転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~
第十七話 決着
三人が旅をするにあたって同じ依頼を受けたりしていた仲間たちだった。
「少しでも手助けできると思って、冒険者の方たちに声をかけさせてもらいました」
先頭を走ってきたメリネが近くに寄って、回復魔法をかけてくれる。
三人が目を合わせ頷く。
「これで余計に負けるわけにはいかなくなったな」
ユウヤがアーロンに剣を向けながら呟いた。
「人数が増えても何も変わらないよ」
アーロンは余裕を見せた表情を見せた。
神の用意した修行の間で特訓をした三人でも敵わないのだ。普通の冒険者では敵うはずがない。
アーロンの繰り出した攻撃によって、冒険者たちが次々と空を舞っていく。
「みんなをやらせない……『限界突破』」
セイヤは自分の限界を超えた力をもってアーロンに挑んでいった。
その剣撃がアーロンを傷つけた。
「なんとかなるぞ! ユウヤ頼む」
ユウヤも限界突破を使いアーロンに斬りかかる。
次第にアーロンを押し始めた。
「この人間どもがっ! 調子に乗りやがって!」
アーロンが全方向に殺気を解き放つ。
三人以外の冒険者たちはそれだけで動きが止まった。
「メグミ! みんなの回復を頼む」
メグミは攻撃をユウヤとセイヤにまかせ、メリネと二人で次々と回復魔法で冒険者たちを回復させていく。
ユウヤとセイヤの二人の攻撃がひたすら続き、次第にアーロンが血塗られていった。
「ま、まさか人間どもに……。」
そう言って、アーロンは前のめりに倒れた。
「やったのか……」
ユウヤが剣を杖代わりにしてそう呟いた。
その瞬間だった。
アーロンの手があがり、光の剣が回復をしているメリネに向かって伸びていった。
「あぶないっ!」
近くにいたメグミがメリネを突き飛ばした。そしてその光の剣が胸を突き抜けた。
「グハッ」
口から血を吐き、そのままメグミが倒れた。
突き飛ばされたメリネはメグミに駆け寄っていった。
「メグミ様! 回復を……もう……私にも魔力が……ヒール! なんで治らないの!?」
メリネの手をメグミが握った。
「もう、魔力空でしょ……私もよ……」
ユウヤとセイヤがメグミに駆け寄ってくる。
「メグミ!!! しっかりするんだ!!!」
セイヤはメグミを抱きしめる。
「セイヤ……ごめん……もう無理みたい……和也に会えたら謝っておいて……」
メグミはそのまま息絶えた。
「ぐあぁぁぁぁああああああああああ!!!!!!」
セイヤが天に向かって叫んだ。
「メグミ様……私をかばったばっかりに……」
メリネも手で口を押さえ、涙を流している。
「フフフ。そんな余裕があるのかな……」
その瞬間、倒れていたアーロンが立ち上がった。
「ユウヤ、あとはまかせたぞ……」
抱いていたメグミをそっと地面に下ろすと、アーロンに剣を持って向き直った。
「アーロン! お前だけは許さない!!! 『限界突破』!!!」
セイヤの身体は光に包まれた。神々しいまでの明るさを放っていた。
「こ……これは神格化……」
アーロンにも焦りが見えた。
剣を向け一直線にアーロンに向かっていき、その腹を剣で突き刺した。
「今だユウヤ!! 封印を!!!」
その瞬間、セイヤの背中から手が出てきた。
アーロンの手刀がセイヤの身体を貫いたのだ。
「グフッ。お前のことは放さねえぜ」
身体を貫かれてもなお、持っている剣でさらにアーロンの身体を深く突き刺していく。
「セイヤさん!!!」
セイヤはアイテムボックスから神からもらった封印の宝玉を手にし、アーロンの胸に押し当てた。
「ユウヤ! あと、まかせた……」
「なんだこれはっ! も、もしかして……お前らじじいどもの使徒か……」
「はい! 我望む。天から降りしその邪悪な魂よ。その宝玉に宿れ『封印』」
その瞬間宝玉が辺り一面を真っ白に染め上げた。
そこにいる全員が視力を失った。
次第にそこにいたものたちの視力が戻ってくる。
そこにいたのは、倒れたセイヤと、その横で膝をついているユウヤだった。
真っ白だった宝玉は黒色ににごり、アーロンの姿は既になかった。
「やったか……。あ、セイヤさん!!」
ユウヤはセイヤを起こす。
「よ、よくやった……ユウヤ……。頼む、墓はメグミと一緒にしてくれ……」
そのままセイヤは息絶えた。
「セイヤさーーーーん!!!」
その瞬間、世界にまかれていた洗脳魔法は全て解けた。
ただ、洗脳されていた国の上層部たちは、洗脳されていた時にした事の記憶はまだ残っていた。
それが影響し、戦争まではならなかったが国境では争いが起きていた。
ユウヤは、各国を牽制するために中央にある場所に村を興した。
それが一番最初のエスフォート村だった。
最初について来てくれたのはメリネとその場所にいた冒険者たちだった。
ユウヤはメリネと結婚し、村から街へ、そして国へと次第に大きくしていった。
ただ、大きくなっていくにつれ、他国からの侵攻は幾度もあった。
それを、ユウヤを筆頭にその場にいた冒険者たちで返り討ちにしていった。
ただ、ユウヤには誰にも言えないことがあった。
この時既に、ユウヤは人ではなかった。
ステータスを見たときに気づいたのだが既に神族となっていたのだ。
歳を取ることのないユウヤは、メリネとの間の子が二十歳になったときに王位を譲った。
表向きは死んだことにして。
そして、この魔物の森の奥深くの場所でメリネと二人で余生を過ごした。
「そうして、そのうちに俺は創造神として別の世界を興すことになったんだ」
最後にユウヤはコーヒーに口をつけて物語を締めた。
数分の時を二人は無言で過ごしていた。
「父さん母さんも頑張ったんですね……。アーロンが目覚めたら次は僕が相手します」
「うむ。その時は頼むぞ……。そういえばカイン、お前数年こっちに来てるってことはあっちの世界では数日いないことになっているけど平気なのか?」
「あっ!!!!!!!!!!!」
「まずい……家ではシルビアも怒ってるだろうし、学園もサボってるからテレスとシルクから何言われるか。すいません!すぐに戻ります!」
「ちょっと待て!」
急いで帰ろうとするカインをユウヤは引き止めた。
「なんで止めるんですか?早く帰らないと……」
止めるユウヤにカインは焦る。
「お前、こっちに五年いたんだぞ? 外見十五歳のままで戻るつもりか……」
「ああああ!!!! それはまずいですっ!!!! 学園行けなくなる」
「ちょっと待て、戻してやるから。ステータスは変わらないが外見は戻すことは可能だ。一応この世界の創造神だしな」
「是非お願いします!」
カインはユウヤに頭を下げた。
ユウヤがカインに手をかざすと、カインは光に包まれていった。
光が消えると、ここに来たときの十歳の姿に戻っていた。
「おぉ。これで帰れます! 師匠、ありがとうございました!」
「いつでも遊びにこいよ。修行もつけてやる。あ、この剣と手紙を持っていけ。今代の王に手紙を見せればわかる」
カインは剣と手紙を受け取った。剣は鞘から一度抜いてみると、日本刀のように片刃で少し反っていた。七色に光る刃を確かめてから納刀し、そのままアイテムボックスに仕舞う。
「俺が昔使ってた剣だ、日本刀に似せてつくってみたんだ。これからその武器を使うといい」
「ありがたくいただきます。また遊びにきますね『転移』」
一瞬でカインは消えていった。
「まったく賑やかなやつだったな。それにしてもあそこまで成長してるとはな……ドランも育てすぎたか」
そう言いながらユウヤはお代わりのコーヒーをカップに注いだのだった。
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コメント
ノベルバユーザー294580
カインのステータス気になるww
紅裂 魔宏
ドランはドラゴンじゃないかな?....(俺の予想でけどw)
ノベルバユーザー245382
ドランって人何者?笑