魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~
41 これから
「と言った感じじゃ」
黒龍王ノワールロワは「喋った喋った」と言いながら台座に座ると、ふぅーと深い息を吐いてからこちらの様子を見る。
「そんなことが……」
正直驚いた。
大きな戦いって……それに加護をもつ人族って俺のことだよな? 龍神様は何を知っていて何をしようとしているんだ?
これからどうすれば……いや、決まってる。
俺は大切な家族を守る、それだけだ。
家族が危険な目に遭うというのなら俺はそれを全力で阻止する。
「先に謝ろう。妾は妾を使うに値するかお主を今まで試していたのじゃ。それによってお主らを傷つけた……すまぬ」
黒龍王は誠意を持って謝る。
突然なことでいい返しが思いつかないが、ただ黒龍王の誠意を感じてその言葉を信じてもいいと思った。
確かにアカネが傷ついたことは本当のことで嫌な気持ちもあるが、それは俺が弱かったことで招いたことでもある。
それなら俺がもっと強くなってこんな思いをしなくて済むようにすればいい。
「わかりました」
「ユーリがいいなら、私もいい……」
黒龍王は「ありがとう」と言い少し間を空けてから再び話し始める。
「妾は言わばお主のために生まれ変わった剣じゃ。そして妾が求める力をその身をもってお主は示した」
そう言って黒龍王は台座から降り俺の前まで来ると片膝をついて頭を下げる。
それはまるで騎士が主に忠誠を誓う儀式を行っているような緊張感を作り出す。
「ユーリ……いや、我が主よ。この剣すべては主のものじゃ。主の剣として力の限りを尽くすと誓う」
そして直ぐに黒龍王が淡い光の粒子に変わると何やら剣の形に変化していく。
次第に剣は光の粒子から実体に変わる。
導かれるように俺はその鞘を掴む。
しかし掴んだところでそのフォルムに気がつく。
「日本刀?」
『どうじゃ? 妾の剣の姿は、カッコイイじゃろ?』
黒龍王は子供がおもちゃを自慢するように嬉々とした声で聞いてくる。
まさか刀だとは想像もしてなかった。
でも何だ? このどうしようもない程に男心をくすぐってくるものの正体は……。
(A.中二病です)
俺は思わず黒に染まった鞘から刀身を抜く。
刀身も負けず劣らず光を呑み込んでしまいそうな黒だが、刀身の真ん中に伸びる金色の線がどこか黒龍王の髪色を思わせる。
実際に刀を見たことは一度もなかったがこの漆黒の刀が美しいことに間違いはないと思った。
『この形はヒノマルという人族の国で「カタナ」と呼ばれている剣なのじゃ。この細身で湾曲したラインがグッとくるとは思わんか?』
「はい! 他の剣にはない美しさがありますね!」
「……何の話?」
アカネが俺の袖をくいくいっと引っ張り聞いてくる。
どうやらアカネには刀状態になった黒龍王の声は聞こえてないみたいだ。
「黒龍王さんカッコイイ! みたいな話?」
「ふーん……」
あれ? なんかアカネさん怒ってる?
『主はわかっておるな! 嬉しいぞ! それと主よ、妾のことはノワールと呼んでくれると嬉しい。もう黒龍王は死んだからな。今の妾は龍剣ノワールロワじゃ』
「わかりましたノワールさん」
まさか曽て龍王だったノワールさんが龍剣(刀)に変わり俺の剣になるなんてな……。
『主よ、言い忘れていたが妾はただの剣ではないぞ』
「それってどういう意味ですか?」
『説明するよりも使ってみた方が話が早い。納刀状態から『龍纏』と言って剣を抜くのじゃ』
「わかりました」
俺は何となく腰に鞘を当て言われた通りに剣を抜く。
『龍纏!』
引き抜いた剣の先が金の花びらのように変わり舞っていく。金の花びは俺を中心に渦を巻き一瞬にして消える。
そして俺の装備はローブから黒の和服、下は袴になっていて鎧というよりもプレートアーマーが所々施されている姿に変わっていた。
袖やアーマーなどの様々な箇所に金の線が入っていてどこか優美で格式高さを感じる。
更に気がついたことがある。
「この装備は俺の魔力を吸収している?」
『そうじゃ。この『龍纏』は主の魔力を吸った分だけ防御力が上がり大抵の魔法は無効化できる。もちろん魔法以外の攻撃も防ぐぞ! どうじゃ? すごいじゃろ?』
ノワールさんは「褒めて褒めて」と言った感じで喋る。
何だかノワールさんの性格が少しわかってきたかもしれない。
怖いイメージがあったけど意外とこの人可愛らしい人なのかも。
「破格の強さですね……」
龍剣の力は予想以上だった。
でもあの黒龍王の魂が融合した剣なんだ。納得できる強さでもある。
『それにしても誰かの魔力を吸った経験はなかったが主の魔力は美味じゃな! もっと吸いたくなってくる……ジュルジュルッ』
だ、大丈夫なのか!?
これ、魔力を絞り尽くされるなんてことないよね?
「ユーリ! 大丈夫?」
「あぁ、大丈夫だよ」
少し離れていたアカネが俺を心配して体をペタペタ触る。
「これは?」
「ノワールさんの能力によって服装が変わった感じかな」
「(あの剣の能力ってのはイラッとするけど)ユーリかっこいい」
「そう?」
アカネが素直に褒めてくれる。
嬉しいけど……何だろうこの言い表せない不安感。
***
その後龍纏は解除し今後のことを話し合うことにした。
「主よ、これからどうするのじゃ?」
「その前に1つ聞きたいことがあって、この迷宮はどこに位置しているんですか?」
「うむ。この迷宮は『名もなき迷宮』と呼ばれていて『終わりなき森』の最深層に位置している」
「終わりなき森!?」
「……?」
アカネはよくわからないといった表情で俺たちを交互に見ている。
その仕草ちょっと可愛い。
いやいや、そうじゃなくてここが終わりなき森?
終わりなき森と言えば犯龍を処罰するための場所のはず。
俺は知らずのうちに終わりなき森に迷い込んでいたってことか。まぁ思い当たる節はあるけど……。
「主は知らずにこの迷宮まで辿り着いたのか? それはまた数奇な運命というやつじゃな。というよりも必然だったとも思える」
「それでここから……終わりなき森から出ることはできますか?」
「可能じゃ。最深層は唯一魔力を妨害する力が働いていない。と言っても主なら強引に転移することもできるのではないか?」
確かに今の俺なら魔力に任せた転移魔法で集落まで転移できるかもしれない。でも……。
「これからのことですが、俺はもう少しこの森で修行したいと思っています。この森で過ごしていく中で自分の弱さがよくわかりました。そしてこの森なら自分が強くなれることも……」
「うむ」
「俺はここで家族を守れる強さをつけてから集落に帰りたいと思います。これから先どんな戦いが待っているかわからないですが、絶対に負けたくない。だから強くなります」
「私も強くなりたい……ユーリの隣にいたいから」
「アカネ……」
アカネは頬を赤らめて照れているのか顔を合わせようとしない。
なんていい子なんだ……俺、泣いちゃうぞ!
「うむ、わかった! この元龍王ができる限りのサポートをしよう。みっちり特訓だ!」
おぉ、なんかノワールさんにも火が着いちゃったよ。でも元龍王の特訓なんて普通じゃ受けられないし楽しみだ!
あと少し待たせることになるけど、絶対に強くなって帰ってくるよ――――セレーナ。
黒龍王ノワールロワは「喋った喋った」と言いながら台座に座ると、ふぅーと深い息を吐いてからこちらの様子を見る。
「そんなことが……」
正直驚いた。
大きな戦いって……それに加護をもつ人族って俺のことだよな? 龍神様は何を知っていて何をしようとしているんだ?
これからどうすれば……いや、決まってる。
俺は大切な家族を守る、それだけだ。
家族が危険な目に遭うというのなら俺はそれを全力で阻止する。
「先に謝ろう。妾は妾を使うに値するかお主を今まで試していたのじゃ。それによってお主らを傷つけた……すまぬ」
黒龍王は誠意を持って謝る。
突然なことでいい返しが思いつかないが、ただ黒龍王の誠意を感じてその言葉を信じてもいいと思った。
確かにアカネが傷ついたことは本当のことで嫌な気持ちもあるが、それは俺が弱かったことで招いたことでもある。
それなら俺がもっと強くなってこんな思いをしなくて済むようにすればいい。
「わかりました」
「ユーリがいいなら、私もいい……」
黒龍王は「ありがとう」と言い少し間を空けてから再び話し始める。
「妾は言わばお主のために生まれ変わった剣じゃ。そして妾が求める力をその身をもってお主は示した」
そう言って黒龍王は台座から降り俺の前まで来ると片膝をついて頭を下げる。
それはまるで騎士が主に忠誠を誓う儀式を行っているような緊張感を作り出す。
「ユーリ……いや、我が主よ。この剣すべては主のものじゃ。主の剣として力の限りを尽くすと誓う」
そして直ぐに黒龍王が淡い光の粒子に変わると何やら剣の形に変化していく。
次第に剣は光の粒子から実体に変わる。
導かれるように俺はその鞘を掴む。
しかし掴んだところでそのフォルムに気がつく。
「日本刀?」
『どうじゃ? 妾の剣の姿は、カッコイイじゃろ?』
黒龍王は子供がおもちゃを自慢するように嬉々とした声で聞いてくる。
まさか刀だとは想像もしてなかった。
でも何だ? このどうしようもない程に男心をくすぐってくるものの正体は……。
(A.中二病です)
俺は思わず黒に染まった鞘から刀身を抜く。
刀身も負けず劣らず光を呑み込んでしまいそうな黒だが、刀身の真ん中に伸びる金色の線がどこか黒龍王の髪色を思わせる。
実際に刀を見たことは一度もなかったがこの漆黒の刀が美しいことに間違いはないと思った。
『この形はヒノマルという人族の国で「カタナ」と呼ばれている剣なのじゃ。この細身で湾曲したラインがグッとくるとは思わんか?』
「はい! 他の剣にはない美しさがありますね!」
「……何の話?」
アカネが俺の袖をくいくいっと引っ張り聞いてくる。
どうやらアカネには刀状態になった黒龍王の声は聞こえてないみたいだ。
「黒龍王さんカッコイイ! みたいな話?」
「ふーん……」
あれ? なんかアカネさん怒ってる?
『主はわかっておるな! 嬉しいぞ! それと主よ、妾のことはノワールと呼んでくれると嬉しい。もう黒龍王は死んだからな。今の妾は龍剣ノワールロワじゃ』
「わかりましたノワールさん」
まさか曽て龍王だったノワールさんが龍剣(刀)に変わり俺の剣になるなんてな……。
『主よ、言い忘れていたが妾はただの剣ではないぞ』
「それってどういう意味ですか?」
『説明するよりも使ってみた方が話が早い。納刀状態から『龍纏』と言って剣を抜くのじゃ』
「わかりました」
俺は何となく腰に鞘を当て言われた通りに剣を抜く。
『龍纏!』
引き抜いた剣の先が金の花びらのように変わり舞っていく。金の花びは俺を中心に渦を巻き一瞬にして消える。
そして俺の装備はローブから黒の和服、下は袴になっていて鎧というよりもプレートアーマーが所々施されている姿に変わっていた。
袖やアーマーなどの様々な箇所に金の線が入っていてどこか優美で格式高さを感じる。
更に気がついたことがある。
「この装備は俺の魔力を吸収している?」
『そうじゃ。この『龍纏』は主の魔力を吸った分だけ防御力が上がり大抵の魔法は無効化できる。もちろん魔法以外の攻撃も防ぐぞ! どうじゃ? すごいじゃろ?』
ノワールさんは「褒めて褒めて」と言った感じで喋る。
何だかノワールさんの性格が少しわかってきたかもしれない。
怖いイメージがあったけど意外とこの人可愛らしい人なのかも。
「破格の強さですね……」
龍剣の力は予想以上だった。
でもあの黒龍王の魂が融合した剣なんだ。納得できる強さでもある。
『それにしても誰かの魔力を吸った経験はなかったが主の魔力は美味じゃな! もっと吸いたくなってくる……ジュルジュルッ』
だ、大丈夫なのか!?
これ、魔力を絞り尽くされるなんてことないよね?
「ユーリ! 大丈夫?」
「あぁ、大丈夫だよ」
少し離れていたアカネが俺を心配して体をペタペタ触る。
「これは?」
「ノワールさんの能力によって服装が変わった感じかな」
「(あの剣の能力ってのはイラッとするけど)ユーリかっこいい」
「そう?」
アカネが素直に褒めてくれる。
嬉しいけど……何だろうこの言い表せない不安感。
***
その後龍纏は解除し今後のことを話し合うことにした。
「主よ、これからどうするのじゃ?」
「その前に1つ聞きたいことがあって、この迷宮はどこに位置しているんですか?」
「うむ。この迷宮は『名もなき迷宮』と呼ばれていて『終わりなき森』の最深層に位置している」
「終わりなき森!?」
「……?」
アカネはよくわからないといった表情で俺たちを交互に見ている。
その仕草ちょっと可愛い。
いやいや、そうじゃなくてここが終わりなき森?
終わりなき森と言えば犯龍を処罰するための場所のはず。
俺は知らずのうちに終わりなき森に迷い込んでいたってことか。まぁ思い当たる節はあるけど……。
「主は知らずにこの迷宮まで辿り着いたのか? それはまた数奇な運命というやつじゃな。というよりも必然だったとも思える」
「それでここから……終わりなき森から出ることはできますか?」
「可能じゃ。最深層は唯一魔力を妨害する力が働いていない。と言っても主なら強引に転移することもできるのではないか?」
確かに今の俺なら魔力に任せた転移魔法で集落まで転移できるかもしれない。でも……。
「これからのことですが、俺はもう少しこの森で修行したいと思っています。この森で過ごしていく中で自分の弱さがよくわかりました。そしてこの森なら自分が強くなれることも……」
「うむ」
「俺はここで家族を守れる強さをつけてから集落に帰りたいと思います。これから先どんな戦いが待っているかわからないですが、絶対に負けたくない。だから強くなります」
「私も強くなりたい……ユーリの隣にいたいから」
「アカネ……」
アカネは頬を赤らめて照れているのか顔を合わせようとしない。
なんていい子なんだ……俺、泣いちゃうぞ!
「うむ、わかった! この元龍王ができる限りのサポートをしよう。みっちり特訓だ!」
おぉ、なんかノワールさんにも火が着いちゃったよ。でも元龍王の特訓なんて普通じゃ受けられないし楽しみだ!
あと少し待たせることになるけど、絶対に強くなって帰ってくるよ――――セレーナ。
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