初心者がVRMMOをやります(仮)
現実世界にて<保と良平>
唐突に電話が切られ、そのあとに届いたメールに良平は眉をしかめた。
まさか、とは思っていた。ただ、携帯の件だけでは決定打に欠けていた。
「良平先生、どうしたんですか?」
家で待つジャッジこと、野々宮 保に視線を向けた。
「もし、だ。カナリア君の様子がおかしいと感じたら、即座に教えてもらっていいか?」
良平の表情に何かを感じ取った保は、何も言わずに了承した。
「晴香がもうすぐカナリア君を連れて来る。本当の名前はその時に聞くといい」
「あ、それですけど。カナリアから『リアルで会ってもカナリアで通して欲しい』って言われてますんで。俺も別にジャッジと呼ばれようが、保と呼ばれようが構いませんけどね」
おそらく晴香にも徹底しているだろうと言ってくる。
「俺、迎えに行くの頼んだから教えちまったよ」
「教えちゃったものは仕方ないんじゃないですか?」
そう言って、保は持ち込んだノートブックと格闘していた。
「よくそんなもんでプログラムが組めるな」
「外付けのHDがありますからね」
しれっと保が言う。保はフリーランスでSEなどの仕事をしている。
「そういえば春先にマープルばあさんから、デスクトップの作成頼まれましたっけ」
保が挙げていく性能に、良平は眩暈を覚えた。
「あのヒト、どこまで高性能にすりゃ気が済むんだ?」
「さて。イッセンとかリリアーヌ辺りにでもやるんじゃないですか? 孫にやるって言ってましたし」
「頭柔らかすぎだろ」
「いいことだと思いますよ。知り合いが増え、心配してくれる人間も増えるわけですから」
ぽちぽちとキーボードを打つ手は止まらないまま、保は答える。
「確かに、な。お前があっちのゲームを解約してないおかげで、ばあさんのことが分かってありがたいよ」
「そういえば、マープルのばあさんにあの二人以外にも孫がいるみたいですね」
「へぇ」
「VRデビューを春にしたってことは、高校一年なんでしょうね」
VRは脳波への影響を考慮され、十五歳以上推奨とされている。それ以下の場合は保護者と一緒にすることを条件として、一日二時間までだ。保護者と一緒というのは、事件に巻き込まれないようにするための措置だ。
ただし、医療用VRは例外だ。幼子でも、心身に傷を負ったものはVRでの治療を二時間以上行うことがあるとされている。
「ちなみに、カナリア君も高校一年だ」
その時、二人は「まさか」と思った。
カナリアこと、美玖の家庭環境をしっかり叩き込んでおけば、よかったと。
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