終末の異世界と大罪のグリモワール ~英霊は異世界で斯く戦えり~
第五章51 砂塵の試練ⅩⅩⅩⅩ:世界命運の戦い
「――――」
闇夜を覆い尽くす業炎のカーテン。
回避不可能な世界破滅の攻撃は絶大であり、その無慈悲なまでに強力な攻撃はまだ幼い容姿をしている四人の女神たちをいとも容易く地へと墜落させた。
バルベット大陸の北部に存在する氷都市・ミノルア。一年の全てを雪に覆われた極寒の地の最北端。そこにアルジェンテと呼ばれる氷山が存在している。その場所で今、世界の命運を左右する壮絶なる戦いが繰り広げられていた。
『我は世界破滅の存在――ガイア。我の邪魔をする存在は全て、この世から抹消する』
異様な静寂が支配するアルジェンテ氷山一帯に響くのは、魔竜・ガイアが放つ主苦しい声音だった。アルジェンテ氷山はその名の通り、常に雪で覆われている場所であり、誰も立ち入らないために純白な雪が美しい情景を作り出しているのが特徴的である
しかし、そんな北部に存在する氷山を覆っていた純白の雪たちは魔竜による攻撃によって、その姿を跡形もなく消失させていた。魔竜が繰り出した業炎のカーテンはその土地の環境すらも一変させる結果をもたらし、極寒の大地であったアルジェンテ地方から、雪という存在を抹消させた。
魔竜が存在する地点を中心とした半径数キロの範囲には、今でも業炎のカーテンによる大地の延焼が断続的に続いている。
『…………』
半径数キロに及ぶ攻撃の跡、そこに響く声音は存在しない。
人間も魔獣も動植物たちも、生きとし生けるもの全てが魔竜の攻撃によって死滅してしまった。延焼による噴煙がもくもくと立ち込め、魔竜は紅蓮の瞳を光らせ、自分に歯向かってきた女神たちの姿を探す。
「ぷはッ……な、なに……今の……?」
ぱちぱちと木々が燃える音に混じり、そんな可愛らしい声音が魔竜の鼓膜を震わせた。
すかさず声がしてきた方向に目を向けると、魔竜が立つ場所から遥か先、そこに瑠璃色の髪をした小さな少女が存在していた。
彼女は氷輪の女神・シュナの妹で名をリエルという。
リエルには戦う力が存在してはおらず、女神たちが戦う様子を遥か後方から見守っていた。魔竜による攻撃は彼女が立っている場所も攻撃範囲としていたが、リエルは噴煙に咳払いをしながらも、その身体に傷を負うことなく健在していた。
「お、お姉ちゃん……?」
噴煙が目に染みるのか、リエルは咳払いを繰り返し、そして涙で潤んだ瞳で周囲の状況を確認する。少し前までそこに存在していた世界が一変しており、自らの視界に映る世界の変化に思考が追いついていない。
「お姉ちゃんッ!」
戦う力が存在しない彼女が無事だった理由。
それは暴風の女神・カガリによる守護魔法が付与されていたからである。
術者が近くに居ないとしても効果を発揮する守護魔法。風を司る精霊による強力な決壊がリエルの身体を包み込んでおり、それによって彼女は魔竜の攻撃に対しても無事でいることができたのであった。
リエルは周囲に女神たちの姿が存在しないことに気付くと、その目を見開いて驚きの表情で彼女たちを探す。
『…………』
必死の形相で周囲を確認するリエルを、魔竜は少々の驚きをもって無言のままで見つめ続けている。彼女が脅威となる可能性は皆無であることは間違いなく、しかし魔竜にとっては彼女が生きていることは予想外なのであった。
『…………』
魔竜は思案する。
自らの攻撃を受けそれでも尚、生き続ける少女をどうするか。
『……滅する』
魔竜が思案したのも一瞬だった。
力を持たない少女の処遇について悩む。魔竜は自らの行動に少なからずの衝撃を受けていた。魔竜がもつのは世界を破滅させるという使命ただひとつ。
使命を全うするためには、この世界に住まう人間という存在は邪魔であり、すべからく滅しなければならない。
魔竜の身体に再び邪悪なる魔力が集中していく。
世界を構築し、大地に流れる膨大な魔力を吸い上げると世界破滅の魔法を準備していく。
『破滅を告げし、真なる闇を纏いし邪剣、世界を混沌と化せ――深淵連剣』
魔竜・ガイアは魔法の詠唱を終えると、虚空に数多の剣を生成する。闇の力で作られし巨大な両刃剣はその全てを闇の魔力で作られている。虚空を漂う剣は魔竜の力によって完全にコントロールされており、魔竜の意思によって切っ先をリエルに向けると、音もなく飛翔を開始する。
「…………えっ?」
風を切って接近してくる闇剣の存在にリエルが気付く。
凄まじい速さで接近する無数の闇剣は、リエルの身体を貫こうと跳躍を続けている。
あと数秒。
たったそれだけの時間で瑠璃色の髪をもつ少女・リエルの命は無残にも散ってしまう。
「――――ッ!?」
アルジェンテ氷山に響く轟音。
リエルが立っていた場所を中心に広がる粉塵。
大地を揺さぶり、周囲一帯に響く轟音は一回に留まらず、一撃、また一撃と間髪入れることなく連続で木霊し続けている。たった一撃で十分なはずだが、魔竜は念には念をと言わんばかりに闇剣をリエルに向けて放ち続ける。
粉塵の中に姿を消したリエルの安否を誰も知る由はない。
しかし、普通の考えであるならば彼女が魔竜の攻撃を耐えきれるはずがないのは一目瞭然である。
「けほっ、けほっ……」
立ち込める粉塵の中から聞こえてくるのは、幼き少女の咳払い。
その声音に魔竜が静かに眉を顰める。
「いやー、あっぶなかったねー」
「……よかった、無事で」
「お、お姉ちゃん……?」
粉塵が晴れる。
そこには三人の人影が存在していた。
一人は瑠璃色の髪を短く切り揃えた少女・リエル。
一人は同じ瑠璃色の髪を腰まで伸ばした、子供っぽい身体つきとは不相応な大人びた顔つきが印象的な少女・シュナ。
最後の一人は茶髪をサイドポニーの形で結び、腕、太腿を大胆に露出した格好が印象的な少女・カガリ。
氷輪と暴風の女神は険しい表情を浮かべ、それぞれが右手を前に突き出すことで強力な防御魔法を展開することで、魔竜の攻撃に晒されていた少女・リエルを救った。
「ふぅ……なんとかみんな無事……ってことで、よさそうだね」
「そうですね。私たちもすぐにダイアナさんたちと合流をッ!」
険しい表情を浮かべるカガリとシュナは、その視線を遥か先に存在する魔竜へと固定した状態で短く言葉を交わす。
「お姉ちゃん、大丈夫なのッ!?」
リエルからは姉・リエルの後ろ姿しか見えていない。
しかし、後ろ姿だけで女神と呼ばれる彼女たちが無事ではないことを理解することはできた。
それぞれが特徴的な衣服を身に纏っていたのだが、眼前に立つシュナとカガリの衣服は埃だらけでボロボロな状態であった。薄暗い中でもリエルにはハッキリと見えていた。僅かに見える白い肌には無数の傷が存在しており、鮮血が垂れ落ちている。
「えぇ、私たちは大丈夫」
「まぁ、無傷って訳にはいかなかったけどねー、それでもみんな無事だよ」
リエルの言葉にシュナとカガリが返答する。
「それじゃ、リエルは待ってて。もう少しで戦いは終わるから」
「おっ、いいねー、シュナちゃん。その意気だよ」
両足に力を込めると、氷輪の女神と暴風の女神であるシュナとカガリが噴煙立ち込める大地を駆け出していく。真っ直ぐ目指すのはその巨体を惜しげもなく披露している魔竜の元。
風を切って大地を突き進むシュナとカガリの遥か前方。
そこにはシュナたちと同じように跳躍を繰り返す人影が二つ存在していた。
「ふははッ! よく、あの攻撃を守護魔法なしで耐えたものだッ……勇敢ッ、無謀、奇跡ッ!」
「私だって単独で守護魔法を使うことくらいはできるわ。まぁ、ちょっとギリギリだったけど」
シュナとカガリが合流するために動き出したのと同タイミング。
その前方では炎獄と白銀の女神が魔竜を討つために攻撃を仕掛けようとしていた。
『…………』
「ふん、少しは驚いているのかしら?」
「魔竜に驚く……という感情が存在しているのならなッ……いくぞ、ダイアナッ!」
「私に指図はしないで。言われなくてもやるわッ!」
凄まじい攻撃を受け、ダイアナとアスカも無傷で終えることはなかった。
シュナたちと同じように全身に無視できないダメージを負っているのは間違いないのだが、それでも彼女たちは命が尽きない限りは世界破滅を企む魔竜を討つために行動を続ける。
「聖なる輝きよ、世界を両断せよ――聖輝一刀ッ!」
「空気を焦がし、大地を燃やし、立ち塞がる全てを灰燼と化せッ――絶・炎獄拳ッ!」
炎獄と氷輪の女神であるアスカとダイアナは即座に魔法の詠唱を終えると、大地を蹴って跳躍を開始する。
『我の邪魔はさせんッ!』
粉塵を切り裂いて突進してくるアスカとダイアナに対して、魔竜も待ちの姿勢を取り続けることはなかった。
『破滅を告げし、真なる闇を纏いし邪剣、世界を混沌と化せ――深淵連剣ッ』
待ち受ける魔竜はリエルに放った攻撃と同じものを、突進してくるアスカとカガリにも放っていく。虚空に生成されるのは闇の炎に包まれし巨大な両刃剣。魔竜の意思によってコントロールされた闇剣は、突進してくるアスカたちを迎撃するかのように飛翔を開始する。
「「砕け散れええええぇぇぇッ!」」
迫ってくる闇剣に対して、アスカとダイアナは一瞬も恐れることなく二人で声を合わせてそれぞれの攻撃を振るっていく。
「――――ッ!」
凄まじい轟音が周囲に響き渡り、また新たな粉塵が生まれる。
「次はッ!」
「私たちの番ですッ!」
粉塵から出てくるのはアスカとダイアナではなかった。
二人に続くような形で跳躍を続けていた氷輪と暴風の女神・シュナとカガリが前線に合流する。
「天地を凍てつかす究極の氷槍よ、あまねく悪を穿て――氷槍龍牙ッ!」
「風刃よ、万物を切り裂き、悪を討て――絶風神刃ッ!」
シュナが唱えるのは自分の身体を容易に越える大きさを持った氷槍を生成する氷魔法。
カガリが唱えるのは目には見えない風刃を無数に生み出し、対象を切り刻む風魔法。
「「いっけええええええええええぇぇぇぇッ!」」
シュナとカガリの声音がシンクロし、壮絶なる攻撃が魔竜を襲う。
世界の命運を二分化する戦い。
絶望に差す希望の光はまだ潰えてはいない。
闇夜を覆い尽くす業炎のカーテン。
回避不可能な世界破滅の攻撃は絶大であり、その無慈悲なまでに強力な攻撃はまだ幼い容姿をしている四人の女神たちをいとも容易く地へと墜落させた。
バルベット大陸の北部に存在する氷都市・ミノルア。一年の全てを雪に覆われた極寒の地の最北端。そこにアルジェンテと呼ばれる氷山が存在している。その場所で今、世界の命運を左右する壮絶なる戦いが繰り広げられていた。
『我は世界破滅の存在――ガイア。我の邪魔をする存在は全て、この世から抹消する』
異様な静寂が支配するアルジェンテ氷山一帯に響くのは、魔竜・ガイアが放つ主苦しい声音だった。アルジェンテ氷山はその名の通り、常に雪で覆われている場所であり、誰も立ち入らないために純白な雪が美しい情景を作り出しているのが特徴的である
しかし、そんな北部に存在する氷山を覆っていた純白の雪たちは魔竜による攻撃によって、その姿を跡形もなく消失させていた。魔竜が繰り出した業炎のカーテンはその土地の環境すらも一変させる結果をもたらし、極寒の大地であったアルジェンテ地方から、雪という存在を抹消させた。
魔竜が存在する地点を中心とした半径数キロの範囲には、今でも業炎のカーテンによる大地の延焼が断続的に続いている。
『…………』
半径数キロに及ぶ攻撃の跡、そこに響く声音は存在しない。
人間も魔獣も動植物たちも、生きとし生けるもの全てが魔竜の攻撃によって死滅してしまった。延焼による噴煙がもくもくと立ち込め、魔竜は紅蓮の瞳を光らせ、自分に歯向かってきた女神たちの姿を探す。
「ぷはッ……な、なに……今の……?」
ぱちぱちと木々が燃える音に混じり、そんな可愛らしい声音が魔竜の鼓膜を震わせた。
すかさず声がしてきた方向に目を向けると、魔竜が立つ場所から遥か先、そこに瑠璃色の髪をした小さな少女が存在していた。
彼女は氷輪の女神・シュナの妹で名をリエルという。
リエルには戦う力が存在してはおらず、女神たちが戦う様子を遥か後方から見守っていた。魔竜による攻撃は彼女が立っている場所も攻撃範囲としていたが、リエルは噴煙に咳払いをしながらも、その身体に傷を負うことなく健在していた。
「お、お姉ちゃん……?」
噴煙が目に染みるのか、リエルは咳払いを繰り返し、そして涙で潤んだ瞳で周囲の状況を確認する。少し前までそこに存在していた世界が一変しており、自らの視界に映る世界の変化に思考が追いついていない。
「お姉ちゃんッ!」
戦う力が存在しない彼女が無事だった理由。
それは暴風の女神・カガリによる守護魔法が付与されていたからである。
術者が近くに居ないとしても効果を発揮する守護魔法。風を司る精霊による強力な決壊がリエルの身体を包み込んでおり、それによって彼女は魔竜の攻撃に対しても無事でいることができたのであった。
リエルは周囲に女神たちの姿が存在しないことに気付くと、その目を見開いて驚きの表情で彼女たちを探す。
『…………』
必死の形相で周囲を確認するリエルを、魔竜は少々の驚きをもって無言のままで見つめ続けている。彼女が脅威となる可能性は皆無であることは間違いなく、しかし魔竜にとっては彼女が生きていることは予想外なのであった。
『…………』
魔竜は思案する。
自らの攻撃を受けそれでも尚、生き続ける少女をどうするか。
『……滅する』
魔竜が思案したのも一瞬だった。
力を持たない少女の処遇について悩む。魔竜は自らの行動に少なからずの衝撃を受けていた。魔竜がもつのは世界を破滅させるという使命ただひとつ。
使命を全うするためには、この世界に住まう人間という存在は邪魔であり、すべからく滅しなければならない。
魔竜の身体に再び邪悪なる魔力が集中していく。
世界を構築し、大地に流れる膨大な魔力を吸い上げると世界破滅の魔法を準備していく。
『破滅を告げし、真なる闇を纏いし邪剣、世界を混沌と化せ――深淵連剣』
魔竜・ガイアは魔法の詠唱を終えると、虚空に数多の剣を生成する。闇の力で作られし巨大な両刃剣はその全てを闇の魔力で作られている。虚空を漂う剣は魔竜の力によって完全にコントロールされており、魔竜の意思によって切っ先をリエルに向けると、音もなく飛翔を開始する。
「…………えっ?」
風を切って接近してくる闇剣の存在にリエルが気付く。
凄まじい速さで接近する無数の闇剣は、リエルの身体を貫こうと跳躍を続けている。
あと数秒。
たったそれだけの時間で瑠璃色の髪をもつ少女・リエルの命は無残にも散ってしまう。
「――――ッ!?」
アルジェンテ氷山に響く轟音。
リエルが立っていた場所を中心に広がる粉塵。
大地を揺さぶり、周囲一帯に響く轟音は一回に留まらず、一撃、また一撃と間髪入れることなく連続で木霊し続けている。たった一撃で十分なはずだが、魔竜は念には念をと言わんばかりに闇剣をリエルに向けて放ち続ける。
粉塵の中に姿を消したリエルの安否を誰も知る由はない。
しかし、普通の考えであるならば彼女が魔竜の攻撃を耐えきれるはずがないのは一目瞭然である。
「けほっ、けほっ……」
立ち込める粉塵の中から聞こえてくるのは、幼き少女の咳払い。
その声音に魔竜が静かに眉を顰める。
「いやー、あっぶなかったねー」
「……よかった、無事で」
「お、お姉ちゃん……?」
粉塵が晴れる。
そこには三人の人影が存在していた。
一人は瑠璃色の髪を短く切り揃えた少女・リエル。
一人は同じ瑠璃色の髪を腰まで伸ばした、子供っぽい身体つきとは不相応な大人びた顔つきが印象的な少女・シュナ。
最後の一人は茶髪をサイドポニーの形で結び、腕、太腿を大胆に露出した格好が印象的な少女・カガリ。
氷輪と暴風の女神は険しい表情を浮かべ、それぞれが右手を前に突き出すことで強力な防御魔法を展開することで、魔竜の攻撃に晒されていた少女・リエルを救った。
「ふぅ……なんとかみんな無事……ってことで、よさそうだね」
「そうですね。私たちもすぐにダイアナさんたちと合流をッ!」
険しい表情を浮かべるカガリとシュナは、その視線を遥か先に存在する魔竜へと固定した状態で短く言葉を交わす。
「お姉ちゃん、大丈夫なのッ!?」
リエルからは姉・リエルの後ろ姿しか見えていない。
しかし、後ろ姿だけで女神と呼ばれる彼女たちが無事ではないことを理解することはできた。
それぞれが特徴的な衣服を身に纏っていたのだが、眼前に立つシュナとカガリの衣服は埃だらけでボロボロな状態であった。薄暗い中でもリエルにはハッキリと見えていた。僅かに見える白い肌には無数の傷が存在しており、鮮血が垂れ落ちている。
「えぇ、私たちは大丈夫」
「まぁ、無傷って訳にはいかなかったけどねー、それでもみんな無事だよ」
リエルの言葉にシュナとカガリが返答する。
「それじゃ、リエルは待ってて。もう少しで戦いは終わるから」
「おっ、いいねー、シュナちゃん。その意気だよ」
両足に力を込めると、氷輪の女神と暴風の女神であるシュナとカガリが噴煙立ち込める大地を駆け出していく。真っ直ぐ目指すのはその巨体を惜しげもなく披露している魔竜の元。
風を切って大地を突き進むシュナとカガリの遥か前方。
そこにはシュナたちと同じように跳躍を繰り返す人影が二つ存在していた。
「ふははッ! よく、あの攻撃を守護魔法なしで耐えたものだッ……勇敢ッ、無謀、奇跡ッ!」
「私だって単独で守護魔法を使うことくらいはできるわ。まぁ、ちょっとギリギリだったけど」
シュナとカガリが合流するために動き出したのと同タイミング。
その前方では炎獄と白銀の女神が魔竜を討つために攻撃を仕掛けようとしていた。
『…………』
「ふん、少しは驚いているのかしら?」
「魔竜に驚く……という感情が存在しているのならなッ……いくぞ、ダイアナッ!」
「私に指図はしないで。言われなくてもやるわッ!」
凄まじい攻撃を受け、ダイアナとアスカも無傷で終えることはなかった。
シュナたちと同じように全身に無視できないダメージを負っているのは間違いないのだが、それでも彼女たちは命が尽きない限りは世界破滅を企む魔竜を討つために行動を続ける。
「聖なる輝きよ、世界を両断せよ――聖輝一刀ッ!」
「空気を焦がし、大地を燃やし、立ち塞がる全てを灰燼と化せッ――絶・炎獄拳ッ!」
炎獄と氷輪の女神であるアスカとダイアナは即座に魔法の詠唱を終えると、大地を蹴って跳躍を開始する。
『我の邪魔はさせんッ!』
粉塵を切り裂いて突進してくるアスカとダイアナに対して、魔竜も待ちの姿勢を取り続けることはなかった。
『破滅を告げし、真なる闇を纏いし邪剣、世界を混沌と化せ――深淵連剣ッ』
待ち受ける魔竜はリエルに放った攻撃と同じものを、突進してくるアスカとカガリにも放っていく。虚空に生成されるのは闇の炎に包まれし巨大な両刃剣。魔竜の意思によってコントロールされた闇剣は、突進してくるアスカたちを迎撃するかのように飛翔を開始する。
「「砕け散れええええぇぇぇッ!」」
迫ってくる闇剣に対して、アスカとダイアナは一瞬も恐れることなく二人で声を合わせてそれぞれの攻撃を振るっていく。
「――――ッ!」
凄まじい轟音が周囲に響き渡り、また新たな粉塵が生まれる。
「次はッ!」
「私たちの番ですッ!」
粉塵から出てくるのはアスカとダイアナではなかった。
二人に続くような形で跳躍を続けていた氷輪と暴風の女神・シュナとカガリが前線に合流する。
「天地を凍てつかす究極の氷槍よ、あまねく悪を穿て――氷槍龍牙ッ!」
「風刃よ、万物を切り裂き、悪を討て――絶風神刃ッ!」
シュナが唱えるのは自分の身体を容易に越える大きさを持った氷槍を生成する氷魔法。
カガリが唱えるのは目には見えない風刃を無数に生み出し、対象を切り刻む風魔法。
「「いっけええええええええええぇぇぇぇッ!」」
シュナとカガリの声音がシンクロし、壮絶なる攻撃が魔竜を襲う。
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