初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

翼竜を守るキングゴーレム3


 ゴーレムは土人形と訳されるが、土以外にも鉱物で出来たゴーレムもあり、それによって呼び方が変わる。
 キングゴーレムは様々な鉱物や土で出来たゴーレムで、弱点というものが含有率によって変わってくる。
 しかも、今回出てくるキングゴーレムは、かなり上位のキングゴーレムだ。

 そんな話を聞いたカナリアは、逃げたしたくなっていた。
 素材が魅惑的でなければとっくに放り投げている。
「ミ・レディ! 回復を!!」
「は、はひっ」
 既に呂律が回らなくなっている。携帯をセバスチャンに預けていてよかったと思う瞬間でもある。
「古瀬さん! 野々宮君と日内君にご飯!」
 回復回復回復で、そこまで回らなくなっているところに、アントニーが声をかけてきた。
……が、カナリアが出す前にセバスチャンが鞄から取り出し、ジャッジとジャスティスに渡していた。
 アントニーも切羽詰っているのが分かる。普段であればきちんとプレイヤー名で呼ぶのだ。
「セバスチャン、ありがとうございます」
「回復を優先してください!」
 そう言いながらも、セバスチャンも回復に回っている。

 全員がいっぱいいっぱい。ここまでなのは、やり始めて間もなく「初心者の町」を防衛した時以来だ。

 カナリアの前でキングゴーレムが倒れた。やっと一体。残り九体。

 全部倒せば、たくさんの素材が手に入る。そうカナリアは己に言い聞かせた。


 そして、言い聞かせすぎておかしくなり始めていた。

 その事に誰一人気付かない。


「そ……素材ーーー!!」
 カナリアは唐突に叫んだ。

 その言葉に全員がぎょっとした。
 バーサーカーよろしく、カナリアがキングゴーレムに突っ込んでいった。
「美玖!」
「カナリアッ!」
 それぞれがカナリアを止めようとするが、カナリアには聞こえていないようである。

 何より、カナリアの目がいっちゃって、、、、、、いるのだ。

「……何が原因?」
 あっけにとられたディッチが呟いていた。


「素材なのっ! 大事に使うのっ!!」
 そう言ってカナリアがをがんがんとキングゴーレムにたたきつける。
 それを慌ててジャッジが引き離した。
「素材なのーー! ジャッジさん止めないでーー!!」
「……カナリア、一度落ち着こうか」

 ジャッジがどさくさに紛れてイエローカードギリギリの行為をしつつ、宥めていた。

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