老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件
247話 任務完了!
「取り敢えず10階まではマッピングしながら階段見つけたら下層へ降りちゃうよー」
「はい!」
一糸乱れぬ返事は完璧なまでに統率が取れている。
白狼隊のリーダーであるユキムラと共にダンジョンへ潜るということは各隊の副隊長を命ぜられる次に名誉なことだ。
ユキムラが担当するダンジョンはテンゲン国南東、タケハ町の近く、ソーア火山。
活火山であり、噴火をすると数週間空は舞い上げられた火山灰によって黒く覆われる。
タケハ町はマグマの流れと逆に位置した高台に作られた町で、火山から採鉱される各種魔石の輸出と、そこから作られる魔道具などをメインの産業としている。
ユキムラ達が街を訪れたことによって、街全体は長年悩まされてきた火山灰の害から守られ、肥沃な土地を利用した農業や、水問題など、すべて白狼隊が解決してくれた。
テンゲン国本土へとつなぐ大橋まで建築し、白狼隊は救世主のように歓迎されている。
火山MDなので当然敵は火属性や土属性が多い。
きちんと対策を積めば今の装備レベルなら問題になることはない。
ユキムラの意図を正確に理解して一つの塊となって戦うパーティの前に敵はいない。
訓練時と同じ動きをしっかりと守る。それだけでどんな魔物も恐れるに足らなかった。
ユキムラ達白狼隊の訓練メニューはそういう風に出来ている。
しかし、それに驕る者は一人もいない。
自分たちなどよりはるか先に居る人間を目の当たりにしているのだから。
「よーし、卒業試験だ。このダンジョンボスを君たちだけで倒してね。
無理だと思ったら退く判断も自分たちでするように。俺は一切手を出しません」
最下層のボスの部屋の前で隊員たちにユキムラは課題を与える。
これは各部隊で最初から決めていたことだった。
今頃他の場所のダンジョンでも同じように白狼隊メンバーから隊員への試練が与えられている。
他ダンジョンも装備と日々の弛まぬ鍛錬の結果危なげなく最下層部へと到着していた。
そこで告げられる卒業試験。
この試練を乗り越えた隊員は副隊長らを中心に指導者側に立つ精鋭たちとなる。
ユキムラ達白狼隊の指示に従うだけの兵士ではなく、自ら指示を出せる将校の必要性をユキムラはラオとの旅でより強く確信していた。
隊員たちは自らの全力を持ってユキムラたちの期待に十分に答えてくれた。
誰一人の脱落もなく、終始安定した戦闘を展開し、副隊長は見事パーティを率いてボスを撃破することに成功した。
「お疲れ様。お見事でした」
ユキムラの隊の副隊長はバーラックというヒーラーだった。
状況判断は冷静にして沈着、常に一定以上の安全マージンをしっかりと取り、勝負どころを見極めるセンスも持っておりユキムラ隊の副隊長という名誉を仰せつかっていた。
33という脂の乗った冒険者で、白狼隊に参加して能力の向上も伴い素晴らしい将に育っていた。
ユキムラは全体に話す時は敬語を過度に使わないようレンに言われているが、一対一で話す時は年齢が上なバーラックには丁寧に話すことが多かった。
「いえ、ユキムラ隊長。二度ほど敵の魔法を妨害に失敗しました……まだまだです」
「あれは確率もあるからしかたないよ、それよりも阻害に失敗した時の対応をきちんと事前から準備していたほうが評価できるよ。本当にみんなお疲れ様でした」
強敵を倒した達成感と、ユキムラ達に認められた感動が波のように隊員たちを包み込んでいた……
別件だが、ユキムラ達を崇拝し、共にたくさんの時間を過ごした隊員たちにはVOでの戦闘システムが発現する人間が現れなかった。
ソーア火山最下層に封印されていた神キュータに出会った時ユキムラはアルテスに問いかけてみた。
【ああ、あれは……あることを実施した時に封印しました。
スキルは目をつぶるから許して!
だいたいNPCに、あのシステム運用させるのは負荷が大きすぎるのよブツブツ……】
最後の方はよくユキムラにも聞き取れなかった。
ソーア火山MD 神キュータ。
永久凍土MD 女神レイカ。
砂丘MD 女神トトリ。
大洞穴MD 神ゴウラ。
大灯台MD 女神セラム。
が、無事に解放されることになった。
アルテスからも凄いこと考えるわねと褒められたユキムラであった。
同時にクロノスの箱はほぼ無制限にアイテム収集が可能になり。
さらに、ネックレスを通じてアイテムの出し入れが可能という、生体以外の物質であればワープ装置のような物になった。
これに以前もらった町への移動アイテムを併用すれば、どのような物資でも一瞬であらゆる場所へと輸送が可能になるという恐ろしい状態になった。
ユキムラは町へと戻るとレンの居るホキド町と魔石輸送を試し、そのチート性能を体験した。
「これは……すごいね……」
「さらに町への移動も可能になるんですよねこの先……もう輸送というものの根底が変わりますね」
「一応私達しか出来ないことですから、まぁ……それでも恐ろしいことですけど……」
「これはあんまり広く知られないほうがいいわよね~、あんまり権力者から目の敵にされても困るし~」
「わうん……」
「そうだね、これは俺達だけの情報として秘匿しよう。
なるべくアイテムバックによる輸送であるように振る舞うようにしよう」
「サナダ街製のアイテムバックも異常な容量ありますから、今更って感じになるとは思うんですが、師匠やヴァリィさんの言うとおり、権力を持つと他者を恐れますからね」
逆らう人なんているのかなぁ、とソーカなんかは思ったりもしたが。
それは胸のうちにしまっておいた。
こうして、第二次ダンジョン攻略作戦は大成功を納めることになったのだ。
「はい!」
一糸乱れぬ返事は完璧なまでに統率が取れている。
白狼隊のリーダーであるユキムラと共にダンジョンへ潜るということは各隊の副隊長を命ぜられる次に名誉なことだ。
ユキムラが担当するダンジョンはテンゲン国南東、タケハ町の近く、ソーア火山。
活火山であり、噴火をすると数週間空は舞い上げられた火山灰によって黒く覆われる。
タケハ町はマグマの流れと逆に位置した高台に作られた町で、火山から採鉱される各種魔石の輸出と、そこから作られる魔道具などをメインの産業としている。
ユキムラ達が街を訪れたことによって、街全体は長年悩まされてきた火山灰の害から守られ、肥沃な土地を利用した農業や、水問題など、すべて白狼隊が解決してくれた。
テンゲン国本土へとつなぐ大橋まで建築し、白狼隊は救世主のように歓迎されている。
火山MDなので当然敵は火属性や土属性が多い。
きちんと対策を積めば今の装備レベルなら問題になることはない。
ユキムラの意図を正確に理解して一つの塊となって戦うパーティの前に敵はいない。
訓練時と同じ動きをしっかりと守る。それだけでどんな魔物も恐れるに足らなかった。
ユキムラ達白狼隊の訓練メニューはそういう風に出来ている。
しかし、それに驕る者は一人もいない。
自分たちなどよりはるか先に居る人間を目の当たりにしているのだから。
「よーし、卒業試験だ。このダンジョンボスを君たちだけで倒してね。
無理だと思ったら退く判断も自分たちでするように。俺は一切手を出しません」
最下層のボスの部屋の前で隊員たちにユキムラは課題を与える。
これは各部隊で最初から決めていたことだった。
今頃他の場所のダンジョンでも同じように白狼隊メンバーから隊員への試練が与えられている。
他ダンジョンも装備と日々の弛まぬ鍛錬の結果危なげなく最下層部へと到着していた。
そこで告げられる卒業試験。
この試練を乗り越えた隊員は副隊長らを中心に指導者側に立つ精鋭たちとなる。
ユキムラ達白狼隊の指示に従うだけの兵士ではなく、自ら指示を出せる将校の必要性をユキムラはラオとの旅でより強く確信していた。
隊員たちは自らの全力を持ってユキムラたちの期待に十分に答えてくれた。
誰一人の脱落もなく、終始安定した戦闘を展開し、副隊長は見事パーティを率いてボスを撃破することに成功した。
「お疲れ様。お見事でした」
ユキムラの隊の副隊長はバーラックというヒーラーだった。
状況判断は冷静にして沈着、常に一定以上の安全マージンをしっかりと取り、勝負どころを見極めるセンスも持っておりユキムラ隊の副隊長という名誉を仰せつかっていた。
33という脂の乗った冒険者で、白狼隊に参加して能力の向上も伴い素晴らしい将に育っていた。
ユキムラは全体に話す時は敬語を過度に使わないようレンに言われているが、一対一で話す時は年齢が上なバーラックには丁寧に話すことが多かった。
「いえ、ユキムラ隊長。二度ほど敵の魔法を妨害に失敗しました……まだまだです」
「あれは確率もあるからしかたないよ、それよりも阻害に失敗した時の対応をきちんと事前から準備していたほうが評価できるよ。本当にみんなお疲れ様でした」
強敵を倒した達成感と、ユキムラ達に認められた感動が波のように隊員たちを包み込んでいた……
別件だが、ユキムラ達を崇拝し、共にたくさんの時間を過ごした隊員たちにはVOでの戦闘システムが発現する人間が現れなかった。
ソーア火山最下層に封印されていた神キュータに出会った時ユキムラはアルテスに問いかけてみた。
【ああ、あれは……あることを実施した時に封印しました。
スキルは目をつぶるから許して!
だいたいNPCに、あのシステム運用させるのは負荷が大きすぎるのよブツブツ……】
最後の方はよくユキムラにも聞き取れなかった。
ソーア火山MD 神キュータ。
永久凍土MD 女神レイカ。
砂丘MD 女神トトリ。
大洞穴MD 神ゴウラ。
大灯台MD 女神セラム。
が、無事に解放されることになった。
アルテスからも凄いこと考えるわねと褒められたユキムラであった。
同時にクロノスの箱はほぼ無制限にアイテム収集が可能になり。
さらに、ネックレスを通じてアイテムの出し入れが可能という、生体以外の物質であればワープ装置のような物になった。
これに以前もらった町への移動アイテムを併用すれば、どのような物資でも一瞬であらゆる場所へと輸送が可能になるという恐ろしい状態になった。
ユキムラは町へと戻るとレンの居るホキド町と魔石輸送を試し、そのチート性能を体験した。
「これは……すごいね……」
「さらに町への移動も可能になるんですよねこの先……もう輸送というものの根底が変わりますね」
「一応私達しか出来ないことですから、まぁ……それでも恐ろしいことですけど……」
「これはあんまり広く知られないほうがいいわよね~、あんまり権力者から目の敵にされても困るし~」
「わうん……」
「そうだね、これは俺達だけの情報として秘匿しよう。
なるべくアイテムバックによる輸送であるように振る舞うようにしよう」
「サナダ街製のアイテムバックも異常な容量ありますから、今更って感じになるとは思うんですが、師匠やヴァリィさんの言うとおり、権力を持つと他者を恐れますからね」
逆らう人なんているのかなぁ、とソーカなんかは思ったりもしたが。
それは胸のうちにしまっておいた。
こうして、第二次ダンジョン攻略作戦は大成功を納めることになったのだ。
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