初心者がVRMMOをやります(仮)
翼竜を守るキングゴーレム7
地道に一体ずつ倒していくと、少しずつカナリアの表情も晴れてきた。
やはり素材欲しさにああなったか。それがメンバー共通の懸念事項になりつつあった。
正直な話、このレイドになってから採取・採掘は全くしていない。つまり死に戻りをしたところで、経験値以外の損害はないのだ。
以前余計なことを教えてしまったかな、それがディッチの感想だった。
死に戻りした場合のペナルティを教えた記憶があるからだ。
「カナリア君、採取・採掘してもいいよ」
「本当ですか!?」
ぱぁっと顔が明るくなる。
ジャスティスが攫われたのに現金なものである。
それを言うならディッチたちも一切心配せず、キングゴーレムを倒しているのだから同じなのだが。
カナリアが素材集めに戦線離脱したところで、ディッチが別の指示を出す。
ツルハシを片手にカナリアは鼻歌を歌い始めた。
採掘だ。そして見たことない鉱石・鉱物などなどたくさんある。
次々に鑑定スキルを使うものの、「不明」が多すぎた。あとでスカーレットにでも聞こう。そう思った。
当然のごとく、ジャスティスが攫われたということは頭からすこんと抜けたのだ。
「ほいほいほーいっと。これも使えそう。あ、これはプラチナだ。これは鉄鉱石」
こうやって採取・採掘に専念するのは久方ぶりである。
そして、そんなカナリアに何かがぶつかってきた。
一気にHPが半分以下にまで減ってしまった。
「ジャ……ジャッジさんっ! いっくん、りりちゃん!! ウルリーノです!」
その言葉に誰一人反応しなかった。
HP回復もそこそこに、カナリアはウルリーノと見つめ合っていた。
怖がってあまり近づかないはずのウルリーノ。おそらくはぐれたのだろう。一頭で心細そうな顔をしていた。
「……ご飯、食べる?」
「メェ?」
懐けるチャンス! そう思ったカナリアは、すぐにサラダを出した。セバスチャンの心遣いの元、ドレッシングなどは一切かかっていない。ユニに与える場合もあるし、好みの味というものがあるだろうということだ。
ユニは勿論、メリノーンにも好評なサラダは、ウルリーノにも好評だった。
カナリアの手から食べたのである。
癒されるぅ。などと思っていたらまたどつかれそうになり、それをウルリーノが止めていた。
「ウルちゃん、ありがとう」
勝手に名付けて礼を言うと、視線の先にいたのはカシミレラである。そして、ウルリーノにやったサラダを横取りして食べていた。
「これ、ウルちゃんのやつなんだけど……」
その言葉にカシミレラが「なんか言ったか?」というような凶悪な顔をしたので、カナリアもウルリーノもそれ以上いえなかった。
代わりに、もう一つサラダを出して与える。そちらにもカシミレラが興味を示したので、カシミレラにももう一つサラダを与えた。
「ふふふっ」
もっと寄越せと言わんばかりに、カシミレラが寄ってくる。慌てている姿をスカーレットが写真に収めているなど、カナリアは知らなかった。
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