死神始めました

田中 凪

第195話 ラルクの過去

ラルクが自分の過去について語り出した。
長くなりそうなので【アイテムボックス】からジュースとお菓子を取り出す。気分は映画鑑賞だな。
ラル「我はもともと、カルファス王国の宮廷に仕えていた奴隷だったのだ。我が仕え始めた頃は良き王であった。奴隷だというのに食事もしっかりしたものだったし、3人一部屋であったがしっかりと睡眠をとることもできた。」
いや、どうやったらそんなやつがリッチになるんだよ。今んとこなにもないな。
ラル「だが、王もその10年後になくなり新たな王が即位した。その王が良くなかったのだ。」
浩「なるほど。王様の子供だったからなんでもできて、なんでも手に入るのが当然。ていう思考の持ち主だったわけだ。」
ラル「さよう。奴隷に冷たく接しこれまでの待遇を全て無くし、我らは馬小屋のようなところで寝かされた。そして、即位してから半年ほど経つと宮廷内で妙な噂が出てきたのだ。それは、王が不老不死の研究をしているのではないか?というものだ。なぜこんな噂が立ったのかと思うじゃろう。それは、その少し前から我らの仲間が消えていったからなのだ。ある晩には50年間仕えていた大先輩が消え、ある晩にはまだ幼き子供の奴隷が消えた。」
俺たちはその話を聞き顔をしかめる。
アレ「ヘドが出るわね。」
ラルクはそんな俺らの反応を見てわずかに微笑んだ。
ラル「そして、ついに我の番になった。ある夜寝る前に王に呼び出され玉座の間に向かった。そこで一度記憶が途切れたのだ。次に目がさめるとそこは地獄だった。これまでに消えていった仲間達の死体、いや、ゾンビがいた。王は本当に不老不死の研究をしていたのだ。我もその生贄にされた。そのときに皆の深い怨念が流れ込んできた。そして、我はリッチとなり仲間のゾンビ達と共に王を殺した。できる限り残酷に、痛みを与えながら。」
フラ「でも、そのときにいたゾンビさん達はどうなっちゃったんですか?」
ラル「そのまま、昇天していったさ。だが、なぜだか我だけ残ってしまった。それから、手頃な、まだ未発達なダンジョンを見つけそこに身を潜めた。我は国王殺しの大罪人だったからな。そこからは魔境のあのダンジョンに潜り無限の時間を研究に費やすことにしたのだ。これが我の過去だ。」
浩「思ったよりも重い話だったな。ところで、それ何年前の話だ?」
ラル「我もわからんのだ。なにせしばらくはあの中にいたからのう。」
やっぱだめか。じゃあヘルプさんはどうなのだろうか?視線をヘルプさんにやると
ヘル「その王国があったのは今から約600年前です。しかし、国王が殺されたのは最後の一回だけでした。なのでカルファス王国最後の王、デルトス=カルファスであるかと思います。」
ラル「ほぅ、ということはあのあとすぐに覇権争いで滅んだのか。いやー、スカッとするの。」
浩太は、そんな暴君にならないように気をつけよう。と、心に誓った。そして、ふと窓の外を見ると、青かった空が綺麗な紅に染まっていた。
浩「うわっ、もうこんな時間じゃねえか!あとはゆっくり飯を食べながらでも情報交換をしよう。」
そう言って浩太は厨房に駆け込んだ。

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