魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~
35 迷宮8
「アカネ、先制攻撃だ!」
「ガウッ!」(んっ!)
俺は一瞬で込められる最大限の魔力を込めて、魔法陣を展開する。一瞬で込められる最大限と言っても、上級最高位の威力だ。もちろん光魔法を使う。
アカネも俺と同じように魔法陣を展開している。1つ違うのは俺が1つの巨大な魔法陣を展開しているのに対して、アカネは複数の小さな魔法陣を展開していることだ。
これは魔術師としての感覚の違いが現れていると思う。一撃必殺を意識している俺と、敵を追い詰めることを考えているアカネでは魔法のイメージは変わってくるというわけだ。
どちらが正しいなんてことはないが、アカネの感覚には良い影響を受けている。
俺は極大のレーザービームをイメージして魔法を放つ。
「光よ!」
アカネが魔法を放ったのも同タイミングだ。さすが俺の相棒。
極大レーザービームと十数の光の槍は黒龍王に向かって一直線に進む。
黒龍王は慌てる様子なんてなく、鋭い眼は俺たちの魔法を晒すことなく捉えている。
そして、俺たちの魔法が直撃した……かと思われたが、黒龍王を守るように現れた闇のベールが光を呑み込み無力化してしまう。
「黒龍王の十八番か……」
黒龍王は雷魔法と闇魔法を得意としていた。
雷魔法と闇魔法で言えば、俺よりも数段上の実力ということは確かだ。
光と闇は相対する力であり、魔術師の実力によって優劣がはっきりと決まる。
そう、今の俺では黒龍王の闇魔法を打ち破ることは不可能だということだ。
俺たちの攻撃を防いだあの闇魔法は常時展開型の魔法であり、最強の闇防御魔法『ダークネス』だ。
「さて、どうするか……っ!」
黒龍王の周りに6つほどの魔法陣を展開され、そこから雷鳴を轟かす巨大な槍が俺たちに向かって放たれる。
俺はアカネに触れてから転移魔法を使い、安全な場所まで転移する。
しかし、巨大な雷槍は壁にぶつかる前に方向を変え、俺たちを追跡する。
俺はさらに転移魔法を使うが、転移する度に雷槍は俺たちを追いかけ続ける。
あれほど大規模な魔法を長時間操り続けるなんて……これが龍王の力か。
キリがないな……なら!
「火よっ!」
俺は転移した直後に雷槍に向かって、火魔法による巨大な炎の手をぶつける。
逃げきれないなら相殺する!
『ブレイズハンド!』
火魔法は俺の十八番だ。
雷魔法で負けていても、火魔法で負けるつもりはない。
数本の巨大な雷槍と、それよりさらに巨大な炎の手が押し合っている。
力は五分五分か……いや、押し切る!
俺は全く同じもう1つの魔法陣を展開する。
ブレイズハンド、その2!
もう1つの魔法陣からも巨大な炎の手が現れ、魔法の押し合いは俺の方が優勢になる。
「いっけぇぇえええ!!」
俺の叫びに呼応するように炎の手は勢いを増して燃え盛り、黒龍王の雷槍を炎の手が握り潰す。
「アカネ!」
『ガウ』(レイディアント)
俺が雷槍を引きつけている間に、黒龍王の側面へと移動していたアカネが詠唱済みの高火力光魔法を撃ち放つ。
魔法陣から放たれた無数の光の線が屈折を繰り返し、黒龍王という一点に向かって集束する。
いくら龍王と言えども、攻撃直後は隙ができるはずだ。
いけ、アカネ!
黒龍王を闇のベールが急速に包み込んでいくが、わずかな差でアカネの放った魔法の方が速い。
いける!
『ゴォォォオオオオッ――――!!!!』
アカネの魔法が直撃し、爆発による煙が巻き起こるが何か様子が変だった。
倒せた気が全くしない。
何より黒龍王の魔力が消えるどころか増えている……?
煙が晴れて黒龍王の姿がはっきりと見える。
黒龍王ノワールロワには龍王と呼ばれるだけの理由がある。
それは単に龍人の中で一番強いからではない。もちろん龍人の中で一番強かったかもしれないが、それが理由ではない。
龍人は龍化と人化を使い分ける特異な存在だが、龍王にだけが使える力が存在する。
「龍人化」
それは龍人の最終形態とも呼べる力。
人の姿でありながら、龍の角、翼、尻尾を生やしたその状態を龍人化という。
龍神アミナスの姿も龍人化と同じだったと言われている。
目の前にいる黒龍王ノワールロワは黒い面をつけているが、輝く長い金髪とその美しいスタイルから女性であるというのは本当だとわかった。
ん? 前にもどこかで会ったことがあるような……そんなことあるわけないよな。
そんな疑問は頭から消し去り、目の前の脅威に集中する。
大きさは随分と小さくなったが、先ほどよりも肩にのしかかる圧力は倍以上に感じる。
構えもなく、自然体で直立しているのに隙が全くない。
「…………!」
黒龍王が音もなく消える。
「どこに――――ぐはぁッ」
腹部を杭で打ち付けるような衝撃が襲う。
見えない……。
体はくの字に折れ曲がれ、そのまま吹き飛ばされる。
「ガウッ!」(ユーリッ!)
アカネの叫ぶ声が聞こえる。
そして、ぼやける視界の中でアカネが黒龍王に立ち向かう姿が見える。
だめだ……アカネ……逃げてくれ。
逃げ場などないのに、圧倒的な強さの前ではそう思うしかなかった。
黒龍王はアカネの首を掴み、容赦なく投げ飛ばす。
遠くの方で壁を砕く音が聞こえる。
やめてくれ……俺は……おれは……なんのために…………
全身が急速に冷えて、思考は停止する。
そして、俺の中で何かが砕け散る音がした。
「ガウッ!」(んっ!)
俺は一瞬で込められる最大限の魔力を込めて、魔法陣を展開する。一瞬で込められる最大限と言っても、上級最高位の威力だ。もちろん光魔法を使う。
アカネも俺と同じように魔法陣を展開している。1つ違うのは俺が1つの巨大な魔法陣を展開しているのに対して、アカネは複数の小さな魔法陣を展開していることだ。
これは魔術師としての感覚の違いが現れていると思う。一撃必殺を意識している俺と、敵を追い詰めることを考えているアカネでは魔法のイメージは変わってくるというわけだ。
どちらが正しいなんてことはないが、アカネの感覚には良い影響を受けている。
俺は極大のレーザービームをイメージして魔法を放つ。
「光よ!」
アカネが魔法を放ったのも同タイミングだ。さすが俺の相棒。
極大レーザービームと十数の光の槍は黒龍王に向かって一直線に進む。
黒龍王は慌てる様子なんてなく、鋭い眼は俺たちの魔法を晒すことなく捉えている。
そして、俺たちの魔法が直撃した……かと思われたが、黒龍王を守るように現れた闇のベールが光を呑み込み無力化してしまう。
「黒龍王の十八番か……」
黒龍王は雷魔法と闇魔法を得意としていた。
雷魔法と闇魔法で言えば、俺よりも数段上の実力ということは確かだ。
光と闇は相対する力であり、魔術師の実力によって優劣がはっきりと決まる。
そう、今の俺では黒龍王の闇魔法を打ち破ることは不可能だということだ。
俺たちの攻撃を防いだあの闇魔法は常時展開型の魔法であり、最強の闇防御魔法『ダークネス』だ。
「さて、どうするか……っ!」
黒龍王の周りに6つほどの魔法陣を展開され、そこから雷鳴を轟かす巨大な槍が俺たちに向かって放たれる。
俺はアカネに触れてから転移魔法を使い、安全な場所まで転移する。
しかし、巨大な雷槍は壁にぶつかる前に方向を変え、俺たちを追跡する。
俺はさらに転移魔法を使うが、転移する度に雷槍は俺たちを追いかけ続ける。
あれほど大規模な魔法を長時間操り続けるなんて……これが龍王の力か。
キリがないな……なら!
「火よっ!」
俺は転移した直後に雷槍に向かって、火魔法による巨大な炎の手をぶつける。
逃げきれないなら相殺する!
『ブレイズハンド!』
火魔法は俺の十八番だ。
雷魔法で負けていても、火魔法で負けるつもりはない。
数本の巨大な雷槍と、それよりさらに巨大な炎の手が押し合っている。
力は五分五分か……いや、押し切る!
俺は全く同じもう1つの魔法陣を展開する。
ブレイズハンド、その2!
もう1つの魔法陣からも巨大な炎の手が現れ、魔法の押し合いは俺の方が優勢になる。
「いっけぇぇえええ!!」
俺の叫びに呼応するように炎の手は勢いを増して燃え盛り、黒龍王の雷槍を炎の手が握り潰す。
「アカネ!」
『ガウ』(レイディアント)
俺が雷槍を引きつけている間に、黒龍王の側面へと移動していたアカネが詠唱済みの高火力光魔法を撃ち放つ。
魔法陣から放たれた無数の光の線が屈折を繰り返し、黒龍王という一点に向かって集束する。
いくら龍王と言えども、攻撃直後は隙ができるはずだ。
いけ、アカネ!
黒龍王を闇のベールが急速に包み込んでいくが、わずかな差でアカネの放った魔法の方が速い。
いける!
『ゴォォォオオオオッ――――!!!!』
アカネの魔法が直撃し、爆発による煙が巻き起こるが何か様子が変だった。
倒せた気が全くしない。
何より黒龍王の魔力が消えるどころか増えている……?
煙が晴れて黒龍王の姿がはっきりと見える。
黒龍王ノワールロワには龍王と呼ばれるだけの理由がある。
それは単に龍人の中で一番強いからではない。もちろん龍人の中で一番強かったかもしれないが、それが理由ではない。
龍人は龍化と人化を使い分ける特異な存在だが、龍王にだけが使える力が存在する。
「龍人化」
それは龍人の最終形態とも呼べる力。
人の姿でありながら、龍の角、翼、尻尾を生やしたその状態を龍人化という。
龍神アミナスの姿も龍人化と同じだったと言われている。
目の前にいる黒龍王ノワールロワは黒い面をつけているが、輝く長い金髪とその美しいスタイルから女性であるというのは本当だとわかった。
ん? 前にもどこかで会ったことがあるような……そんなことあるわけないよな。
そんな疑問は頭から消し去り、目の前の脅威に集中する。
大きさは随分と小さくなったが、先ほどよりも肩にのしかかる圧力は倍以上に感じる。
構えもなく、自然体で直立しているのに隙が全くない。
「…………!」
黒龍王が音もなく消える。
「どこに――――ぐはぁッ」
腹部を杭で打ち付けるような衝撃が襲う。
見えない……。
体はくの字に折れ曲がれ、そのまま吹き飛ばされる。
「ガウッ!」(ユーリッ!)
アカネの叫ぶ声が聞こえる。
そして、ぼやける視界の中でアカネが黒龍王に立ち向かう姿が見える。
だめだ……アカネ……逃げてくれ。
逃げ場などないのに、圧倒的な強さの前ではそう思うしかなかった。
黒龍王はアカネの首を掴み、容赦なく投げ飛ばす。
遠くの方で壁を砕く音が聞こえる。
やめてくれ……俺は……おれは……なんのために…………
全身が急速に冷えて、思考は停止する。
そして、俺の中で何かが砕け散る音がした。
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