初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

現実世界にて<女帝の凄さ>


 舞踏クエストと聞いた昌代が張り切り、現実世界でも社交界のマナーレッスンやダンスの練習が入っていく。
 ある程度の練習をVRゲームで出来るとはいえ、昌代のレッスンは厳しかった。
「ほれ、腕が曲がっておる! 保! エスコートの仕方がなっておらん! お主らのはダンスどころか、じゃれ合ってるだけじゃ!
 別のじゃれあいをするでない!!」
 びしばしと檄が飛ぶ。飄々とそれをかわす保が凄いと美玖は思った。
「え? 今の言い方だと『じゃれあっても問題なし』と取れるんだけど」
「おぬしの頭の作りはどうなっておるのじゃ!? かような卑猥なこと、本当の社交界でやったらただの笑いものじゃ!!」
「あれで卑猥かぁ。……ただ、美玖の耳朶をいじ……」
「たわけ!!」
 ある意味派手な口論である。そんな二人を美玖はおろおろと見ているしかない。
「……まぁまぁ。少しばかり休憩いたしましょう。そうそう、美玖様。明後日地元の教会でバザーがあるのですが、少しばかり出店しませんか?」
 狭山がにこにこと入ってきた。
 昌代と一緒に作ったアクセサリーは少しずつ増えている。
 保が祖母から何か依頼を受けているということなので、祖母や母方親族に渡すアクセサリーも作っているが。
「お気に入りのものがありましたら、それは省いていただいて結構です。出店しますと、出展料が一律二千円。それから売り上げ金額から五%が手数料という形での寄付になります。昌代様もレースで編まれたものを数点出品なさりますし、ついでです。一度出品すると、どんなものが好まれるかも分かるでしょうし、よろしいかと思います」
 どうしよう、そう思っていると保が促してきた。
「ただ出すだけだろ? 駄目なら駄目でいいじゃないか」
「……は、はい」
「でしたら、明日までにここに入れておいてください。値段はどのように?」
「……原価代……」
「かようなもので済むと思うておるのか? まぁ、慈善事業じゃ。それもありかも知れぬの。値段は狭山と三浦で決めよ」
「かしこまりました」
 にこりと笑って、狭山が出て行った。

 翌日。美玖は作ったものをリビングに持って来ていた。
 昌代と作るときは、大半が昌代の作業部屋になる。美玖も作るのが好きだとわかった昌代は、リハビリも兼ねてと美玖の寝室の隣に作業部屋を作ってくれた。
 至れり尽くせりで、逆に恐縮している。

 最近、昌代に感化されてちりめんも素材として用いている。だから尚更以前よりも作業が遅くなり、ほんの数点しかない。
 並べたものをみた狭山と三浦が次々に手に取ってみている。
「年齢的なものも考えると、こういった色合いの落ち着いたものがいいかもしれませんね」
「若い方もいらっしゃるでしょうから、こちらも」
 二人は言い合いながら、適当に小物を見繕っていた。
「美玖様。今回はこの数点を持っていきます。ありがとうございます」
「こんなも……いえ、こういったことでお役に立てるのでしたら」
「こんなもの」と言いそうになった美玖を、二人が制した。言い直すとにこりと笑っている。
「では、またお願いするかと思います」
「はい」
 昌代の作ったレース編のひざ掛けなどと一緒に出展されることになった。

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