老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件

穴の空いた靴下

244話 第一次MD攻略作戦

 ユキムラはテンゲン国を攻略するのに一つの案を考えていた。
 拠点となるMDを利用して、仲間となってくれる人間を鍛えに鍛えて、各メンバーと一緒に各地のMD攻略を手分けして出来ないだろうか?
 と、言うものだ。
 つまり白狼隊5名とパーティの限度人数である12名までのプラス7名でMDに侵入して、レベル上げを行う。
 すでに白狼隊はレベル1000台に突入しているので、普通の冒険者だとしてもあっという間に7・800くらいまでは引き上げられるはずだ。
 これを繰り返すことで、白狼隊の一人を隊長として+11人で5箇所別働隊を作れないだろうか、そういう試みだ。
 当初ライセツ村の側にある2つのMDで村人のウチ戦える5名ほどを鍛えた。
 結果は大成功だった。レベルが上がり白狼隊と作戦実行に足る実力を手に入れた。
 5人はGUを引き連れて各地へと散って、各地の調査とめぼしい人材のスカウトへと旅立った。
 そして先程最後の部隊が帰還したのだ。
 あとは集めた人材を鍛え上げて、計画を実行するかどうかというところだった。

 しかし、ユキムラには大きな不安があった。
 それが外部からの魔神勢の妨害の可能性だ。
 今までも何度かあったMDでの魔神たちの妨害がもしあった場合、いくら鍛え上げた仲間たちでも対処が難しい可能性があった。
 それに白狼隊を分散することで各個撃破される可能性も危惧していた。

【ユキムラ、ヤマト解放ありがと】

 久しぶりのクロノスの登場だ。ぺこりと頭を下げる可愛らしい姿にローム(おじーちゃん)あたりが悶絶しそうだなぁなんて思ったりもするユキムラであった。

【皆のとこ行ったら、いきなり仕事漬けになってしもうて……ほんま女神ひと使いが荒いわぁ】

 ヤマトは肩をコキコキと鳴らすような仕草でおちゃらけている。

【ヤマトは天才、どうしても協力してほしかった。
 おかげで外部からの侵入の可能性は殆ど無い。
 あと、いざって時はダンジョンから緊急脱出も可能になった。
 だから、ユキムラは安心して計画を実行していい】

【と、言うわけで。白狼隊の皆にヤマトからプレゼントや!
 これつけたってな~】

【残すところあと少し。頑張って。皆応援してる】

【ほなぁ、頑張ってなぁ!】

 結局ユキムラ達は一言も話さずに机の上にネックレスが5個置かれている。
 風のように現れて、風のように去っていく女神二人組であった。
 一緒に取扱説明書が置かれていた。
 ペンダントの効能、使用方法が美しい筆文字で書かれていた。

「ヤマト様、達筆だし文章も品があって……凄いなぁ……」

 こうして女神からの強力な援助を受けて、ユキムラは計画の準備を一段階すすめることが出来る。
 人材の育成と、2つのMDの攻略だ。

 集められた冒険者たちは他の国からこの国のMDを求めてきたそれなりの腕前の人間だ。
 それでも一度でも白狼隊とダンジョンへ入れば皆ぐうの音も出ないほど思い知らされる。
 自分よりも遥かに高いレベルの人間が居ることを、そして、自分がものすごく強くなる事実を……
 はじめは5人と冒険者たちだが、慣れてくると3人+冒険者、2人+冒険者の二組で二箇所のMDに入り育成を進めていくことが出来た。
 ほんの数ヶ月で白狼隊に絶対忠誠を誓った屈強な冒険者たちの部隊が完成した。

「それではこれから二部隊に分かれてMD攻略を実行する。
 なお、名誉ある攻略部隊に選ばれたものは今後テンゲン全土のダンジョン攻略における副隊長を拝命する。我々白狼隊は、選ばれた客員が、見事その任に耐えると確信している!」

「イエス!! マム!!」

 ソーカの檄文に応える一糸乱れぬ号令が響く。
 最初のMD攻略班に選ばれることは最高の誉れ。
 真紅の武具が与えられる。
 トライ湖MD攻略はユキムラ、ヴァリィが率いる。
 フォージ山MD攻略はレン、ソーカ、タロが率いる。
 残されたものも同士の成功を祈ってやまない。
 こうして第一次MD攻略作戦は実施される。

 なお、テンゲン国で現在把握されているMDは……
 ライセツ村北西のクザヤ町北に広がる砂漠に存在する砂丘MD。
 その南の離島のタケハ町側のソーア火山MD。
 ライセツ村南のミツゲツ町の更に南、大洞穴MD。
 そこから東へいったバツ町の側、大灯台MD。
 そこから北上したザンゲツ町側、呪われし古都MD。
 北の離島ホキド町の側にある永久凍土MD。
 そして最南東に位置する島にある帝都テンゲンの側、龍の巣MDが確認されている。
 その中の呪われし古都MDと龍の巣MDは高難易度MDのため、それ以外の5箇所は第二次作戦で一気に制覇する予定になっている。

 初めての試みにユキムラやレンも不安もあったが、実際に攻略を開始するとその不安は杞憂であることがハッキリとわかった。
 厳しい訓練に耐え抜いた部隊はチームとして完璧に作用し、ユキムラ達をよく助け、個人の戦力としても十二分に任に耐えた。
 12人パーティのよるMD攻略は基本的に簡単な難易度に設定されている。
 そして、素晴らしいことは人数に比例して最後得られる宝が増えるのだった。

 2つのMDを難なく攻略した2つのチームは最奥の部屋でそれぞれ神の解放を見事成し遂げ、凱旋する。
 完璧と言っていい勝利だった。

 フォージ山に封印されていた神はアスト、鍛え上げられた肉体とは裏腹に非常に優しそうな穏やかな神だった。

『おお、ありがとねー。って、今、どうなってるの?』

『アストー、相変わらず元気そうねー』

 アルテスと何故かフェイリスが来ていたが、フェイリスはいつもの鎧姿ではなく、随分と可愛らしいふわっとしたドレス姿だった。

『アルテスじゃないか、久しぶりだなぁ。
 ん? ああ、フェイリスかー、可愛らしい姿してるからびっくりしたよー』

『か、可愛らしい……///』

『もう、フェイリス! ちゃんと話しなさいよ! わざわざ付いてきたんだから!』

『あ、う、うん……アスト……久しぶり……元気だった?』

 ユキムラとヴァリィもあまりの変貌にびっくりしたが、まぁ、流石に察する。

『ああ、元気だよ。また皆と会えるのは嬉しいなぁ』

『……フェイリスも……会えて……嬉しい……です』

 うつむいて耳まで真っ赤にしながらもじもじとしているフェイリス。
 いくらなんでも病的だろと思うほど察しの悪いアスト……
 見ている方が恥ずかしくなる再会だった。


 一方トライ湖はロームが出迎えに来ていた。
 鎧姿の初老の渋いおじ様な神様が封印されていた。

『起きたかシラセ、久しぶりじゃな』

『おお! ローム爺! ご無沙汰しておるな!
 これは、ふむ、何か起きておるんじゃな!』

『ああ、詳しい話は皆のとこでゆっくりとな、儂も飲めるやつが来て嬉しいのう』

『またローム爺と飲めるとは思わなんだ、お主らには礼を言うぞ!』

 こんな感じで解放を済ませる。
 タロの箱だけでなく、ネックレスに神の力を頂けるようになっていたので、それぞれの神の力を受け取ることが出来た。

 得られた宝を用いて、さらに部隊の装備は一新され、更に強大な軍隊へと進化していく。
 第二次MD攻略攻略作戦の準備は順調に進んでいくのであった。

 



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