魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~
2 転生
俺は重く閉じた、瞼を何とか開ける。
瞼ってこんなに重かったっけ? まぁいいかー……それより、ここはどこだ?
確か、俺が描いた魔法陣が発動して……まさか夢? いや、夢にしては妙にリアルだったし、やっぱり転移系の魔法が発動してここまで飛ばされたと考えるか。
俺的にも、そのほうが嬉しいし。
……にしても、森っぽいところって、いくらなんでもありきたり過ぎない? しかも、仰向けのまま上手く起き上がれないし。
でも、背中にクッションみたいな感触があって、それに包まれているから、体は痛くはないんだよねー。気が利くね。
いやいや、まてまて。森でベッド的な物に横になってるって……。地球が俺のマイホームだと言わんとしてるみたいだ。それはまずい、なのに動けなーい。
てか、そもそもここは地球なのか?
辺りをよく見渡してみる。
木ってこんなに大きかったか?
「あーああー。ああ、あー」 (怖いよー。誰かー)
ん? 今、赤ちゃんの声が聞こえたような。気のせいか?
「ああ、あ、あー」 (ここ、どこだよー)
また? ん、ちょっとまてよ。
身動きのとりずらい自分の腕を、何とか見る。そこには、ぷっくり、まるまるとした可愛らしい赤ん坊の手が、腕があった。
えー、俺、赤ちゃんになっとるー。アイアム、ベイビー!
はい、現実逃避はここまで。
整理しますと……部活で描いていた俺の魔法陣が発動して、赤ちゃんに転生してしまったということですね。
まぁ、しょうがない。だって魔法だもの。
これで、体が上手く動かせない理由もわかった。となると、まずいなぁこの状況。
俺は赤ん坊の姿に慣れるため、体を動かしながら頭を悩ましていると。
「……グルルルゥー」
わずかに見える景色から、オオカミのような動物がこちらへ、迫ってくるのが見える。しかし、その眼は赤く、全身の毛が黒い。
あれ、あのオオカミさん、涎たらしながら獲物を見る目でこっち来てるよー。……転生してわずか数分で、絶体絶命なこの状況。
俺に宿りし力、いま目覚めよー! はい、何も起きない。となれば……
「ああー、あーああー!」 (誰かー、助けて―!)
赤ちゃんなりに、頑張った俺。だからお願いします。誰か助けてちょーだい!
十数メートルだったオオカミとの距離は、今は約5メートルほどまで近づいている。捕食者であるオオカミは、獲物の恐怖心を煽るかのごとくゆくり、着実に一歩一歩こちらに迫る。
オオカミがあと数歩のところで歩みを止め、目を大きく見開き俺を仕留めようと構えたそのとき――黒く、巨大な何かが瞬きをする間に、目の前を通り過ぎる。
今のは……。
直後、目と鼻の先までいたオオカミは消え、少し先のところで、あの黒い何かが降り立った。その正体は……
ドラゴン……。
まさか? 本当にそうなのか? 空想上の生物のはず……いや、これで確信が持てた。
ここは、日本でもなく、地球でもなく――異世界だ。
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