初心者がVRMMOをやります(仮)
三人組の限定クエスト 4
カナリアの発想は毎度どっか突き抜けている。
「……あのねぇ、美玖」
「いっくん、どうしたの?」
「そこまでホイホイと仕様を変えてたらゲームとして成り立たないよ」
「そうなの? 悪いところを変えるっていうのじゃ駄目なの?」
「駄目とかじゃなくて。……あとでジャッジさんはジャスティスさんあたりに聞きなよ。プログラム上の話も聞けるからさ」
「……じゃあ、聞かない。難しいし」
それで終わらせたため、それ以上の事をしないと思ったその時だった。
「ちょっと待って。ってことはジャッジさんなら何か解決策を見出せるかもしれないんだよね。相談してみる」
「ちょっ……」
「何とかしてもらえるんだったらその方が……」
「美玖ーーー!! それはしちゃダメッ!!」
「えぇぇぇ?」
……イッセンとリリアーヌの可愛い従妹は、どうやら頭のネジが一本ほど飛んでしまったようだ。
「そ……そんなっ。これが改善されないと我々は飢えてしまいますっ」
「ただでさえ滞っている鞄作りが」
「戦う者たちもだいぶ減ったというのに」
小人たちが慌てふためき始めた。
その辺は俺らじゃなにも出来ないし、その言葉をイッセンは飲み込んだ。
「……困りましたな」
そう言ったのはギルドカウンターにいる小人だった。
「有体に言えば、このクエストは小人に全部のご飯を上げるだけでクリアだったんですが」
……どうやら疲れて幻聴が聞こえてきたようだ。うん、絶対そうだ。
「このままあの道を開けておけば、オークゴブリンの群れがこの地下に押し寄せ……」
「おい、小人さんや」
「はて、どの小人さんでしょうか」
「あんただよ! そのカウンターにいるあんただ!!」
「私はあんたという名前なければ、小人という名前でもありません」
しれっとカウンターにいる小人が言う。
「えっと、自己紹介が遅れました。私はカナリア。こちらはいとこのいっくんとりりちゃんです」
「美玖」
「ふぇ?」
「勝手に自己紹介してんじゃありません!!」
イッセンが言う前にリリアーヌが軽い拳骨と共に説教をしていた。
「えぇぇぇ? お祖母ちゃんだって言ってたじゃん。『挨拶は人の基本です』って」
だからね、こういう怪しい奴に近づくなとあれほど……。
「おやおや、カナリアさん……ね。ご丁寧にどうも。私は運営会社のしがない末端社員、神崎です。出来ればジャッジ君に頼るのは辞めてもらえるかな? 最悪プログラムが滅茶苦茶になるから」
カウンターにいる小人が深々と頭を下げた。
「いやはや。ここの管理人になるもんですね。以前のやつは新しい会社に来なかったみたいで、私がやらせてもらってます。
私がすべきなのはここに来たプレイヤーに称号を与えることです。ご飯を上げてはいおしまい、な非人道的なプレイヤーに、ね」
そう言って神崎と名乗った小人は三人に肉を渡す。
「あ、私からもどうぞ」
カナリアがいつの間にかサンドイッチを渡していた。
「おや、ご丁寧にどうも」
意外に美味い肉だ。おそらく話の流れからオークゴブリンのものと思われた。
「……本来、知らぬ存ぜぬで通さなきゃいけないんですよねぇ。内臓の話は」
「そう、なんですか?」
「だって表向きは外のギルドカウンターと通じてないことになってるし」
存外この管理人はあけすけに物を言う。
「じゃあ、鞄が粗悪品とか別のプレイヤーの物だとか」
「あ、それは本当」
あっさりと認めてきた。
「仕方ないんですよ。全く。これを作った奇人変人たちが色んな仕様を取り入れてくれたおかげで、運営会社でも把握し切れていないんですから。ここだって申し送りされて初めて知った場所ですよ? おそらくこういった場所は他にもあるでしょうねぇ」
おかげで中の人は減らせません。そう神崎は屈託なく笑う。
「さて、どうしましょうかねぇ。それ以前の問題で、いい加減地下につながる扉を閉じないと」
「……は!?」
「いやぁ、だってねぇ? 君らが帰んないと閉じない扉ですからねぇ」
閉じてたんじゃなかったの!? ってか閉じたのをカナリアとイッセンはみたはずだ。
「あ、あれは閉じたように見せかけてただけですよ。プレイヤーに何もせずに戻られては困るので」
こちらの考えを読んだかのように穏やかに言うが、かなり危険な話なのでは? と疑問に思ってしまった。
そんな話をしていたら、向こう側から悲鳴が聞こえた。
「ちょっと待てぇぇぇ!!」
それのほほんと言うことじゃないし!! そんなことを言う前に、イッセンたちは走り出した。
「……あのねぇ、美玖」
「いっくん、どうしたの?」
「そこまでホイホイと仕様を変えてたらゲームとして成り立たないよ」
「そうなの? 悪いところを変えるっていうのじゃ駄目なの?」
「駄目とかじゃなくて。……あとでジャッジさんはジャスティスさんあたりに聞きなよ。プログラム上の話も聞けるからさ」
「……じゃあ、聞かない。難しいし」
それで終わらせたため、それ以上の事をしないと思ったその時だった。
「ちょっと待って。ってことはジャッジさんなら何か解決策を見出せるかもしれないんだよね。相談してみる」
「ちょっ……」
「何とかしてもらえるんだったらその方が……」
「美玖ーーー!! それはしちゃダメッ!!」
「えぇぇぇ?」
……イッセンとリリアーヌの可愛い従妹は、どうやら頭のネジが一本ほど飛んでしまったようだ。
「そ……そんなっ。これが改善されないと我々は飢えてしまいますっ」
「ただでさえ滞っている鞄作りが」
「戦う者たちもだいぶ減ったというのに」
小人たちが慌てふためき始めた。
その辺は俺らじゃなにも出来ないし、その言葉をイッセンは飲み込んだ。
「……困りましたな」
そう言ったのはギルドカウンターにいる小人だった。
「有体に言えば、このクエストは小人に全部のご飯を上げるだけでクリアだったんですが」
……どうやら疲れて幻聴が聞こえてきたようだ。うん、絶対そうだ。
「このままあの道を開けておけば、オークゴブリンの群れがこの地下に押し寄せ……」
「おい、小人さんや」
「はて、どの小人さんでしょうか」
「あんただよ! そのカウンターにいるあんただ!!」
「私はあんたという名前なければ、小人という名前でもありません」
しれっとカウンターにいる小人が言う。
「えっと、自己紹介が遅れました。私はカナリア。こちらはいとこのいっくんとりりちゃんです」
「美玖」
「ふぇ?」
「勝手に自己紹介してんじゃありません!!」
イッセンが言う前にリリアーヌが軽い拳骨と共に説教をしていた。
「えぇぇぇ? お祖母ちゃんだって言ってたじゃん。『挨拶は人の基本です』って」
だからね、こういう怪しい奴に近づくなとあれほど……。
「おやおや、カナリアさん……ね。ご丁寧にどうも。私は運営会社のしがない末端社員、神崎です。出来ればジャッジ君に頼るのは辞めてもらえるかな? 最悪プログラムが滅茶苦茶になるから」
カウンターにいる小人が深々と頭を下げた。
「いやはや。ここの管理人になるもんですね。以前のやつは新しい会社に来なかったみたいで、私がやらせてもらってます。
私がすべきなのはここに来たプレイヤーに称号を与えることです。ご飯を上げてはいおしまい、な非人道的なプレイヤーに、ね」
そう言って神崎と名乗った小人は三人に肉を渡す。
「あ、私からもどうぞ」
カナリアがいつの間にかサンドイッチを渡していた。
「おや、ご丁寧にどうも」
意外に美味い肉だ。おそらく話の流れからオークゴブリンのものと思われた。
「……本来、知らぬ存ぜぬで通さなきゃいけないんですよねぇ。内臓の話は」
「そう、なんですか?」
「だって表向きは外のギルドカウンターと通じてないことになってるし」
存外この管理人はあけすけに物を言う。
「じゃあ、鞄が粗悪品とか別のプレイヤーの物だとか」
「あ、それは本当」
あっさりと認めてきた。
「仕方ないんですよ。全く。これを作った奇人変人たちが色んな仕様を取り入れてくれたおかげで、運営会社でも把握し切れていないんですから。ここだって申し送りされて初めて知った場所ですよ? おそらくこういった場所は他にもあるでしょうねぇ」
おかげで中の人は減らせません。そう神崎は屈託なく笑う。
「さて、どうしましょうかねぇ。それ以前の問題で、いい加減地下につながる扉を閉じないと」
「……は!?」
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「あ、あれは閉じたように見せかけてただけですよ。プレイヤーに何もせずに戻られては困るので」
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