初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

変更後クエスト 10


 流石にここまで突き抜けていると、どうしていいか分からなくなるものである。
「……どうしたもんかね」
 ディッチの呟きに、一緒にいた指揮官二人は肩を叩いてきた。
「まぁ、ある意味仕方ないのかと。素材に走ろうとするカナリアさんをクリア後の素材で釣ってたわけですから」
「他人事ですか」
「他人事でしょうな」
 カーティスのフォローと呼べぬフォローに脱力したところに、ウドムから留めを刺された。
 それ以前の問題で、カナリアが素材採取に回っていたら、間違いなくここまで保たなかった。それは二人も分かっているのだろうが、「カエルム」ギルマスであるディッチに、その辺りを押し付けている。
 ……気持ちは分かる。おそらく、カナリアが他のギルドに所属していたら、他人事として片付けていただろう。

 いつからこうも素材に執着するようになったんだっけ。などとどうでもいいことまで思ってしまった。

「とりあえず、最低ラインのクリア目指しますか」
 カーティスの一言で、それぞれが動き出した。

「カナリア君。味方になった敵陣飛行モンスターと、エネミーのままの飛行モンスターの違いって分かる?」
『分かりません』
 むくれているのだろうか。いつもと違う返しが来た。
「じゃあさ、分かるようにしてもらえるかな。それがクリアへの第一歩だからね。貴重な素材一つ、カナリア君に絶対渡すから」
『分かりましたっ!!』
 珍しい素材なら、ディッチの倉庫にたんまりと眠っている。最悪そこから渡す算段をつけ、カナリアを釣る。
――あからさま過ぎですよ~~――
 そんなメールがリリアーヌから届いた。
――こうでもしないと、拗ねたままでしょ。それにジャッジを動かすいい餌にもなるし――
――だからあからさまなんです。ジャッジさんがものすごく拗ねてます――
――そっちは大丈夫――
 今のジャッジほど扱いやすいやつはいない。
 リリアーヌとのメールを止めて、通話へと切り替える。
「ジャッジ。カナリア君のサポート。甲殻モンスターの弱点は大体分かるか? そこに思いっきりぶっ放して。あとはこっちで何とかするから」
『了解』
 ものすごく不機嫌なまま、ジャッジが答えた。

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