初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

別ゲームにて<報告と約束>

そんな心温まる(?)報告は、もちろん「World On Line」にてしっかりとマープルに報告される。
「あらまぁ。美玖ちゃんも楽しんでるのねぇ」
 優しく微笑みながらマープルが言う。

 現在イッセンを始めとした従兄妹たちがいるのは「World On Line」内にある喫茶「安楽椅子」である。
 現在、開店準備の仕込み中だ。今日はリハビリも兼ねて、カナリアもこちらのゲームに来ている。
「うんっ。あのパフェとか、ジャンボバケツプリンとか、ダイエットしてる人にも好評なんだ」
 ……「楽しんでいる」の意味が違うとイッセンは思った。
「ダイエット?」
「うちでよく頼む人が言ってた。ゲームの中で飽きるくらい食べると、外で食べる甘味の量が減ったんだって」
「あら、いい意味での副次効果ね。外食産業としては泣き所だろうけど」
 思いつきもしなかったと、マープルが笑っている。
「お家でしか食べないから、よく分かんない」
 昔から外食というものをほとんどしたことがないという、カナリア。マープルが現実リアルで作る料理が大好きで、遊びに来ても外で食べるということがなかったという。
「ジャッジさんに連れてってもらいなよ」
 カナリアの「お願い」ならきっとジャッジはなんでも叶える。そりゃもう、法律すれすれどころか、法に反してもおかしくないレベルで。イッセン含む全員が同じことを思った、
「うーん。とりあえず試験に合格したら、かな?」
「いつ?」
「ほんとは十一月に受ける予定だったんだけど、いろいろとあったから、来年の七月に変えたの」
「少し余裕できたじゃん! 今度仮想空間ヴァーチャルを用いた買い物しよ!」
「……何それ」
 嬉しそうなリリアーヌと対照的に、眉間に皺を寄せるカナリア。
「あーー。おばばさんたちもそういう買い物しないよねーー。某大手デパートと提携してるネットショッピングで、VRを利用して自分に服を合わせながら買い物できるの!」

 仮想空間洋服屋ヴァーチャルブティックと呼ばれるこのシステムは、VRを利用し、ショップ内にある洋服等を「自分で」「選んで」「試着して」「購入する」というものだ。
 もとは、ショップの開店時間に買い物に行けないという人たちの声を受けてできたシステムだが、「対面販売が嫌だ」とか「店員に押し付けられるのが嫌だ」といった客層にも好評である。
 色合いに若干の誤差は出るものの、サイズ違いという問題もほとんど起きない――起きるのは、大半が利用者に責がある。
 最近では、大学や就職で離れた友人たちが気軽に買い物できるようにと、VRの中で待ち合わせすることも可能だ。ただし、その場合は有料会員になる必要があるため、そこまで広がってはいない。

 カナリアと一緒に買い物したいがために、リリアーヌはおそらく有料会員になったのだろう。
 自分もその買い物に付き合うか、そんなことをイッセンは思った。

 後日、それを聞いたイッセンたちの家族やら、ジャッジたちやらも巻き込んですさまじい団体で買い物することになった。

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