初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

可愛い嫉妬と思い込み

 バレンタインイベントの後、カナリアは最低限の外出以外、引きこもりがちになっていた。

 ココアポーションは薬師であるママンに渡している。状態異常を起こさない、同じようなポーションがあれば最高、ということで研究材料になっているのだ。

 そしてカナリアは。
 クエストクリア報酬でもらった珍しい鉱石関係をアクセサリーに使えないかと奮闘中なのである。
「……けほっ」
 鉱石を弄っていてまたしても状態異常にかかってしまったのである。
 それを遠くから確認していたユニが、状態異常回復用のポーションをカナリアにかけていた。近くにいると、無差別に巻き込んで状態異常にかけてくる厄介な鉱石である。
 しかも、事前にかけていたディスペル等の魔法も、状態異常にならないため装備も無意味なのだから始末に負えない。
「巫女、その石を使うのは諦めたほうが……」
「綺麗なんだもん。ジャッジさんと一緒にクリアして貰ったやつだもん」
 今までジャッジとクリアして手に入れたアイテムは、できうる限り加工している。

 今回とて何かしら作りたいのだ。
 止めるのはユニのみ。クィーンが「好きにさせておけ」と言ったことで、「カエルム」メンバーは説得を諦めた。
「美玖ちゃーん。そろそろお稽古の時間だよ。今回出席しないとおばばさんが、その石取り上げるって」
 珍しくリリアーヌが説得にやってきた。
「やだっ!」
「だったらお稽古行こう?」
「う~~」
 出来ないのが悔しい。だが、取り上げられては元の木阿弥だ。
「へへへ。あたしはちょっとほっとしちゃったんだ」
 少しばかり申し訳なさそうに、リリアーヌが言った。

 それまで仲の良い従姉リリアーヌが無意識に色々編み出しているカナリアに嫉妬していたなど、知る由もなく。
 今までまともにゲームをしたことのないカナリアが、色々と作り、編み出してるのを見て複雑に思わないわけがない。そして、ジャッジを始めとした名だたるプレイヤーに甘やかされるのを見て、イライラしないわけがないのだ。
 カナリアが可愛いということに変わりはない。それでも、もやもやしていたという。
「……そっか」
 その話を聞いたカナリアはそう呟いた。
「でもね、あたしも美玖ちゃんを甘やかしたいって思うのも本当だし。複雑でさ。
 いっつも悩みなく、色んなことしてるんだろうなって勝手に思ってたの。だから、今回こうやって悩んでるんだよってジャッジさんに教えられてびっくりした」
 素材関係で悩むと思わなかったのだろう。
「……それに、美玖ちゃん。気づいていないようだから言っておくけど。それ、薬だからね」
 どうやら、石だと思って必死に加工しようとしていたものは、薬だったらしい。

 それを聞いたカナリアの耳はへにょっとなった。

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