魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~

黒眼鏡 洸

6 雷槍

 深紅の炎は女王を掴むように燃え盛る。その熱量は距離をとっている俺のところまで伝わる。

「シャアァぁぁあああ!!」

 女王影蛇クイーンシャドースネークの怒号が闇深い森に響き渡る。

 よし、当たった。思ったより威力が強くなっちゃった気もするけど、まぁいいか。

 俺は闇に逃げられる前に追撃を試みる。

「鉱石よ」

 鉱石魔法で創り出すのは礫だ。俺の足下に現れた魔法陣から、野球ボールほどの石が次々と浮かび上がる。その数は百を超えるだろう。

「雷よ」

 次に使うのは雷魔法。

 今は全身強化とサンダーフォルムは解除している。それによって、2つの魔法を同時に使うことが出来るようになった。

 礫に雷を纏わせる。

 狙いを女王影蛇に定め、銃型にした手を打ち上げる。

「いけ!」

 雷を纏った礫たちが女王影蛇を襲う。

 音速を超える礫は、女王を絶え間なく穿つ。破裂音が静寂を壊す。

 全ての礫が放たれ、再び静寂が戻る。

 やつは? 魔力は少し感じる。

 俺は警戒しながらも一歩ずつ女王影蛇に近づく。

「しゃ、シャアぁ……」

 女王影蛇に、もう戦う力は残されていなかった。虫の息だ。

 もう攻撃をする必要はないと考える人もいるだろう。しかし……

「……情けはかけられない。それはお前もわかってるはずだ。それが森の掟」

 強者のみが生き残れる。そして勝者は敗者の肉を食らう。そうして、その血肉が勝者の糧となっていく。

 命は繋がる。

 お前の肉も血も、全て俺の糧にする。

「求めるは雷。轟く雷よ、全てを穿つ大槍となれ」
『ライトニングジャベリン』

 俺は天に向かって右手を伸ばす。

 すると、女王影蛇を超える大きさの魔法陣が女王の上に現れる。ビリビリと音を立てる魔法陣からは、重々しい威圧感が感じられる。

 突き伸ばした手を俺は振り下ろした。

 刹那。

 魔法陣から放たれる特大の落雷が女王影蛇を穿つ。

 耳を塞ぎたくなるような雷鳴が森に響く。

「やりすぎた。さすがに上級は使わなくてよかったかも……」

 落雷を受けた女王影蛇は黒焦げとなり、その息はもうない。

 うん。やっぱり自重した方がいいかも……できるか分からないけど。

 俺は風魔法で女王影蛇を切り裂いていく。その後結界魔法で結界を張り、俺は座る。

 戦って腹が減った。早速だが俺の糧にしよう。

 手を合わせ、感謝の気持ち込めて言う。

「いただきます」

 手で持てる程度の大きさまでに切った肉を、俺は一つ手に取る。俺は勢いよく肉にかぶりついた。

「……うまい」

 引き締まったその肉は、噛むたびに旨味を増していく。溢れんばかりの肉汁が口の中を満たす。クドさのない脂が、逆に幸福をもたらしてくれる。

 ありがとう……クイーンシャドースネーク。

 ***

 俺はあの後、近くの高い木に登り夜明けまで休息をとった。

 未知の森2日目。

 現在は朝。まだ日が昇ってから間もない。俺は食料探しをしていた。

「うん、近い」

 俺の魔力感知に引っかかる魔獣がいる。昨日とは違い、魔獣の反応はたくさんある。もしかすると、女王影蛇を倒したからかもしれない。

 俺は気配をできる限り消して獲物に近づく。

 今回の獲物は上級魔獣のトロルシープだ。トロルシープは羊のような魔獣なのだが、とにかくデカイ。

 その大きさはビル2階相当になると思う。それほどデカイ。

 デカイ綿毛だぁ……。

 てか、あんなのどこに隠れてたの? ふしぎ!

 俺は木から木へと移り飛び、トロルシープを追いかける。まだ気づかれていないようだ。

 トロルシープが止まる。合わせて俺も止まる。

「ベヨォーー」

 トロルシープが鳴いた。意外と低い声だ。 

 俺に気づいたか? いや、違うか。ならどうして?

 俺がトロルシープの行動に思惟していると、突然トロルシープが走り出す。それも先ほどの速さとは比べものにならないくらいに。

「ちょ!?」

 俺も慌てて追いかける。





コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品