初心者がVRMMOをやります(仮)
隠しではなく、限定クエスト
「で、何でまた隠しクエストに気付いた?」
「気付かせたのはカナリアです。俺を掴んで一緒に落下した時、こいつが孵化したんですが、それを腕に戻したのもカナリアで、町から戻ってくる最中に洞窟には行けないのかと聞いてきたんです」
それに対して孵化したドラゴンが「キュッ」と答え、行けることが判明したらしい。
「カナリア君にドラゴンが懐かなかったことの方が驚きだ」
ディッチのその言葉に、ジャスティス以外が頷く。
「そりゃ、仕方ないですよ。ドラゴン二の次で卵の殻がなかったことに落ち込んでしまって、無視したんですから」
「……要するに、拗ねたのか」
『でも、コドラちゃんはジャスティスさんの腕の中にいましたから、大丈夫だと思って』
アルテミスを通じてカナリアが言う。
卵の殻が素材だと教えたのが間違いだったと、ディッチは思った。カナリアが素材を心配するのはこのゲームで出会ってからずっとだ。
そのアルテミスはユーリに抱かれている。ユーリはずっとアルテミスを抱っこしたかったようで、ご機嫌である。
「カナリア君、そっちはどうだ?」
『えっと、今からセバスチャンとミント君で食べ物を持って行きます。こっちにはスカーレットさんが合流してくれました』
AIを護衛としておいてきたが、一応スカーレットにも連絡を取っていた。そして、カナリアに絡んでくる連中を蹴散らすように伝えてある。その連絡に対してスカーレットは「任せとけ!」と漢らしい返事をしてきた。
基本的に竜は単独、もしくは番で行動する。
例外は一つ。卵を奪われた時だ。
雌竜が卵を奪われたと嘶けば、いつもは争う縄張りはどこへやら。種族関係なしに襲ってくる。
雛の場合は同種族に限るのが救いではある。
「キュキュッ!」
「こっちが隠し通路らしいです。……ここを通ればあっという間にあの巣へ行けるそうです」
「……そうかい」
後ろからこそこそついてくるのは、トールたちのパーティだ。おそらく、ディッチたちの動きから判断したのだろう。
「ここから先は俺らが通ったあと塞がりますから、問題ないそうです」
「ってことは隠しじゃなくて限定か」
隠しであれば手順を踏めば誰でも入手可能だが、限定は一人、もしくは共に行動したパーティのみが入手可能なのだ。
「……人竜族っていたんだな」
巣について、ディッチは思わず呟いた。
そこにいたのは、恐ろしい形相でこちらを睨んだ人竜だった。
「キューー!」
「左様であったか。あの崖から落ちる時にこの男が助けてくれたとな」
「キュッキュキュッ、キュキュキュ!」
「……ふむ。背の君に尋ねてからじゃ」
この会話をジャスティスに訳させるとこうなるらしい。
「駄目! この人は私を助けてくれて、ご飯もくれたの!」
「左様であったか、あの崖から落ちる時にこの男が助けてくれたとな」
「それでね! この人たち竜神様の棲家に用事があるらしいの! 父様と母様で連れて行ってあげて!」
「……ふむ。背の君に尋ねてからじゃ」
この通訳を聞いたディッチは思わずため息をついた。
「娘香の巫女」の次は「竜神様」ですか。次はジャスティスがメインになるから、「竜神の覡士」になるのか、などと考えてしまった。
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