初心者がVRMMOをやります(仮)
ペットの趣味
「カメレッティも可愛いと思うけどなぁ」
帰ってきてから、カメレッティを撫でながらリリアーヌが言う。カメレッティはカメレオンと亀を足して二で割ったようなモンスターである。
実は虫の他にも爬虫類系は苦手なカナリア。理由は推して知るべしといったところか。
「でも、素材は集まっただろ?」
ぽんぽんと優しく頭を撫でるのはイッセンだ。
確かに、カメレッティの素材は魅力的である。爬虫類なのが残念なくらいだ。
今後スパイダーシルクと一緒に、ジャッジに頼もうと心に決めたカナリアだった。
「いっくん、カメレッティ飼っていい?」
「いいよ。りりは爬虫類好きだからね」
従妹のもう一つの趣味を初めて知ったカナリアは、恐怖で叫びそうになっていた。
「大丈夫。美玖には近づけないから。セバスさんに餌の用意はお願いする時はあるだろうけど、基本俺たちの住まいの方に連れて行くから」
「オネガイシマス」
それからしばらくして、イッセンとリリアーヌの部屋には「スネーキング」と呼ばれる大蛇のようなモンスターなどが暮らすようになり、下の倉庫に行くことにカナリアは恐怖を覚えることになる。
そんなある日、イッセンは同僚を連れて「安楽椅子」に来ていた。
「ここに来ればゲーム内でとはいえ美味しいものが食べれます」
「ちょい、俺らには敷居が高すぎる!!」
そんな会話をしていたので、カナリアはこてんと首を傾げた。
「まず、看板娘が可愛すぎる。スタッフが美形ぞろいだ。俺らみたいな半爪弾き者だと、お前みたいなやつが連れてこないと入れない」
「……あの、ですね。ゲームですよ? あ、ミックスピザとマルゲーリータ二枚ずつ、それからお勧め飲み物頂戴」
カウンターに向かってイッセンが声をかけてきた。
「お疲れ様、いっくん」
「この人たち、俺の同僚」
「初めまして。いっくんの従妹です」
そう言ってカナリアは頭を下げた。
「爆ぜろ」
唐突に一人が言い出した。
「なんでですか!?」
「彼女が可愛い上に従妹まで可愛いとは、俺らの敵!!」
「いっくんの敵なんですか!?」
「違うから!
冗談でもそういうこと言わないでください。この子、純粋培養育ちなんで、全部本気にしちゃいますから!!」
「イッセン様、どうせですから、飲み物もお茶などより酒の方がよろしいのでは?」
「その辺りは任せるからっ」
奥の一角を陣取り座るものの、何だか通夜のような暗さである。
「お待たせしましたっ! ポテトはサービスです。お酒なのでベジタルブスティックも用意しました」
わざと明るめの声を出す。しかし、その場の暗さはなくならない。
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