初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

セバスのご飯と、責任転嫁


「……彼のご飯はそこまで規格外になったのかい?」
「おうよ。カナリアが『皆凶暴になっちゃいました!』って慌ててリリアーヌとディッチさんのところに駆け込んで、ゲーム時間で五分後に凶暴化バーサク解除」
「本当にそれだけかい?」
 クリスが訝しげに言う。それしか考えようがない。何せリリアーヌとイッセンの「ペット」こと、カナリアの苦手な外見爬虫類やら、虫類まで解除されている。
「ご飯ごときで僕の組んだプログラムが解除? しかもAIごときに負けるだなんて」
 ごとき、ごときと煩い。……気持ちはわからなくもないジャッジである。何せ、カナリアとゲームするようになってから、視野の狭さを思い知らされている。

「いや、あり得ないね」
 GM権限でスフィンクスの組んだプログラムを見たクリスは眉をしかめた。
「スフィンクスのプログラムは捻くれているよ。……そう言えばだいぶ前に『ドラゴンさんと暮らせる方法が見つかりました!』ってLittle ladyが騒いでいたような気がするんだけど」(※)
「よく覚えてるな。小学生が読むファンタジー絵本の受け売りだ。あれを『TabTapS!ゲーム内』で試そうとしていただけだぞ。俺が煽ったら、ギルメンにフルボッコにあった」
「……お前ね」
「いやぁ、必死にそういう本をネットで探して調べてたんだぜ? めちゃくちゃ可愛いのなんのって。それにニーニャとか小型モンスターもテイムしたやつらは『全部家族ですっ』って言って、飯の調達必死ぶっこいているし。カナリアのことだからドラゴンも飼えるな、と」
「Little ladyの称号からすれば、間違いなく飼える。なおさら煽る馬鹿がどこにいる?」
「いるな、ここに」
「……お前の」
「ん?」
 クリスと二人、昔懐かしい話に花を咲かせていると、スフィンクスが静かに怒っていた」
「お前らのせいかぁぁぁ!! クエストキャンセル出来なかったのも、一部だけ大人しくなったのも、全部お前らのせいかぁぁぁ!」
「責任転嫁すな!」
「阿呆が! お前らがそんなことしていなかったら、ワイルーたちは消滅してクエスト自体がなくなっていたんだ!」
 紛うことなき責任転嫁である。少し調べればわかる内容だ。
「それだと、My dear sonの騎獣が大人しくなった理由に繋がらない」
「それな。カナリアメンバーの騎獣に会うたび、ご飯やってブラッシングしてんだよ。趣味と実益を兼ねて」
「……素材採取か」
「当たり。で、ついでにリアルではもふれないから、思う存分もふっている」
 現実世界では、動物が近づくとカナリアは石像のように固まる。かなり怖いのだ。
「でも、それだとFraeuleinとCheerful guyのところは説明がつかない」
「それなんだよな~」

 結局、親子三代にわたる廃人ぶりのゲーマーを舐めてはいけないというのだけは、分かった。

 まさか、育成ゲームばりに可愛がっていたとは。
「いつの間に『TabTapS!』は育成ゲームになったんだ?」
「スフィンクスが正式乱入したからじゃないかな」
 ジャッジとしてはスフィンクスにすべての責任を押し付けたい気分だった。

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