魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~

黒眼鏡 洸

15 尻尾と魔書

 アカネと契約を交わしてから、約2週間ほどが経った。

 アカネの強さは言うまでもなく、期待以上の戦力だ。

 体力や魔力、傷などは俺の血を吸うことで回復するため、食料の心配もなければ睡眠をとる必要もない。

 そのため、夜の間はアカネに見張りを頼んでいる。

 安心して休める。あーなんて素晴らしいことなんだ! 泣きそう。アカネ様様だ。

「アカネ、ここら辺で一度休憩にしよう」

「ガウッ」

 俺は近くの木に、もたれ掛かるように座る。アカネも俺の側まで寄ると、腰を下ろして休む。

 俺は木の枝に実っている果実を見つけると、その果実を具現化させた魔力でもぎ取る。

 桃色をした瑞々しい果実に俺はかぶりつく。

 甘いっ!

 口に広がる優しい甘さが俺の喉を潤してくれる。

 この森、意外と果実が充実してていいんだよね。セレーナにも食べさせてあげたいな……。

「ガウッ?」

 俺の様子が少し変わったことを察したのか、アカネが俺の顔を覗いて見ている。

「いや、何でもないよ」

 俺がそう言うと、アカネは自身の尻尾を差し出す。

「あぁ、そうか。俺のことを慰めてくれてるんだな」

 実は、アカネの尻尾はどの部分よりふわふわしていて触り心地が1番いい。

 最近、気がつけばアカネを撫でていることが多くなってきている。

 すっかりアカネの毛並みのとりこだ。

 俺はアカネの尻尾を優しく掴み取り、ゆっくりと噛みしめるように撫でていく。

 ふわふわだぁー。なんか何もかもが、どうでもいいと思えてくる。

 魅惑の尻尾に俺は癒される。疲れさえも吹っ飛ぶほどに。

「アカネ、ありがとう」

「ガウッ」





 ***





 魔書を確認しよう。

 忘れていた……なんてことはない!

「魔書よ」

 俺の呼び声に応えるように、右手に嵌めている指輪が眩い光り出して書の形へと変わる。

「ガウッ!」

「そうか、アカネは見たことないよな。これは魔書と言って、すごいやつなんだ」

「ガウッ?」

 どうやら上手く伝わらなかったみたいだ。当たり前だけど。

「こうやってな……『魔書よ、俺の会得している魔法を教えてくれ』」

 魔書は自らページをペラペラとめくり、俺の求める答えを示してくれる。

 ――――

 会得魔法

 <初級>生活(限定)

 <下級>強化(限定)

 <中級>飛翔(限定)、契約(限定)

 <上級>水、土、光、闇、氷、治癒、自然、鉱石、結界、付与、切断

 <絶級>火、風、雷

 *『(限定)』とはその階級のみでしか存在しない魔法。

 ――――

「って感じで見れるんだけど……って、絶級っ!?」

「ガウッ?」

「いや、俺の魔法が強くなっていたから驚いたんだ」

 まさか絶級に達していたとは……でも嬉しいな。ふ、ふふっ。

 絶級は上級の1つ上の階級だが、それは階級上の話であって実際は簡単には超えられない壁が存在する。

 人族では上級を使えるだけでも優秀な魔術師だと言われるらしい。

 まぁ、龍人族でも上級を使えるのは成龍レベルだとは思うけど。

「アカネの会得した魔法とかも見れたりしないのかな」

「ガウッ!」

 アカネが俺の左手に噛みつく。

「え、吸血するの? ……そうか、今なら一時的に俺と魔力が繋がっていると考えられるか」

 アカネって、俺より頭いいんじゃないか?

 俺は魔書に目を向ける。

「魔書よ、アカネの会得している魔法を教えてくれ」

 魔書のページがペラペラと動き出す。あるところで止まり、白紙のページに文字が刻まれていく。

 ――――

 会得魔法(アカネ)

 <下級>強化(限定)

 <中級>光、治癒

 <上級>火、闇、雷

 <絶級>吸血(種族)

 *『(限定)』はその階級のみでしか存在しない魔法。
 *『(種族)』はその種族のみでしか存在しない魔法。

 ――――

 すごいっ!

 会得している魔法の数は俺より少なくても、上級魔法は3つもある。

 それに種族魔法の吸血魔法は絶級だ。

 俺に吸血しているときに発動しているのが、その吸血魔法だと思う。

 吸血魔法……いいなぁー俺も欲しいなぁー。

「アカネ! すごい!」

「ガ、ガウッ」

 俺のテンションの上がりように、ついていけていないアカネは少し戸惑いを見せつつも俺に合わせて喜ぶ。

 優秀な使い魔を手に入れることは、魔術師として誇り高いことだと言われている。

「なんか魔法を使いたくなってきた! よしっアカネ、魔法の特訓だ!」

「……ガウッ」

 俺は久しぶりに魔法を使いたくなる、うずうずとした感覚を感じる。

 今日なら新魔法を会得できそうな気がする!





 そんなこんなで、俺とアカネは魔法の特訓に打ち込んだのであった。





「が、ガウ……」(ま、マスター……)

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