初心者がVRMMOをやります(仮)
説明の仕方も色々
重力魔法の話をしようとしたディッチを、カナリアが拒否した。
これ以上詰め込まれても分からない、というのが本音である。先ほどのPvPの戦いが凄いのはよく分かる。ディッチが魔法を駆使して戦っていたのも分かる。
問題として、リキャストタイムの長さがバトルにどう影響するかがよくわかってない、これに尽きる。
誰もが「知っているもの」として、カナリアに説明していなかったことと、ディッチがクエストやレイドがあるたびに、パーティメンバーにきっちりとかけていたことにカナリアが気づいていなかった、という二つの理由だ。
その反省会を兼ねて、「安楽椅子」で食事をしている時だった。
「カナリアよ、お主は学校にどのようにして行っておった?」
たまたま来ていたクィーンが話に入った。
「えっと、歩きと電車です」
「ふむ。ではその道をすべて歩いて行っておったら、どれくらいの時間がかかる?」
「……見当もつきません」
「そうであろうな。ではディッチよ、お主はカナリアの住んでいた家まで行ったのであろう? その時は何で行った?」
「車ですね。片道三十分ほどでした。……歩きであればどれくらい時間がかかったかなど分かりません」
「左様。我が思うに、時短魔法とはA地点からB地点に行くまでの速度を速める、と考えればよいのではないか。同じ場所に行くのに、車と歩きでは時間が違うであろう? 目的地に車を使うのが時短魔法、歩きで行くのが通常のままでスキルや魔法を使う方法」
その解説を聞いたカナリアが、なるほどという顔をしていた。
「そう考えれば確かに便利です!」
それで納得するんだ。その場にいた全員が思った。
「それゆえ、使いこなすには練習が必要となるわけじゃ。強いて言うなら、自動車免許を取るための座学と実習と言ったところか」
先ほどのPvP見学が座学、あとは実習あるのみとクィーンがのたまった。
この後から、カナリアは必死に時短魔法習得に意欲を示しだした。
使用方法などは、ディッチやリリアーヌ、それからディスカスだ。
バトル中に使うのであれば、ディッチが使用する時短魔法が有用だが、あまりにも高性能すぎる。そのため、初期の時短魔法をリリアーヌが教える。
ディスカスは鍛冶師としても有名なので。アイテム作成時に使う時短魔法を教えるのだ。
「……違うんですね」
三者三様の時短魔法を見せつけられたカナリアが呟く。
「そりゃ違うさ。魔法作成時にどの魔法を組み合わせたかにもよるし、キャストタイムがどれくらい変わるか、あとは重ね掛けが出来るかも違う。
ディッチの魔法は重ね掛けできない仕様だが、リリアーヌの魔法は重ね掛けが出来る。……短縮時間が増えれば、化けるな。俺の時短魔法はあくまで作成時に使うから、これまた別方向に発展した」
必死にメモを取りながら聞くカナリアに、ディスカスが説明をしていく。
「……あれ? 先生って確か車とか作ってますよね。その時使ってるんでしょうか」
「エンチャントが必要ないから使ってないぞ。つか、あいつも鍛冶は出来る」
「え!?」
「……あのな、車のボディとかは金属製だろうが。鍛冶が出来なかったらどうやって作る? 俺がそこまで関わっていられると思うか?」
驚くカナリアに、ディスカスが冷静に突っ込みを入れる。
「……それもそうですね」
裁縫スキルも持っていることは黙っていたほうがいいだろう。カナリアも色々やりたいという思いで、スキルを多様に習得したかったとジャッジに聞いている。
それを諦めさせたということも。
ディッチの場合は、最初から「乗り物を作る」という考えがあった。だからそれに必要なスキルを習得していった。
カナリアと理由は違うが、それで納得するとは思えなかった。
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