魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~

黒眼鏡 洸

4 龍人の集落

 目が覚めると、俺は龍人さんと空中デートだ。

 わぁーい! って、なるかーいっ!! 危うく、また夢の中へアイキャンフラーイするとこだったぞ。

「ん、起きたか。少々、刺激が強かったみたいだな」

 強すぎます。僕、赤ちゃんです。ベイビーです。

 今の速度は、先ほどよりゆっくりになっていて、ジェットコースターからメリーゴーランドに変わった感じだ。

「もうすぐ集落に着くぞ」

 龍人さんがそう言うと、確かに遠くの方に開けた場所があり、そこにいくつもの家のようなものが見える。

「降りるぞ。舌を噛むなよ」

 お気遣いはありがたいんですけど、赤ちゃんだから。普通、そんなことわからないから。

 そして、集落の上まで来たところで一時停止。そして……

 急降――下ぁー!!

 わかっていたよこの流れ……。今回は、気を失わずに済んだ。耐性でもついたかなぁ。慣れってコワイ。

「着いたぞ。ここが龍人の集落『ドラフヘン』だ」

 ――自然と龍人ひと一体化きょうぞんしていた。降り注ぐ光は暖かく、子供たちは駆け回り、龍人ひとが笑い合う。

 いいところだなぁ。俺にはないものだ……。

「長の元へ行くぞ」

 はーい。長はどんな人かな? 怖い人ではないといいんだけど。





 ***





「長、アーテルでございます。少しお話したいことがあるのですが、宜しいでしょうか?」

 龍人さん、アーテルって名前なんだ。赤ちゃんだと話せないから困る。何とか、早く喋れるようになりたいなぁ。

「うむ。入りなさい」

 アーテルさんは一瞬、木の一部と勘違いしてしまいそうな木の扉を開けると、部屋の中へ入って行く。

 部屋の奥には少し段差があり、赤と白を基調とした茣蓙ござが引かれている。その上に、少し腰の曲がったお爺さんが胡座あぐらをかいていた。

 しかし、お爺さんから威厳という名のオーラが溢れ出ていた。

「アーテルよ、話というのはなんじゃ」

「はい、この赤子のことなのですが……」

 アーテルさんがそういうと、いつの間にか用意された籠の中に、俺は寝かされる。

「……!? この赤子は、『龍神の加護』を授かっているのか!」

 ん? 何ですかそれ? りゅうしんのかご?

「はい、私もこの赤子を見つけたときには驚きました」

「『龍神の加護』。それは、始まりの龍、龍神アミナス様より与えられし加護。その恩恵は――あらゆる魔法を統べる。と、伝えられているのじゃ」

「……っ!? それほどの力が……。しかし、何故人族の子に」

「うむ。それは儂にもわからん。じゃが、これは龍神アミナス様の御導きだと考えるべきじゃろう」

 あらゆる魔法を統べる……。ふふっ。俺の時代がキタッ! って、俺、赤ちゃんだし、魔法全然知らないし。今すぐ使えないなんて!

「この赤子、何か落ち込んでないかのぉ? ……まぁよいか。それよりアーテルよ」

「はい、何でしょうか?」

「お主に、この赤子の世話を頼みたい。頼めるか?」

「私で宜しいのですか? 恥ずかしながら、私は武術と魔術ばかり勤しんで来たものですから、赤子の世話など一度もしたことがないのです」

「うむ。お主が修練に励んでいるのはよく知っておる」

「じじ様……はっ! 失礼しました。長」

「よい。昔はよく、そう呼んでくれたのぉ。おっと、話が逸れてしまったわい。アーテルよ。この赤子を見つけたお主だからこそじゃ。この赤子を育て上げ、一人前にするのじゃ。お主ならできる」

「はい! このアーテル、この赤子――ユーリを一人前に育ててみせます」

「うむ! いい名じゃ。皆には儂から伝える。しばらくは、武龍団も休むとよい」

「感謝いたします」

 おぉっと、なんか聞いてたら勝手に話が進んでるし。俺の名前、ユーリってそのままだし。まぁいいかー。

「うむ。頼むのじゃ」

 そうして、俺と長の初対面は無事に終わったのであった。





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