初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

現実世界にて<再ログインの準備>

 夜逃げ同然に逃げた場所から、再度「TabTapS!」にログインすることが出来たのは、レイモンドの襲撃(?)から二週間後だった。
 その間に、美玖は保に祖母たちへの贈り物をお願いしたりと忙しかったりした。

 そのため、綺麗さっぱりと養子縁組のことなど忘れていた。
 そして、昌代のにらみが怖いからなのか、誰一人触れてこなかったというのもある。
 久しぶりに弁護士の天原に「誰を選びますか?」と言われて、忘れていたことを思い出した。
 だが、それも「今のところ決めかねています」と言えばあっさりと引き下がった。
 実際は両親の裁判が片付かないと、その先に進めないのだという。半年くらいかけてゆっくりと決めればいいと言われ、ほっとしたのも事実だ、

「美玖、新しいカプセルの調子はどうじゃ?」
「以前と同じような感覚で使えるので、便利です」
「左様か。以前よりも急いで設えたからの。居心地が悪かったらどうしようかと思うておったわ」
「おばばさん、ありがとうございます」
「我がしたのは些細なことじゃ」
 そう昌代は言うが、何かをするということがどれだけ大変か身をもって美玖は知っている。

「ただいま」
「保さん、お帰りなさい」
 この町へ一緒に来たのは保と隆之たちだけであった。隆之たちも普段はここに来ることはない。理由は、美玖が少しばかり怯えるからだ。
「保さんもありがとうございます」
 美玖の代わりに祖母たちへの贈り物をお願いする羽目になったのだ。
「いんや。それよりもばあさんたちが気にしてたぞ。お前が元気かってな。良平先生がありのままに伝えていたが、安心してた」
 ログインできるようになったら、良平たちにもお礼を言わないと。美玖は心の中でそう思った。
「はい、土産。……これはリリアーヌからだな。お前が昔好きだったからって」
 そう言って渡されたのは、少しばかり大き目の紙袋が二つ。一つは従姉であるりりかの自宅近くにある菓子屋の紙袋。もう一つは別そこらへんで売っているような紙袋だった。
「中々会えないんだったら、絶対に渡したいって言い出して聞かなくて、リュートさんまで巻き込んで大変だった」
「……保さんは、りりちゃんとも知り合いなんですか?」
「? ばあさんの店で顔合わせるくらいだぞ。あの店、かなり……」
 次の瞬間、紙袋が破け本が散らばった。
「……ひょっとしなくても、セバスが執事な理由はこれか?」
「えええええっと!!」
 慌てて隠そうとするも、保は笑って手伝ってきた。
「おかしいと思ったんだよな。美玖がどうしてこの手の話を知ってるんだろうって。元凶はリリアーヌか。……うん、かなり納得した」
 そして、そのりりかになにやら脅されていたのは、ゲーム内で聞かされる羽目になるのだった。

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