初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

新しいアクセサリーのパーツ

 案内された部屋に入るなり、カナリアは作業の続きを始めた。今回は「深窓の宴」側からの謝罪だろう、というのがディッチとディスカスの言い分だった。
 だったら、カナリアは面に立たなくていいなと思い、ひたすら作ることに没頭したのだ。
「ジャッジさん、タイピンの後ろってどうなってるんですか?」
「あぁ。ここをこうすれば、タイピンとして使えるぞ」
「ありがとうございます!」
 言われたとおりにすると、あっという間にネクタイピンへと変わった。どうせだしと、あとでカフスボタンも作ろうかと考えた。
 それよりも、この削ったあとに出た、綺麗な竜鱗の粉を使って何か出来ないかと思った。
 あとは、このボンド。どうしてももったいないと思ってしまう。

 キラキラと粉のように振り掛けるもよし、他の方法は……と思っているうちに、一つだけ思いついた。
 先程拠点で集めてきた竜鱗の粉と、今出た竜鱗の粉にボンドを合わせて練っていく。
 球状に丸めていき、固めていく。そして固まったところで鉱石を球状に削るために作ってもらったやすりを取り出した。
 このやすりは、ジャッジに取り寄せてもらったものだ。おそらく、ディスカスやスカーレットあたりに依頼したものなのだろう。
 ざりざりと削っていく。最初は粗めのやすりで丸くし、そのあと細かめのやすりで整えていく。
 一個作るだけでやすりが駄目になっていた。
 そして、最後に目打ちを出し、球体の真ん中に穴を開ける。直径一センチくらいのビーズが完成した。
「なるほど。こういう使い方もあるのか。カナリア。これの数が一定数になったら俺に売ってくれ」
 すぐさまジャスティスが言い出した。
「これ、布の上に粉をかけるだけでも綺麗になりませんか?」
「……なるほど。紡績の時点で混ぜるか。とすると、俺もこのボンドがいるな」
「毎度あり! 顧客が増えていいねぇ。カナリアちゃんには特別価格で卸すから」
「い……いいんですか?」
「当然! ジャスがその方法で作れば、需要が増える可能性があるの。それだけでもありがたい! ついでにあたし用に竜鱗でアクセサリー作ってくれれば、このやすりも強度を高くしてカナリアちゃんにプレゼントするから」
「ありがとうございます!」
 これからやすりを酷使することが多くなるはずだ。それと同時に乳鉢も必要になってくる。それもスカーレットが用意してくれると言ってくれた。
 この竜鱗を使った作品をいくつかオークションに出して、そのお金を町の復興のために使うと決めたのだった。
「あ、俺らのタイピンも頼む。もうすぐ舞踏会クエが入るから」
「……そんなもんあったね、そういえば」
 ジャスティスの言葉に、スカーレットが嫌そうに呟いた。

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