老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件
217話 フィリポネア城
ダンジョンのお宝を回収して奥のゲートからMDより脱出する。
脱出した先は火山から少し離れた湖の畔の祠だった。
「ほぉ、ここに出るのか……カルフーイ火山の神を脩める祠。
近くの村が大切に管理していたはずだ」
アスリの言うとおり祠は綺麗に管理されて穀物などが祀られていた。
この湖がまた火山からのマグマが流れ込むせいか水の色が真っ赤に見えて幻想的だ。
そのほとりに真っ白な祠が立っていて、美しく絵になっていた。
「アスリさん地図で言うとどこらへんになりますか?」
ユキムラは火山周囲の地図を開く、精巧な地図が有ることに内心アスリは冷や汗をかいたが表に出すことはなく現在地を指し示す。
「しかし、見事な地図じゃな、細かな道までしっかりと記載されていてどこで手に入れたんじゃ?」
抜け目なく探りを入れておく。
「ああ、魔道具を上空に打ち出して周囲の地形を記録して、そこに自分たちで採取などの情報を書き込んでいってまとめてある感じですよ。将来的にはギルドから冒険者へと配布して貰う予定です」
アスリは驚愕した。
ユキムラはこの地図の価値を理解していて、その価値を無にしようとしている。
その目的は冒険者の安全のためにだ。
自分の莫大な利益を捨てて冒険者の安全に寄与する。
その姿勢に感動すら覚えたのだ。
知略謀略政略計略に生きていたアスリにとってこのユキムラの考え方は甘さを感じる一方で羨ましかった。
「まぶしいのぉ……」
「ん? アスリさん何かいいました?」
「いや、何でもない」
それからは特に大きな事件も起こること無く、フィリポネア共和国最後の大都市王都フィリポネアの姿を捉えることが出来た。
「あれが王都フィリポネア……」
海から引き込んだ水路が堀の様に都市を囲んでいて、海辺の港からつながっている巨大な都市。
高い城壁が囲む様な街とは異なり気候と同じような開放的な印象を与える。
遠目にも街の内部に緑と水が豊富に組み込まれており、美しい街並みが伺える。
「川と海が城を守っているんですね。でも嵐のときとかはどうするんだろう……」
レンが当然の疑問をアスリにぶつける。
「水が街の中に入る水門を閉じると、川や海の水が迂回して行くように水路が設置されているんじゃ。
まぁ、お主たちなら知られても構わんか、あの城ある魔道具を発動するとせり上がるようになっている。いざ浸水するようなことが起きても街の人間を保護して浮上させることで水害を防げる。
まぁ、今のところは過去のそういった遺跡まで使わなくても被害は出とらんがな」
確かに海沿いを走りながら海を見ると、外海のはずだが海はとても穏やかだった。
この世界で一番暑いエリアは中央より北のセンテナの街のあたりで、そこから南西に離れた王都だと最初のベイストの街くらいには過ごしやすくなっている。
「このあたりは昔海の神が愛した女神が眠っていると伝えられていて、海も年中穏やかなんじゃよ」
ユキムラはVO時代を思い出したが、そんな話は思い出せなかった。
だいたい伝承なり伝説があるとそこにはMDが在るのがお約束なので、もしかしたらこの海の下にダンジョンが在るのかもしれない、以前のシズイル側のMDのようにこの世界にはVOの知識にはなかったMDが存在している。
女神と神を開放する上で知らなくてもそういったMDには行かないといけない。
ユキムラは以前のようにイベントが起きて巻き込まれる可能性も考慮に入れいていた。
フィリポネアでの準備期間はまだ時間的には余裕がある。
「アスリさん。もうすぐ門なので準備をお願いします」
「うむ、ここまで連れてきてもらった。その恩をやっと返せるな」
門の前に並ぶ入場の列の少し手前に車を止めて一同は徒歩で門へと近づく。
すでに列の後ろの方の商人たちには車を見られていて、しかも一瞬で消した事によってジロジロと見られている。
列に並ばずに門に向かって進んでいく集団を見つけた街の衛兵が近づいてくる。
途中で何かに気がついたようで小走りに近づきアスリに向かい最敬礼をする。
「失礼ですが、アスリ様ではございませんか?」
静かにアスリが頷く。
「おお!! 救国の英雄アスリ様に出会えるとは、感慨の極み!
すぐに隊長を呼んでまいります! 門の側でお待ち下さい!!」
すぐに波が広がるように騒ぎになる。
並んでいる人々もアスリの名を語りながらうっとりとした顔でアスリの姿を見ている。
「凄いですね……」
「まぁな、これでも昔はこの国をいろいろと支えていたからな」
いいドヤ顔だった。
ユキムラ達白狼隊にとにかく圧倒され続けていたアスリは、ようやく自慢できる場所ができて嬉しかったのだろう。
アスリの効果は抜群で、一切の手続きを省略して王との面会へとこぎつける。
街なかでももアスリの威光は十二分に発揮され、アスリも面目躍如と言ったところだ。
歩くだけで人が集まり口々にアスリの名を称えていた。
街を抜け城へとたどり着く、なかばパレードのようになっていた人民は城の前に集まり始めていた。
フィリポネア城は海面が映える薄い水色に塗装された石造り、光が海面で反射して白の壁にキラキラと当たっていて幻想的な動きのある光の文様を作っている。
輝く城。そう呼ばれているフィリポネア城の言葉にし難い美しさに圧倒される。
「アスリ様、王も到着をお待ちしております。
 それに白狼隊の皆様も各地のご活躍王の耳にも入っております。どうぞこちらへ」
地球で言うアジアな雰囲気が溢れる内装の城内を案内の兵士に通される。
謁見の間へ通じる通路では城兵達が敬礼をして一同を向かえてくれる。
「白狼隊、アスリ様、ご到着ー!」
謁見の間へと通じる扉が開かれる。
「こ、これは……」
思わずユキムラは驚いてしまう。
王座の正面に引かれた赤絨毯、その左右に驚くほどたくさんの人が集まっていた。
よく見るとパトスやハル、ガニ、イオラナなど各地の重役も揃っていた。
「久しいなアスリ、そしてそちらが噂の白狼隊か。
私がフィリポネア共和国の代表として国王になっているカイ・ホク・フィリポネアである」
王座から立ち上がる国王は、よく日焼けしたたくましい肉体。
堀が深く、男らしく威厳あふれる顔つき、眼光鋭く自信に満ち溢れている姿だった。
脱出した先は火山から少し離れた湖の畔の祠だった。
「ほぉ、ここに出るのか……カルフーイ火山の神を脩める祠。
近くの村が大切に管理していたはずだ」
アスリの言うとおり祠は綺麗に管理されて穀物などが祀られていた。
この湖がまた火山からのマグマが流れ込むせいか水の色が真っ赤に見えて幻想的だ。
そのほとりに真っ白な祠が立っていて、美しく絵になっていた。
「アスリさん地図で言うとどこらへんになりますか?」
ユキムラは火山周囲の地図を開く、精巧な地図が有ることに内心アスリは冷や汗をかいたが表に出すことはなく現在地を指し示す。
「しかし、見事な地図じゃな、細かな道までしっかりと記載されていてどこで手に入れたんじゃ?」
抜け目なく探りを入れておく。
「ああ、魔道具を上空に打ち出して周囲の地形を記録して、そこに自分たちで採取などの情報を書き込んでいってまとめてある感じですよ。将来的にはギルドから冒険者へと配布して貰う予定です」
アスリは驚愕した。
ユキムラはこの地図の価値を理解していて、その価値を無にしようとしている。
その目的は冒険者の安全のためにだ。
自分の莫大な利益を捨てて冒険者の安全に寄与する。
その姿勢に感動すら覚えたのだ。
知略謀略政略計略に生きていたアスリにとってこのユキムラの考え方は甘さを感じる一方で羨ましかった。
「まぶしいのぉ……」
「ん? アスリさん何かいいました?」
「いや、何でもない」
それからは特に大きな事件も起こること無く、フィリポネア共和国最後の大都市王都フィリポネアの姿を捉えることが出来た。
「あれが王都フィリポネア……」
海から引き込んだ水路が堀の様に都市を囲んでいて、海辺の港からつながっている巨大な都市。
高い城壁が囲む様な街とは異なり気候と同じような開放的な印象を与える。
遠目にも街の内部に緑と水が豊富に組み込まれており、美しい街並みが伺える。
「川と海が城を守っているんですね。でも嵐のときとかはどうするんだろう……」
レンが当然の疑問をアスリにぶつける。
「水が街の中に入る水門を閉じると、川や海の水が迂回して行くように水路が設置されているんじゃ。
まぁ、お主たちなら知られても構わんか、あの城ある魔道具を発動するとせり上がるようになっている。いざ浸水するようなことが起きても街の人間を保護して浮上させることで水害を防げる。
まぁ、今のところは過去のそういった遺跡まで使わなくても被害は出とらんがな」
確かに海沿いを走りながら海を見ると、外海のはずだが海はとても穏やかだった。
この世界で一番暑いエリアは中央より北のセンテナの街のあたりで、そこから南西に離れた王都だと最初のベイストの街くらいには過ごしやすくなっている。
「このあたりは昔海の神が愛した女神が眠っていると伝えられていて、海も年中穏やかなんじゃよ」
ユキムラはVO時代を思い出したが、そんな話は思い出せなかった。
だいたい伝承なり伝説があるとそこにはMDが在るのがお約束なので、もしかしたらこの海の下にダンジョンが在るのかもしれない、以前のシズイル側のMDのようにこの世界にはVOの知識にはなかったMDが存在している。
女神と神を開放する上で知らなくてもそういったMDには行かないといけない。
ユキムラは以前のようにイベントが起きて巻き込まれる可能性も考慮に入れいていた。
フィリポネアでの準備期間はまだ時間的には余裕がある。
「アスリさん。もうすぐ門なので準備をお願いします」
「うむ、ここまで連れてきてもらった。その恩をやっと返せるな」
門の前に並ぶ入場の列の少し手前に車を止めて一同は徒歩で門へと近づく。
すでに列の後ろの方の商人たちには車を見られていて、しかも一瞬で消した事によってジロジロと見られている。
列に並ばずに門に向かって進んでいく集団を見つけた街の衛兵が近づいてくる。
途中で何かに気がついたようで小走りに近づきアスリに向かい最敬礼をする。
「失礼ですが、アスリ様ではございませんか?」
静かにアスリが頷く。
「おお!! 救国の英雄アスリ様に出会えるとは、感慨の極み!
すぐに隊長を呼んでまいります! 門の側でお待ち下さい!!」
すぐに波が広がるように騒ぎになる。
並んでいる人々もアスリの名を語りながらうっとりとした顔でアスリの姿を見ている。
「凄いですね……」
「まぁな、これでも昔はこの国をいろいろと支えていたからな」
いいドヤ顔だった。
ユキムラ達白狼隊にとにかく圧倒され続けていたアスリは、ようやく自慢できる場所ができて嬉しかったのだろう。
アスリの効果は抜群で、一切の手続きを省略して王との面会へとこぎつける。
街なかでももアスリの威光は十二分に発揮され、アスリも面目躍如と言ったところだ。
歩くだけで人が集まり口々にアスリの名を称えていた。
街を抜け城へとたどり着く、なかばパレードのようになっていた人民は城の前に集まり始めていた。
フィリポネア城は海面が映える薄い水色に塗装された石造り、光が海面で反射して白の壁にキラキラと当たっていて幻想的な動きのある光の文様を作っている。
輝く城。そう呼ばれているフィリポネア城の言葉にし難い美しさに圧倒される。
「アスリ様、王も到着をお待ちしております。
 それに白狼隊の皆様も各地のご活躍王の耳にも入っております。どうぞこちらへ」
地球で言うアジアな雰囲気が溢れる内装の城内を案内の兵士に通される。
謁見の間へ通じる通路では城兵達が敬礼をして一同を向かえてくれる。
「白狼隊、アスリ様、ご到着ー!」
謁見の間へと通じる扉が開かれる。
「こ、これは……」
思わずユキムラは驚いてしまう。
王座の正面に引かれた赤絨毯、その左右に驚くほどたくさんの人が集まっていた。
よく見るとパトスやハル、ガニ、イオラナなど各地の重役も揃っていた。
「久しいなアスリ、そしてそちらが噂の白狼隊か。
私がフィリポネア共和国の代表として国王になっているカイ・ホク・フィリポネアである」
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