初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

イッセンから見た光景


 手際がいい。その光景を見たイッセンは思った。
「あ、あのヒト。俺らで慣れてるからね。俺、ジャッジ、ジャスが最初に受け持った生徒だから」
 その頃からこのやり方をしているという、ユウの説明に絶句してしまった。
 ゲームにばかりのめり込み、赤点が続く生徒にはストーカーまがいのしつこさで近づき、ゲーム内で勉強を見ていたという。
「その頃からのノウハウ。それで味占めた他の教員までやりだしてさ、いかに赤点を取らずにゲームするかが俺らの合言葉だったし」
「休まりませんね」
「そりゃね。バイトばかりで学業おろそかにする生徒まで先生はゲームに巻き込んで、勉強させた強者だし」
 勉強が嫌で逃げるやつを追いかけるのが楽しいみたいだったからね、とユウが笑う
「ドSだ! あのヒト!!」
「やっぱり思う~? いやぁ、ゲーム否定派の親すら『馬鹿と鋏は使いよう。それと同じでゲームも使いよう』って賛成派に回ったほど」
「そんな賛成イラナイ」
 そしてうちの親なら、「喜んで!」と勉強させただろうなと思う。
「俺らみんな揃って同じこと思ったぞ。ついでに言うと、俺らの年代の模試の成績はその数年内で一番よかったし、大学進学率も高かったからなぁ。特に先生が受け持ったクラスが」
 それゆえ若手でありながら、学年主任という役職についたのだろう。

 ただ、過去にさんざんディッチの授業をゲーム内で受けたユウすらも、カナリアの存在は異端のようだ。
 喜々として勉強をしている、それどころかディッチの課題以上の勉強をこなそうとしている。
「……アメリカの大学に行ってもいいんじゃないかな?」
 そのほうが日本にいるよりも注目されずにすむかもしれない。

 ゲーム内で会えるのだ。無理やり日本に縛り付けておく必要はないとイッセンは思った。

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