝いにしましょう! 料理長にも話してきます」

 シルビアはスキップしながら部屋から出て行った。

「それでは、ご用意ができましたら、お呼びいたします」

 コランは一礼して部屋を出ていこうとしたが、カインが止めた。

「あ、今日は身内のお祝いだから、家の全員で食事にしよう。全員分の用意でお願い」

「わかりました。そのように伝えます。カイン様ありがとうございます」

 そしてコランは執務室を出て行った。
 その夜は、メイドも料理長も関係なく、楽しく食事ができた。
 僕以外は成人しているので、酒も自由に飲ませてあげたら感激していた。
 たまには、こういうのも必要だよなと、カインは思った。


 そして謁見の日がきた。

 正装をし、謁見の間の入口付近に立っている。
 貴族の当主は公爵から始まり、段々の爵位の低い順に入口に向かって並んでいる。
 もちろん新人男爵のカインは、入口のすぐ近くに並ぶ必要がある。
 ガルムはグラシア領にいるため、今回は不参加だ。

「それでは陛下がいらっしゃいます」

 宰相の一言で、中央のカーペットを挟んで並んでいる貴族たちが、一斉に頭を下げた。
 国王のレックスがゆっくりと部屋に入場し、中央の玉座に座った。

「皆、頭を上げてくれ」

 その一言で、並んでいた貴族全員が頭を上げた。

「それでは、カイン・フォン・シルフォード男爵、前に」

「はい」

 カインは列から一歩前に出て、王の前まで進み膝をついた。

「カイン・フォン・シルフォードよ、そなたを陞爵し子爵とする。そして、現在、直轄地となっているドリントルの街を治めよ。準備金として白金貨五十枚を授ける。これは子爵を証明する短剣だ。これからはカイン・フォン・シルフォード・ドリントルと名乗るが良い。」

「はい、承りました。カイン・フォン・シルフォード・ドリントル、エスフォート王国繁栄のために誠心誠意治めさせていただきます」

 今回は何事もなく素直に終わった。



「よりによってドリントルか……。あそこを治めることができるのか」
「子供があいつの相手をできるのか……」

 周りからはそんな声が聞こえる。いつもなら絶対に文句を言いそうなコルジーノ侯爵は、ニタニタ笑っていた。

「なにがあるんだろ……」

 そう思いつつ、謁見が終わった。
 詳細の説明があるということで、応接室に通された。

 メイドから紅茶を出してもらい、ゆっくりと休んでいると、マグナ宰相が入ってきた。いつもは陛下と一緒のはずなのに今回は一人だった。

「カイン殿、待たせてすまんな。陛下は説明するのが嫌で逃げた。だから私だけが来たのだ」

「……逃げたって」

「ドリントルの街のことを、説明したくなかったらしい。あそこは特殊な街だからな」

 その言葉にカインは不安を覚えた。
 マグナ宰相は一枚の地図を出し、その一箇所を指で示し説明を始めた。

「ここは王都から西に二日の距離にある。街の横にはグラシア領ほどではないが、魔物が多い森があるのだ。そして数少ないダンジョンもある。だからこそ冒険者がかなり多い。いや、冒険者が多すぎるのだ。だから、そこの領主よりもギルドマスターのほうが権力があってな、誰も領主をやりたがらん。衛兵よりも冒険者の方が強いのだ。全住民で三千人いるが、それに対して冒険者だけでも千人以上あの街に常駐している。それに対して、街の衛兵は百人しかいないのだ。冒険者と衛兵では人数の差がありすぎて、冒険者たちが幅を効かせているのだ」

「そういうことだったのですか……。だから周りの貴族たちからも、文句が出なかったのですね。僕の好きなように治めてもよろしいですか」

 カインはマグナ宰相ににっこりと微笑む。

「……うむ。それで良い。これが就任証明書だ。あと、準備金として白金貨五十枚用意してあるから好きに使うといい」

 マグナ宰相から、就任証明書と白金貨入りの小袋をもらい、アイテムボックスの中にいれた。

「ただ、治めるのにも僕はまだ学生なので、そこまで領地に行くことができません」

「それについては、学園の監督官であるエリック公爵から学園長に連絡しておく。これからは自由登校でかまわぬぞ。ただ、試験だけ受ければ、問題ないようにしておく」

「わかりました。頑張ってみます」

「結果、楽しみにしてるぞ」

 宰相が出て行って、残された部屋でカインはため息をついた。

「領地くれるって言われてもこれか……。道理でコルジーノ侯爵がニタニタしてたわけだ。それにしても自分の領地だから好きにしていいってことだよな」



 一人しかいない応接室で、久しぶりにカインは黒い笑みをうかべた。



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