魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~
3 誤解
「うむ。改めてユーリ、よく帰ってきた」
長の言葉を皮切りにみんなは「おかえり」と言ってくれる。
「ただいま!」
帰ってきたという実感が心を満たして少しうるっときてしまう。
俺の帰りを待っていたと、みんなの笑顔から伝わってくる。
湧き上がる嬉しさをギュッと噛みしめる。
この場所にずっと居たい。
俺のことを待っていてくれる温かいこの場所でずっと生きていきたい。
そう思うと同時に伝えなければならないことが脳裏によぎる。
しかし、今はまだ嬉しい気持ちでいたいと思い思考を切り替えた。
「話を始める前に1つ聞いておきたいことがある」
長は細い目をさらに細めて俺に聞く。
なんだろう?
「そこにいる少女は誰なんじゃ?」
一瞬、何のことだかわからなかった。
俺は周りをキョロキョロ見渡してから、まさかと思いつつアカネを指差す。
アカネを除く全員が一斉に頷いた。
「あ、紹介してなかったけ?」
『うん』
全員の声が見事に重なる。
いやーそういうこともあるよね。
当の本人は物珍しそうに部屋を見渡している。
まぁ初めて人(龍人)の住んでいる場所に来たんだもんな。
色々珍しく感じるのはわかる。俺もここに来たばかりの頃は見るもの全てが気になって仕方がなかった。
て、思いふけってる場合じゃない。
「えーと、信じられないかもしれないけどこの子は俺の使い魔なんだ」
『使い魔!?』
わーみなさん、またまた声がそろってらっしゃる。
聞いたこともないよね、人の姿をした使い魔なんて……。
「使い魔と言ったら魔獣のことじゃろ?」
「ユーリ! 私はお前をそんな風に育てた覚えはないぞ! 少女を使い魔にするなんて……」
「ユーリくんが……ユーリくんが……」
長はいいとして母さんは何か誤解してる。絶対に間違った方向に誤解してる。
セレーナに至っては負のオーラに包まれて様子がおかしい。
そしてお義父さんの俺を見る目が怖い……。
俺は慌てて弁解を試みる。
「ちょっと待った! アカネ、立ってくれ」
アカネは?を浮かべつつも立ち上がってくれる。俺も合わせて立ち上がった。
「耳と尻尾を出してくれないか」
「わかった」
すると、アカネの魔力が一瞬膨れ上がってから真っ白な髪と同じ毛並みをした獣耳ともふもふな尻尾が現れる。
頭部でピョコピョコしている獣耳は突然現れたにもかかわらず自然なものに感じる。
尻尾は今すぐにでもモフりたいくらいふわっふわだ。
俺はモフりたい衝動を抑えて納得しているであろうみんなの顔を見る。
「どう?」
『獣人!?』
3度目も声がそろった。ここまで来るとわざとではないかと思えてくる。
この世界には俺のような人族、セレーナたちのような龍人族、そして獣人族や森人族など様々な種族がいる。アカネのような魔獣も1つの種族と考えられる。
しかし集落では他種族を招くことは禁じられている。俺は龍神の加護を授かっていたため例外というわけだ。
もう1つ例外とされるのが使い魔だ。
まぁ集落で使い魔を使役している人は数少ないけどね。
「うむ……いくらユーリといえど掟は掟じゃ」
「ユーリ……」
「ユーリくんがどんなところへ行くことになっても、わたしはついて行くから」
長は悩ましそうにずっと腕を組んでいる。
母さんは言葉を失っていた。
セレーナは覚悟を決めたように言い切る。
お義父さんは……怖くて顔が見れないよ。
あーなんて説明すれば……あっそうか。獣化するように言えばよかったのか。
「アカネ! 獣化だ」
「ん」
アカネは短く返事をしてからすぐに変身する。
キラキラと眩い光を発しながらアカネの姿はみるみる変わっていく。
光が弱まると真っ白な毛をなびかせた1匹の白狼が現れた。
「むむっ」
「なっ!?」
「えっ!?」
「ほぉ」
俺は獣化したアカネの頭を軽く撫でる。
アカネは少しくすぐったそうに目を細めた。
「これでアカネが使い魔って信じてくれた?」
「吸血狼……絶滅したと思っていたのじゃが、生き残りがおったのか」
そう言えば忘れていたがアカネは絶滅したはずの吸血狼の生き残りだ。
長年生きてきた長が驚くのも頷ける。
「本当に魔獣だった。わ、私は大切な息子を疑ってしまった……」
母さんは顔面蒼白で大変よろしくない状態だ。
「母さん!? 大丈夫だから! 俺は気にしてないから!」
俺は母さんに近づき何度も声をかける。
しかし母さんは明後日の方向を見つめていて俺の声は聞こえていない。
「ユーリくん、ごめんね……」
「セレーナまっ――」
急に立ち上がったセレーナは「待って」の声も届かぬ速さで走り去ってしまう。
数々の試練や困難を乗り越えてきたけど今回が1番厳しいかもしれない。
龍神様、助けてください。
俺は心の中でそう叫んだ。
「ユーリくんは苦労するね」
お義父さん、それは追い撃ちです。
トドメのアッパーを食らい、俺は心の中で泣くのであった。
読んで頂きありがとうございます!!
今回はコメディー感を出せていたらいいなと思います!
2章ではバトルをメインにしていた(作者が勝手にそうしていた)ので、久しぶりに複数人のやり取りができた気がします。
もちろん3章でもバトルはありますが、日常パートもたくさん書いていきたいです!
長の言葉を皮切りにみんなは「おかえり」と言ってくれる。
「ただいま!」
帰ってきたという実感が心を満たして少しうるっときてしまう。
俺の帰りを待っていたと、みんなの笑顔から伝わってくる。
湧き上がる嬉しさをギュッと噛みしめる。
この場所にずっと居たい。
俺のことを待っていてくれる温かいこの場所でずっと生きていきたい。
そう思うと同時に伝えなければならないことが脳裏によぎる。
しかし、今はまだ嬉しい気持ちでいたいと思い思考を切り替えた。
「話を始める前に1つ聞いておきたいことがある」
長は細い目をさらに細めて俺に聞く。
なんだろう?
「そこにいる少女は誰なんじゃ?」
一瞬、何のことだかわからなかった。
俺は周りをキョロキョロ見渡してから、まさかと思いつつアカネを指差す。
アカネを除く全員が一斉に頷いた。
「あ、紹介してなかったけ?」
『うん』
全員の声が見事に重なる。
いやーそういうこともあるよね。
当の本人は物珍しそうに部屋を見渡している。
まぁ初めて人(龍人)の住んでいる場所に来たんだもんな。
色々珍しく感じるのはわかる。俺もここに来たばかりの頃は見るもの全てが気になって仕方がなかった。
て、思いふけってる場合じゃない。
「えーと、信じられないかもしれないけどこの子は俺の使い魔なんだ」
『使い魔!?』
わーみなさん、またまた声がそろってらっしゃる。
聞いたこともないよね、人の姿をした使い魔なんて……。
「使い魔と言ったら魔獣のことじゃろ?」
「ユーリ! 私はお前をそんな風に育てた覚えはないぞ! 少女を使い魔にするなんて……」
「ユーリくんが……ユーリくんが……」
長はいいとして母さんは何か誤解してる。絶対に間違った方向に誤解してる。
セレーナに至っては負のオーラに包まれて様子がおかしい。
そしてお義父さんの俺を見る目が怖い……。
俺は慌てて弁解を試みる。
「ちょっと待った! アカネ、立ってくれ」
アカネは?を浮かべつつも立ち上がってくれる。俺も合わせて立ち上がった。
「耳と尻尾を出してくれないか」
「わかった」
すると、アカネの魔力が一瞬膨れ上がってから真っ白な髪と同じ毛並みをした獣耳ともふもふな尻尾が現れる。
頭部でピョコピョコしている獣耳は突然現れたにもかかわらず自然なものに感じる。
尻尾は今すぐにでもモフりたいくらいふわっふわだ。
俺はモフりたい衝動を抑えて納得しているであろうみんなの顔を見る。
「どう?」
『獣人!?』
3度目も声がそろった。ここまで来るとわざとではないかと思えてくる。
この世界には俺のような人族、セレーナたちのような龍人族、そして獣人族や森人族など様々な種族がいる。アカネのような魔獣も1つの種族と考えられる。
しかし集落では他種族を招くことは禁じられている。俺は龍神の加護を授かっていたため例外というわけだ。
もう1つ例外とされるのが使い魔だ。
まぁ集落で使い魔を使役している人は数少ないけどね。
「うむ……いくらユーリといえど掟は掟じゃ」
「ユーリ……」
「ユーリくんがどんなところへ行くことになっても、わたしはついて行くから」
長は悩ましそうにずっと腕を組んでいる。
母さんは言葉を失っていた。
セレーナは覚悟を決めたように言い切る。
お義父さんは……怖くて顔が見れないよ。
あーなんて説明すれば……あっそうか。獣化するように言えばよかったのか。
「アカネ! 獣化だ」
「ん」
アカネは短く返事をしてからすぐに変身する。
キラキラと眩い光を発しながらアカネの姿はみるみる変わっていく。
光が弱まると真っ白な毛をなびかせた1匹の白狼が現れた。
「むむっ」
「なっ!?」
「えっ!?」
「ほぉ」
俺は獣化したアカネの頭を軽く撫でる。
アカネは少しくすぐったそうに目を細めた。
「これでアカネが使い魔って信じてくれた?」
「吸血狼……絶滅したと思っていたのじゃが、生き残りがおったのか」
そう言えば忘れていたがアカネは絶滅したはずの吸血狼の生き残りだ。
長年生きてきた長が驚くのも頷ける。
「本当に魔獣だった。わ、私は大切な息子を疑ってしまった……」
母さんは顔面蒼白で大変よろしくない状態だ。
「母さん!? 大丈夫だから! 俺は気にしてないから!」
俺は母さんに近づき何度も声をかける。
しかし母さんは明後日の方向を見つめていて俺の声は聞こえていない。
「ユーリくん、ごめんね……」
「セレーナまっ――」
急に立ち上がったセレーナは「待って」の声も届かぬ速さで走り去ってしまう。
数々の試練や困難を乗り越えてきたけど今回が1番厳しいかもしれない。
龍神様、助けてください。
俺は心の中でそう叫んだ。
「ユーリくんは苦労するね」
お義父さん、それは追い撃ちです。
トドメのアッパーを食らい、俺は心の中で泣くのであった。
読んで頂きありがとうございます!!
今回はコメディー感を出せていたらいいなと思います!
2章ではバトルをメインにしていた(作者が勝手にそうしていた)ので、久しぶりに複数人のやり取りができた気がします。
もちろん3章でもバトルはありますが、日常パートもたくさん書いていきたいです!
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