終末の異世界と大罪のグリモワール ~英霊は異世界で斯く戦えり~
第五章21 砂塵の試練Ⅹ:現代剣姫VS初代剣姫
「私は……負ける訳にはいかないッ!」
シルヴィアが挑む砂塵の試練。
彼女が対峙するのは初代剣姫・リーシア。
黄金と白銀が入り混じった髪と、細い身体を包む甲冑ドレス。片手には一本の両刃剣を握ったリーシアは、初代剣姫という名に相応しい力を有しているのであった。
一人の騎士としても、一人の剣姫としても圧倒的な実力差を見せつけられたシルヴィアはいとも容易く己の命を危機に晒してしまう。明確な死が間近に迫った時、シルヴィアの身体に異変が起こる。
それはマガン大陸に存在した異形の大地でも見た剣姫の『暴走』だった。
「……私の邪魔をする奴はッ……全員、倒すッ」
「…………」
明らかに様子が一変したシルヴィアを見て、リーシアはその顔から笑みを消すと険しい表情を浮かべる。シルヴィアの身体から放出される力はまさしく剣姫が持つものであり、しかしそれは最悪の形で具現化していることにリーシアは気付いている。
「なるほどねー、命の危機と引き換えに剣姫の力を引き出しているってことね」
「…………」
ゆっくりと無言で立ち上がり、全身から圧倒的な威圧感を放出するシルヴィアの状態を冷静に分析するリーシア。ピリピリと肌に突き刺さる剣姫の威圧にリーシアの心は無意識の内に昂ぶってしまう。
「――――ッ!」
リーシアと話をする気はない。
剣姫の力を暴走させたシルヴィアは、眼前に立つあらゆるものを破壊するために跳躍を開始する。一切の無駄を省いた完璧な跳躍を披露すると、瞬く間の内にリーシアとの距離を詰めていく。
「おっとっとッ!」
「――――」
「……さすがに早いね」
一瞬にしてリーシアへ接近したシルヴィアは、片手に持った蒼剣を振るっていく。
風を切って接近する蒼剣に対して、リーシアは自らの心を乱すことなく冷静に対処していく。
両手に持っていた剣でシルヴィアの蒼剣を受け止め、そして必要最低限の動きだけでぶつけられる力を受け流していく。
「よっとッ!」
「…………」
甲冑ドレスを宙に靡かせながらシルヴィアから距離を取るリーシア。
そんな動きをシルヴィアは既に想定していたのか、険しい表情に変化が現れることなくすぐさま次なる行動へと移っていく。
「剣を回収したかったんだ」
「――紅蓮の閃光ッ」
「……えっ?」
手放していた『緋剣』を回収したシルヴィアは、すぐさま次なる攻撃を仕掛けていく。
緋剣の刀身に業炎を纏わせ、それを振るうことで一筋の炎を射出する魔法剣。
慈悲なく放たれた魔法剣にリーシアは虚を突かれた様子を見せるが、すぐさま冷静さを取り戻すと自らが持つ剣に膨大な魔力を注いでいく。
「――光絶断ッ!」
リーシアの鋭い声音が響くのと同時に、彼女が振るう剣から眩い光が放たれる。
「「――――」」
二つの力が衝突すると、砂塵に轟音が轟き大地を揺るがした後に消失していく。
「はあああああああああぁぁぁぁぁッ!」
「――ッ!?」
互いが放った攻撃により粉塵が舞う中、先に行動を見せたのはシルヴィアだった。
粉塵の中から姿を現したシルヴィアは、真っ直ぐにリーシアの元へと突進する。
「さすがに手強いね」
「ちッ……」
「おっとッ!?」
再び距離を詰めての壮絶な剣戟。
互いが振るう剣の全てが命を刈り取るためのものであり、必要最低限の動きだけで互いが互いの剣を躱していく。目の前を剣の切っ先が通過していく感覚。髪の先端が切り落とされ風に舞っていく姿。その全てが二人の剣姫にとって血湧き肉躍る展開であった。
「剣の動きもさっきとは全然違う。しっかりとした信念を持った剣に変わってるね」
「…………」
「確かに剣姫としての力を引き出すことは出来ているかもしれない。でもね、シルヴィア……それは大切なものを守るための剣なのかな?」
「…………」
互いに命を賭けた剣戟を繰り広げる中で、リーシアの表情には悲しげな色が浮かぶようになっていた。自我を失い、ただ己の命を守るため、敵対する全てのものを破壊するための戦い方を披露するシルヴィアにリーシアは初代剣姫として悲しみを禁じ得なかった。
剣姫とは剣に愛され、剣と共に民を守る存在。
しかし、今のシルヴィアからはそんな剣姫としてあるべき姿を見ることは出来ない。
「正しい現代の剣姫として、私は貴方を導かなくちゃいけない」
「…………」
「――シルヴィア、目を覚ましなさい。その力は本当に大切なものを守るために使うものなんだよ」
その言葉と共にリーシアが全身に纏う気配が一変する。
全身を突き抜けていく悪寒にシルヴィアは本能的に一歩後ずさる。
「――聖なる剣輝」
それは剣姫・シルヴィアがこれまでに幾度となく使ってきた最強の剣技。
ありったけの魔力と眩い輝きを刀身に纏わせて、全てを破壊する強烈な一撃を見舞うものだった。しかし、リーシアが放つそれはシルヴィアが使うものとはレベルが違っていた。
「――――ッ!?」
シルヴィアが放つものよりも数倍は強い力を内包した剣技が容赦なく放たれる。
真なる剣姫が放つ威圧感と自分に迫ってくる眩い輝き。
現代の剣姫・シルヴィアは、その輝きの中に包み込まれてしまうのであった。
シルヴィアが挑む砂塵の試練。
彼女が対峙するのは初代剣姫・リーシア。
黄金と白銀が入り混じった髪と、細い身体を包む甲冑ドレス。片手には一本の両刃剣を握ったリーシアは、初代剣姫という名に相応しい力を有しているのであった。
一人の騎士としても、一人の剣姫としても圧倒的な実力差を見せつけられたシルヴィアはいとも容易く己の命を危機に晒してしまう。明確な死が間近に迫った時、シルヴィアの身体に異変が起こる。
それはマガン大陸に存在した異形の大地でも見た剣姫の『暴走』だった。
「……私の邪魔をする奴はッ……全員、倒すッ」
「…………」
明らかに様子が一変したシルヴィアを見て、リーシアはその顔から笑みを消すと険しい表情を浮かべる。シルヴィアの身体から放出される力はまさしく剣姫が持つものであり、しかしそれは最悪の形で具現化していることにリーシアは気付いている。
「なるほどねー、命の危機と引き換えに剣姫の力を引き出しているってことね」
「…………」
ゆっくりと無言で立ち上がり、全身から圧倒的な威圧感を放出するシルヴィアの状態を冷静に分析するリーシア。ピリピリと肌に突き刺さる剣姫の威圧にリーシアの心は無意識の内に昂ぶってしまう。
「――――ッ!」
リーシアと話をする気はない。
剣姫の力を暴走させたシルヴィアは、眼前に立つあらゆるものを破壊するために跳躍を開始する。一切の無駄を省いた完璧な跳躍を披露すると、瞬く間の内にリーシアとの距離を詰めていく。
「おっとっとッ!」
「――――」
「……さすがに早いね」
一瞬にしてリーシアへ接近したシルヴィアは、片手に持った蒼剣を振るっていく。
風を切って接近する蒼剣に対して、リーシアは自らの心を乱すことなく冷静に対処していく。
両手に持っていた剣でシルヴィアの蒼剣を受け止め、そして必要最低限の動きだけでぶつけられる力を受け流していく。
「よっとッ!」
「…………」
甲冑ドレスを宙に靡かせながらシルヴィアから距離を取るリーシア。
そんな動きをシルヴィアは既に想定していたのか、険しい表情に変化が現れることなくすぐさま次なる行動へと移っていく。
「剣を回収したかったんだ」
「――紅蓮の閃光ッ」
「……えっ?」
手放していた『緋剣』を回収したシルヴィアは、すぐさま次なる攻撃を仕掛けていく。
緋剣の刀身に業炎を纏わせ、それを振るうことで一筋の炎を射出する魔法剣。
慈悲なく放たれた魔法剣にリーシアは虚を突かれた様子を見せるが、すぐさま冷静さを取り戻すと自らが持つ剣に膨大な魔力を注いでいく。
「――光絶断ッ!」
リーシアの鋭い声音が響くのと同時に、彼女が振るう剣から眩い光が放たれる。
「「――――」」
二つの力が衝突すると、砂塵に轟音が轟き大地を揺るがした後に消失していく。
「はあああああああああぁぁぁぁぁッ!」
「――ッ!?」
互いが放った攻撃により粉塵が舞う中、先に行動を見せたのはシルヴィアだった。
粉塵の中から姿を現したシルヴィアは、真っ直ぐにリーシアの元へと突進する。
「さすがに手強いね」
「ちッ……」
「おっとッ!?」
再び距離を詰めての壮絶な剣戟。
互いが振るう剣の全てが命を刈り取るためのものであり、必要最低限の動きだけで互いが互いの剣を躱していく。目の前を剣の切っ先が通過していく感覚。髪の先端が切り落とされ風に舞っていく姿。その全てが二人の剣姫にとって血湧き肉躍る展開であった。
「剣の動きもさっきとは全然違う。しっかりとした信念を持った剣に変わってるね」
「…………」
「確かに剣姫としての力を引き出すことは出来ているかもしれない。でもね、シルヴィア……それは大切なものを守るための剣なのかな?」
「…………」
互いに命を賭けた剣戟を繰り広げる中で、リーシアの表情には悲しげな色が浮かぶようになっていた。自我を失い、ただ己の命を守るため、敵対する全てのものを破壊するための戦い方を披露するシルヴィアにリーシアは初代剣姫として悲しみを禁じ得なかった。
剣姫とは剣に愛され、剣と共に民を守る存在。
しかし、今のシルヴィアからはそんな剣姫としてあるべき姿を見ることは出来ない。
「正しい現代の剣姫として、私は貴方を導かなくちゃいけない」
「…………」
「――シルヴィア、目を覚ましなさい。その力は本当に大切なものを守るために使うものなんだよ」
その言葉と共にリーシアが全身に纏う気配が一変する。
全身を突き抜けていく悪寒にシルヴィアは本能的に一歩後ずさる。
「――聖なる剣輝」
それは剣姫・シルヴィアがこれまでに幾度となく使ってきた最強の剣技。
ありったけの魔力と眩い輝きを刀身に纏わせて、全てを破壊する強烈な一撃を見舞うものだった。しかし、リーシアが放つそれはシルヴィアが使うものとはレベルが違っていた。
「――――ッ!?」
シルヴィアが放つものよりも数倍は強い力を内包した剣技が容赦なく放たれる。
真なる剣姫が放つ威圧感と自分に迫ってくる眩い輝き。
現代の剣姫・シルヴィアは、その輝きの中に包み込まれてしまうのであった。
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