俺の高校生活に平和な日常を

ノベルバユーザー177222

第4章 #10「佐藤和彦生誕祭2016 〜中編『サプライズゲストが登場!?の夕方の部』〜」

 ---「んんっ…」

 目を覚ますと俺はベットで仰向けになっていた。確か有紗の頭突きを喰らって床に倒れていたハズだが…

 「…ハアーーーーー」

 そんなことはどうでもいい!俺はとうとうやってはいけないことをしてしまった。死にたくなる程恥ずかしいうえもういっそのこと家出でもするべきか?と思ってしまう程に気まずくなる。

 「ヤッちまったよ〜〜」

 穴があったら入りたいという言葉があるが俺は縄があったらくくりたいよ!

 部屋には当然有紗の姿はなかった。そりゃあそうか。変態がいる部屋になんか長居出来ねーもんな。

 「どうすっかなぁ〜?」

 ため息のように溢れる一言が俺の胸をざわつかせた。このままだと本気でヤバい状況だと理解しているからだ。

 俺はとりあえず荷物が届いていることを思い出し気持ちを落ち着かせるきっかけになればと部屋を出ていつもの食卓に向かった。

 ひょっとしたら有紗と出くわすんじゃないかとも思ったが有紗の姿は見当たらなかった。

 テーブルには少し小さめのダンボールが一つだけ置かれていた。

 「誰からだ!?何も頼んだ覚えねーもんなぁ」

 俺はダンボールを部屋に持っていき早速開けてみた。

 「これは…」

 中にはP○4のソフト2、3本とお菓子がいくつかごちゃ混ぜになって入っていた。

 「俺の誕生日プレゼント…ってことでいいのかな?これってまさか…」

 思い当たる節は二つあった。中学からの悪友・丸岡と同じオタク趣味と知り最近仲良くなったが色々と面倒ごとを引き起こすみのりのどちらかだろう。

 だがその二択もソフトのタイトルを見てすぐに一人に絞られた。

 「ギャルゲーを渡してくるってことは丸岡で間違いなさそうだな」

 ソフトは全部丸岡の好きなギャルゲーばかりだった。別に欲しいと思ってはいなかったがどうせ『話のネタに使いたいからプレイしてくれ!』という意味を送ってこれにしたのだろう。ったく、人の誕生日を何だと思ってんだか…

 「後でやってみっか?」

 俺はとりあえず心の隅っこで感謝の気持ちを持ちながらダンボールから中身を全部出し、ソフトをゲーム機の置いてあるスペースに適当に置いておいた。

 「あっ、もうこんな時間か?」

 ふと窓を見るとすっかり真っ赤な夕日が顔を覗かせていた。俺は少しの間、その景色を呆然と見つめながら考えていた。

 (ここは素直に謝るしかないかな?)

 有紗とは少なくとも2、3年は一緒に過ごすことになるだろう。だが今のままだとお互い気まずいままの3年間を過ごさなければいけなくなる。

 それに元はと言えば俺の浅ましい考えが引き起こしてしまったことだ。こっちから謝るのが正当だろう。

 「そう…だよな。よし!後できちんと土下座して謝るか!」

 俺は一人決意表明をした。土下座することに関してはなんの躊躇もない。後は俺の誠意が伝わるかどうかが問題だが…

 「ただいま〜!」

 家に響く梓の声。その声を聞くと不思議と安心するのは俺の心が安らぎを求めていたからだろう。色々と考えて疲れていたからな。

 「おお。おかえ…」

 俺は部屋を出て梓のもとへ向かってみるとそこには3人の姿が見えた。

 「こんばんは」

 「………」

 「みのりと…イーリスちゃん!?何で2人が…」

 梓の両隣にいつもの笑顔を見せるみのりと俺を見るや否や梓の後ろに隠れるイーリスちゃん。珍しい美少女スリーショットに俺は驚いていた。梓とイーリスちゃんは分からないでもないが、何故みのりまで一緒なのだろうか?

 「ああ、イーリスちゃんと買い物してる時に偶然会ったの。それでお話ししてたらちょうどお兄ちゃんに用事があるって言ってたから連れて来たの」

 「用事?」

 なんか約束してたっけ?まさかまた勉強会でもしようとか言い出すんじゃないだろうな!?つい最近、あんな事がしといてまだやるつもりか!?

 「ふふ♡まだ分からないんですか?今日は特別な日だというのに」

 「特別な日?…あっ」

 みのりの大ヒントで俺は理解した。そういうことか。

 「気づいてくれたみたいですね。このたびはおめでとうございます和彦君♪」

 「み、みのりさん!?サプライズは!?」

 みのりの一言に慌て出す梓。だが慌てる梓に対して相変わらず笑顔を崩さないみのり。

 「いいじゃないですか。サプライズじゃなくても祝うことに意味があるんですから」

 「それはそうですけど…」

 正論を言うみのりだったが梓は残念そうな顔をしていた。

 思い返すと毎年梓は俺の誕生日の時やたらサプライズをしてくれた。俺も分かっていながらも梓の驚かしたい!喜ばしたい!という純粋な気持ちを汲み取って驚いてたりしたっけ?本当に可愛い妹を持って幸せ者だよ俺は。

 「ありがとな梓」

 俺は残念そうな顔をした梓の頭を優しく撫でた。サプライズとかしてくれなくても祝ってもらってるだけで充分嬉しいんだ。

 「…エヘヘ♡」

 頭を撫でると梓は嬉しそうな笑顔を見せてくれた。その笑顔はまさに天使のようだった。

 ---「フンフフンフーン♪」

 それから梓はルンルン気分で晩メシ作りに取りかかった。みのりも一緒に手伝ってくれていた。大量の買い物袋から察するに今日は豪勢になりそうだ。

 「………」

 ん〜、それよりさっきからイーリスちゃんがもの凄いガン見してくるんだが何か言いたいようにも見えるけど、何も言ってこないしなぁ。

 「…イーリスちゃん、ひょっとして何か俺の顔に付いてる?」

 「…別に」

 「…そう」

 会話終了。本当に何か言いたい訳では無いのか?分からん。

 「…なさい」

 「ん?」

 そう思ってた時、今度はイーリスちゃんの方から話しかけてきてくれた。突然だった為、最初の部分が聞き取れず俺はもう一度聞き返した。

 「あの時はごめんなさい。それとありがとう…ございます。あとおめでとう…ございます」

 「………」

 あの時…そうか。俺に謝りたかったんだ。恥ずかしそうになりながらもイーリスちゃんは勇気を出して謝罪してくれた。言い出しにくかったのはきっと俺がイーリスちゃんに対して悪いイメージを持っているのではないかと思ってしまったのだろう。

 「ああ、もうあの時のことはもう気にしてないから。あと、ありがとうねイーリスちゃん」

 「…ん」

 俺はフォローしながらも感謝の言葉を述べた。それに対してイーリスちゃんの表情は未だ難しい顔をしているがどこかスッキリしたような表情にも見えた。

 「ご飯出来たよー!」

 イーリスちゃんとの会話も終わり梓の気分の良い声が聞こえてくると同時に美味しそうな匂いがしてきた。こうして俺の誕生日会の準備が整いつつあった。

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