魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~

黒眼鏡 洸

15 基礎魔法と氷魔法

 今は1才になってから2ヶ月が経ち、光の月だ。

「もとめるはひ。ひよ、たまとなりてあたれ!」

 体に流れている魔力が反応して、体の外へ流れ出す。流れ出した魔力は魔法陣を描き始める。

 魔法陣が完成すると燃え盛る炎が創り出され、炎は回転するよう動くと、バスケットボールほどの球を形作る。

 よし、スムーズにできてる。あの的に当てるイメージで……

『ふぁいあーぼーる!』

 俺が放った炎の球は、鳥が羽ばたく程度の速さで10メートル先の的に一直線に進む。

 ボォっ

 炎の球が当たった的は黒く焦げ、使い物にならなくなっていた。

 んー、速さはまあまあだな。威力は少し上がったかな?

 よし、次は水魔法だ。

「もとめるはみず。みずよ、たまとなりてあたれ!」 『うぉーたーぼーる!』





 ***





 俺はあの日、火魔法を検証してモドカシイ気持ちを味わってから今日まで、日々、魔力が尽きるギリギリまで特訓に励んだ。

 その結果、基礎魔法は<下級>まで難なく扱えるようになった。基礎魔法は火、水、風、土の4つからなる。

 ちなみに、だれでも使える生活魔法というものがある。ホコリなどを取り除き綺麗にする『クリーン』や、汚れを洗い落とす『ウォッシュ』などがそれだ。

 んー、やっぱり上級は何となく無理そうだな。今日は魔力も少し余裕があるし、基礎以外の魔法もやってみるか!

 今日、挑戦するのは氷魔法。氷を創り出し、操る魔法だ。

 新しい魔法を習得するときには、その魔法特有の魔力の流れを理解することが必要だ。これがまた難しい。

 術者にはそれぞれ、適性魔法というものがある。適性とは習得したい魔法に素質があるかどうかということなのだが、これがかなり重要になってくる。

 適性がある者とない者では習得するのに、天と地の差が生まれる。基礎魔法は魔力の流れが掴みやすいため、魔術師ならば大抵の者は扱うことができる。

 俺は『龍神の加護』のおかげで全ての魔法に適性があるから、比較的早く魔力の流れを掴めている気がする。ありがたいね!

 よし、氷魔法に挑戦しよう。新しい魔法ってワクワクするなぁ。おっと、落ち着いていこう。

 確か、詠唱は……

「もとめるはこおり。こおりよ、わがてにあつまれ!」 『あいす!』

 俺は腕を前に伸ばし、手のひらを広げると、体に流れる魔力に意識を集中させる。

 ん! 今、少し動いた! この感じね。もう一度だ。

「もとめるはこおり。こおりよ、わがてにあつまれ!」

 次はさっきの流れを意識して……

『あいす!』

 すると、手のひらの先に指先ほどの小さな氷の結晶が創り出される。

 やったー!! 成功だ! よし、このまま氷を大きくするイメージで魔力を注いでみよう。

 手のひらの先にできた氷の結晶に意識を向け、魔力の流れをより正確に調整チューニングしていく。

 よし、完全に掴めた。

 魔力を流し込んでいくと、それに伴って氷の結晶も大きくなる。少しずつ大きくなった結晶はラグビーボールほどの大きさまでになった。

 うん、いい感じだ。かなり流れがわかった気がする。とりあえず、これくらいでいいか。

 そこで魔力の流れを一旦止め、氷を砕くイメージをする。

 パリンッ

 一瞬にして砕け、粉々になった氷の結晶は、光に反射してキラキラと輝く。





 綺麗だ……。





 素直にそう思った。周りの世界に対して、特別興味のなかった昔の俺とは、今は違う。

 セレーナちゃんやお母さんにも見せてあげよ。





 俺は心地よい幸福感に包まれながら、家に帰った。





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