初心者がVRMMOをやります(仮)
現実世界にて<保と運営会社>
保は良平と正芳、そして晴香に「システムエラーがおきた可能性がある」とだけメールを入れた。そして、あの出来事を思い出さないように仕事をしていく。
そういえば、カナリアが作業している時は本当に無心に近かったな。最初の頃は時折マカロンなどを食べながらやっていたが、途中からはそういったものすら取らないで作業をしてた。見るに見かねたセバスチャンがカナリアの口に食べ物を半ば強引に入れていることもあった。……それすらも微笑ましい。
最初の頃に約束していた飛行タイプの騎乗に乗せる、というのだけはあの日叶えた。嫌な予感がして、移動をグリフォンに変えたのだ。
「カナリア……」
空から見る風景を憂いを帯びた笑顔で見ていた。本当は、無邪気にはしゃぐカナリアを見たかった。
「まずいな」
気がついたら、仕事をする手が止まっていた。なるべく仕事を前倒しでやって、いつもよりも長い時間を「TabTapS!」にログインしたい。その前に別のゲームにつなぎ、マープルの生存確認だけをしておく。そして少しばかりこちらにこれないかもしれないと、伝えておいた。
軽く食事を取って、ログインしようかと思っていた頃、スマホが鳴り響いた。
「はい。野々宮です」
見覚えのない電話番号だったが、おそらくは新しい仕事の依頼かもしれないと思い、出た。
『T.S.カンパニーの織田と申します。平素から当社開発のゲーム“TabTapS!”をご利用いただきありがとうございます』
GMコールをした件か。保はそう思った。
『このたび野々宮様から受けたコールの件についてお話させていただきます。お時間はよろしいですか?』
「構いません。ついでにこの話を録音していただいてよろしいですか?」
『はい。この電話は録音されているものです』
「あとで、ゲーム内でギルドメンバーに公表してもいいですか?」
『何か、不都合でも?』
「いえ、こちらの問題です」
『それについては、役員会議を通して決定いたします。この場では答えられません』
「分かりました」
少しばかり沈黙が続いたあと、カナリアが消えた現象に言及していく。
『当社が確認できるシステムエラーではありませんでした。ゲーム内のプレイヤーからの妨害でもありません』
「つまり、ゲーム内に問題はなかったということですね」
『仰るとおりです。そして、ログアウトする前にこちらに仰っていたギルドメンバーに伝えることですが、それをするメリットを教えてください』
「彼女の家庭状況を知っている者がいます。もし、彼女が具合が悪くてああなった場合、動いてもらおうと思ったからです」
『左様でしたか。そういった事情でしたら、ギルド内に限りお伝えすることを許可しますが、他の方に漏れないようにしてください』
カナリアが登場したことにより、他のゲームから生産職がかなり流れてきている昨今、カナリアが消えたこと、そしてそれが原因不明であることは伏せておきたいのだろう。
「分かりました。ただ『深窓の宴』が絡んでくる場合がありますが、その時は?」
『何故、そのギルド名が出てくるのか教えてください』
「そこにも、彼女の知り合いがいるからです」
『内密にお願いします』
「分かりました」
ならば、この言葉を言質にシュウを徹底排除してやる。
「システムエラーでなければ、あのようなことになる理由は思い当たりますか?」
『いくつかございます。一つはパソコンのヴァージョン等がが古くエラーを起こした、もう一つはヘッドギアが弊社推奨以下のを使用していた』
普通であれば、その時点でゲームが出来ないはずだ。だが、「たまたま」その時だけ古いものを使った場合はその限りではないのかもしれない。
『それから、偶然にもヘッドギアが外れてしまった場合、途中でパソコンとヘッドギアの接続が切れたり、電源が落ちた場合、そして悪意があってヘッドギアが外された場合、です』
「!!」
羅列された情報に保は言葉を失った。
『ただ、弊社としましても推奨ヴァージョンのパソコンやヘッドギアを使われるのは、本意ではございません。そのためログインした時のヘッドギアとパソコンの情報はこちらに記録されております』
それは会社を守るためのものだろう。
「それを公表は?」
『法的措置にのっとって開示を求める場合、もしくは弊社が訴えられた場合のみ公表させていただいております。そのように規約にも書かせていただいております』
「分かりました。ありがとうございます。このあと私もログインしますので、この通話と彼女が消えた時の映像を我々に公表できると判断できた場合は、直接いらして下さい」
『かしこまりました』
「あくまで、これは私のお願いです。彼女の家庭環境を知るものが同じギルドにいる、これだけは覚えていてください。そのため、ゲーム内以外でも話をさせていただきます」
『それは……』
「とりあえず、現状としては彼女がそういう消え方をしたとだけ伝えておきます。それならば問題ないでしょう。そのあたりも含めて相談してください」
『かしこまりました』
そして、通話を切った。
また正芳たちに「カナリアがゲーム内で急に消えた。詳しくはゲーム内で」とメールを入れておく。
あとは再度ログインするだけである。
そういえば、カナリアが作業している時は本当に無心に近かったな。最初の頃は時折マカロンなどを食べながらやっていたが、途中からはそういったものすら取らないで作業をしてた。見るに見かねたセバスチャンがカナリアの口に食べ物を半ば強引に入れていることもあった。……それすらも微笑ましい。
最初の頃に約束していた飛行タイプの騎乗に乗せる、というのだけはあの日叶えた。嫌な予感がして、移動をグリフォンに変えたのだ。
「カナリア……」
空から見る風景を憂いを帯びた笑顔で見ていた。本当は、無邪気にはしゃぐカナリアを見たかった。
「まずいな」
気がついたら、仕事をする手が止まっていた。なるべく仕事を前倒しでやって、いつもよりも長い時間を「TabTapS!」にログインしたい。その前に別のゲームにつなぎ、マープルの生存確認だけをしておく。そして少しばかりこちらにこれないかもしれないと、伝えておいた。
軽く食事を取って、ログインしようかと思っていた頃、スマホが鳴り響いた。
「はい。野々宮です」
見覚えのない電話番号だったが、おそらくは新しい仕事の依頼かもしれないと思い、出た。
『T.S.カンパニーの織田と申します。平素から当社開発のゲーム“TabTapS!”をご利用いただきありがとうございます』
GMコールをした件か。保はそう思った。
『このたび野々宮様から受けたコールの件についてお話させていただきます。お時間はよろしいですか?』
「構いません。ついでにこの話を録音していただいてよろしいですか?」
『はい。この電話は録音されているものです』
「あとで、ゲーム内でギルドメンバーに公表してもいいですか?」
『何か、不都合でも?』
「いえ、こちらの問題です」
『それについては、役員会議を通して決定いたします。この場では答えられません』
「分かりました」
少しばかり沈黙が続いたあと、カナリアが消えた現象に言及していく。
『当社が確認できるシステムエラーではありませんでした。ゲーム内のプレイヤーからの妨害でもありません』
「つまり、ゲーム内に問題はなかったということですね」
『仰るとおりです。そして、ログアウトする前にこちらに仰っていたギルドメンバーに伝えることですが、それをするメリットを教えてください』
「彼女の家庭状況を知っている者がいます。もし、彼女が具合が悪くてああなった場合、動いてもらおうと思ったからです」
『左様でしたか。そういった事情でしたら、ギルド内に限りお伝えすることを許可しますが、他の方に漏れないようにしてください』
カナリアが登場したことにより、他のゲームから生産職がかなり流れてきている昨今、カナリアが消えたこと、そしてそれが原因不明であることは伏せておきたいのだろう。
「分かりました。ただ『深窓の宴』が絡んでくる場合がありますが、その時は?」
『何故、そのギルド名が出てくるのか教えてください』
「そこにも、彼女の知り合いがいるからです」
『内密にお願いします』
「分かりました」
ならば、この言葉を言質にシュウを徹底排除してやる。
「システムエラーでなければ、あのようなことになる理由は思い当たりますか?」
『いくつかございます。一つはパソコンのヴァージョン等がが古くエラーを起こした、もう一つはヘッドギアが弊社推奨以下のを使用していた』
普通であれば、その時点でゲームが出来ないはずだ。だが、「たまたま」その時だけ古いものを使った場合はその限りではないのかもしれない。
『それから、偶然にもヘッドギアが外れてしまった場合、途中でパソコンとヘッドギアの接続が切れたり、電源が落ちた場合、そして悪意があってヘッドギアが外された場合、です』
「!!」
羅列された情報に保は言葉を失った。
『ただ、弊社としましても推奨ヴァージョンのパソコンやヘッドギアを使われるのは、本意ではございません。そのためログインした時のヘッドギアとパソコンの情報はこちらに記録されております』
それは会社を守るためのものだろう。
「それを公表は?」
『法的措置にのっとって開示を求める場合、もしくは弊社が訴えられた場合のみ公表させていただいております。そのように規約にも書かせていただいております』
「分かりました。ありがとうございます。このあと私もログインしますので、この通話と彼女が消えた時の映像を我々に公表できると判断できた場合は、直接いらして下さい」
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「あくまで、これは私のお願いです。彼女の家庭環境を知るものが同じギルドにいる、これだけは覚えていてください。そのため、ゲーム内以外でも話をさせていただきます」
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