終末の異世界と大罪のグリモワール ~英霊は異世界で斯く戦えり~
第四章40 【帝国終結編】絶望の再会と奪還。
「どうして……どうして、あいつらが……戦ってるんだよ……」
帝国ガリアに囚われた航大とユイを奪還するため、ライガ、リエル、シルヴィア、エレスの四人はアステナ王国から長い時間を掛けることで、ようやく二人の姿を肉眼で捉えることに成功した。
しかしそれは、考えうる限り最悪の形で再会を果たしたと言わざるを得なかった。
「…………」
「そ、そんな……」
「どうしてあんなことに……」
二人の戦いを止めることすらライガたちには術がなかった。
それは、闘技場に到達した瞬間には二人の戦いに決着がついていたからである。
「――――」
帝国全土に広がっていく力の本流と、粉塵が晴れた先に広がる光景にライガたちは絶句して立ち尽くす。ありったけの力を解き放った最後の衝突。戦いの結果が闘技場の中心には存在しており、あれだけ離れていた二人の距離が零距離にまで接近していた。
「マジ、かよ……」
眼前に広がる光景。
それを見て、ライガたち全員が絶望を禁じ得ない。
ライガたちから見ても、航大とユイの二人は常に一緒に居る存在であったはずだった。どんな困難が道を塞ごうとも、航大とユイの二人は隣り合う形で存在しており、互いを助けるために全力を尽くす関係だったはずだった。
――そんな二人だったはずなのに。
ユイが突き出す腕は航大の身体を容易く貫いており、航大の四肢は力なく脱力してしまっている。背中からはユイのか細い腕が突き出ており、鮮血が彼女の白い腕をどこまでも汚し尽くしていた。
「――主様ッ!」
絶望して立ち尽くすライガたち一行の中で、最も素早く動きを見せたのがリエルだった。
彼女も航大とは関係が深い人物であり、少年のことを『主様』と呼び、彼を助けるために力を使ってきた。その表情に強い焦燥感を滲ませたリエルは、軽やかな身のこなしで闘技場の観客席を飛ぶと、今まさに命を散らそうとする主の元へと急ぐ。
「俺たちも急ぐぞッ!」
「でもッ、近づいて大丈夫なのッ!?」
「なに言ってんだよッ! あいつらは俺たちの仲間だ。もし、まだ間違った道に進もうとしてんなら、それを正してやるのが俺たちに出来ることだッ!」
リエルから遅れること数秒。
弾かれたように顔を上げたライガも飛び出していく。
ユイが正常でない可能性を考慮したシルヴィアであったが、ライガはそんな後先のことを気にした様子は見せない。
「どうしますか、シルヴィアさん?」
「――私も行く。二人を助けたいからッ!」
逡巡したのも一瞬。
シルヴィアはその表情に強い意志を灯してライガの後を追うようにして飛び出していく。
「やれやれ……やはり、貴方たちは強い絆で結ばれているようですね……」
ライガたちが飛び出していく様子を見て、エレスも小さなため息を漏らしながら駆け出していくのであった。
◆◆◆◆◆
「――ダメじゃ。治癒魔法が効かないッ!」
「おいおいッ、魔法が効かないってどういうことだよッ!」
「そんな……それじゃ、航大は助からないの……?」
「リエルさん。私もお手伝いします」
倒れ伏す航大の元へ、ライガ、リエル、シルヴィア、エレスの四人が集まっていく。リエルは必死の形相で治癒魔法を唱え続けるのだが、呼吸が浅い航大の身体には一切の変化が現れない。
右腕を航大の鮮血で汚したユイは、茫然自失といった様子でその場でへたり込んでいる。
「くッ……これは……呪いの力……」
「の、呪い……?」
「ユイから漏れ出た負の力が、主様の身体を侵食しておる。だから、治癒魔法が効かないのじゃ」
一秒。また一秒と時間が過ぎるにつれて、航大の身体から血液が失われていく。
それを止める術をリエルたちは持っておらず、このままで数分後には完全に航大の命が潰えてしまう。
――絶望。
そんな言葉が全員の脳裏に浮かび上がった瞬間だった。
『――まだ、ここで貴方を終わらせる訳にはいきません』
北方の女神・シュナが漏らした言葉。
それは航大にだけではなく、女神と同じ血を身体に通わせた少女・リエルの脳裏にも響いていた。
「……姉様?」
次の瞬間。
航大の身体が静かに凍結を始めていく。
その変化をリエルはいち早く察することができたのだが、航大の見た目には変化が現れないため、ライガ、シルヴィア、エレスの三人は気付くことがない。
「……これが、姉様の選ぶ道」
「な、なんだよリエル。どうしたんだよッ!」
「……静かにするんじゃ。姉様の声が聞こえない」
航大の意識は既にない。
しかし、彼はまだかろうじて生きている。
腹部にぽっかりと空いた穴は呪いの力によって塞ぐことが叶わず、このままでは航大は死ぬことに間違いはなかった。そんな航大の運命を女神・シュナは許すことが出来なかったようである。
自身が持つ魔力を使い、宿主である航大の身体を凍結させる。
それは現状からの回復を諦め、現状を維持する道を選ぶということ。
治癒魔法が効かない事実を、女神・シュナは理解していた。しかし彼女は航大の命を諦めてはいなかった。
『……リエル』
「……姉様」
『今、彼を助けるための力を、私たちは持っていません。それは分かりますね?』
「…………」
『彼を助けることが出来る人物。それは、バルベット大陸の西方に住まう女神だけ』
「西方の女神……?」
『彼女なら、航大を助けてくれるはずです。私の魔法で、彼はひとまずの命を繋ぎ止めることができる。ここから治癒するには、西方の女神である彼女の力が必要です』
「主様を連れて行けばいいんじゃな?」
『……お願いできる?』
今、北方の女神・シュナの言葉を聞くことができる存在。それは、宿主である航大と実の妹であるリエルだけ。
「…………」
「おい、リエルッ……航大は、航大は大丈夫なのかよッ!」
気付けば、航大の身体はその全身を凍結させていた。
触れる箇所が冷たい。命の鼓動を感じることが出来ないほどにまで、彼の身体は凍えてしまっていた。それは絶望ではない。一縷の望み、希望を掴むための措置である。
「女神・シュナの力により、主様の命はひとまず無事じゃ」
「どういうこと?」
リエルの言葉にシルヴィアが険しい表情を浮かべる。
「詳しいことは後で話す。じゃから、今は帝国から脱出するんじゃ」
「……ちゃんと話してもらうからな」
「はぁ……分かんないことだらけなんですけど……」
「しかし、リエルさんの言葉にも頷けます。ここは敵の本丸。急いで脱出しなければ、追手が来てしまいます」
重苦しい雰囲気が漂う中ではあるものの、今すぐに動かなければならないのも事実である。
「航大は俺が背負う。とりあえず、急ぐぞッ!」
その言葉に全員が頷くのだが、その中で一人、ユイだけはペタンと座り込んだ状態のまま動くことができないでいた。
「……ユイ、何してんの?」
「あ、うっ……わ、私……」
動きを見せないユイに、シルヴィアが声をかける。
「立ちなさいよ。何があったのかは知らない。けど、ユイをここに置いていくことはできない」
「で、でもッ……私、航大を……」
「ああもうッ! あんたの後悔とか懺悔とかは後でいいのッ! そんなの、後で詳しく聞かせてもらうからッ!」
「…………」
「でもねッ、それも生きてなかったら意味がないの。航大はまだ死んでない。ユイだって生きてる。とにかく今は帝国から逃げることだけを考えてッ!」
「…………」
呆然とするユイの手を掴むと、シルヴィアは強引に立たせる。
彼女がどうして航大と戦うことになったのか。
どうして彼の命を脅かさなくてはならなかったのか。
全員が彼女に聞きたいことが山のようにある。しかし、今はそれを抑えて進まなくてはならない。
「よし、全員行くぞッ――って、航大の奴めっちゃ冷たいんだけどッ!?」
「とりあえずは我慢せぇ。男じゃろ?」
「ちっくしょー、しょうがねぇなッ……それじゃ、行くぞッ!」
凍結している航大の身体を肩に担ぎ、ライガが走り出す。
それに続く形でユイ、リエル、シルヴィア、エレスの四人が続く。
航大とユイを奪還する。
その作戦は成功とは決して言えない結末を迎えようとしているのだが、それでも命があることを良しとして、ライガたちは帝国からの脱出を試みる。
その道程はまだ途中なのであった。
◆◆◆◆◆
「はッ、はあぁッ……くそ、帝国ってのは無駄に広いなッ……」
「まぁ、帝国兵士たちが邪魔してこないだけ、マシとしましょう」
闘技場を出てからしばらくの時間が経過した。大した邪魔もなく順調に帝国を出るための道を突き進むライガたち一行。
一行は帝国ガリアの第二層を疾走しており、もう少しで城下町が広がる第一層へと到達する。そこを抜ければひとまず帝国からの脱出は完了するはずだった。
「――――ッ!?」
順調に歩みを進めるライガたちは、全身を襲う強烈な存在感に目を見開く。
それは今までに感じたことのない存在感であり、瞬時に脳から警告シグナルが発せられる。
「――もうお帰りかな?」
ライガたちの前に姿を現した存在。
それこそが、圧倒的な存在感を放つ張本人であり、ライガたちが最も邂逅することを回避しなくてはならない存在であった。
「てめぇッ――総統・ガリアかッ!」
立ち止まり、忌々しげにその言葉を呟くのはライガ。
眼前に立つ巨体を誇る男。それはこの世界において、負の権化たる存在・帝国ガリア総統ガリア・グリシャバル。その表情に笑みを浮かべるガリアは、ライガたちを見下ろしながらその道を塞ぐ。
帝国ガリアの脱出。
それはこの瞬間に最大の難関をライガたちに突き付けてくるのであった。
帝国ガリアに囚われた航大とユイを奪還するため、ライガ、リエル、シルヴィア、エレスの四人はアステナ王国から長い時間を掛けることで、ようやく二人の姿を肉眼で捉えることに成功した。
しかしそれは、考えうる限り最悪の形で再会を果たしたと言わざるを得なかった。
「…………」
「そ、そんな……」
「どうしてあんなことに……」
二人の戦いを止めることすらライガたちには術がなかった。
それは、闘技場に到達した瞬間には二人の戦いに決着がついていたからである。
「――――」
帝国全土に広がっていく力の本流と、粉塵が晴れた先に広がる光景にライガたちは絶句して立ち尽くす。ありったけの力を解き放った最後の衝突。戦いの結果が闘技場の中心には存在しており、あれだけ離れていた二人の距離が零距離にまで接近していた。
「マジ、かよ……」
眼前に広がる光景。
それを見て、ライガたち全員が絶望を禁じ得ない。
ライガたちから見ても、航大とユイの二人は常に一緒に居る存在であったはずだった。どんな困難が道を塞ごうとも、航大とユイの二人は隣り合う形で存在しており、互いを助けるために全力を尽くす関係だったはずだった。
――そんな二人だったはずなのに。
ユイが突き出す腕は航大の身体を容易く貫いており、航大の四肢は力なく脱力してしまっている。背中からはユイのか細い腕が突き出ており、鮮血が彼女の白い腕をどこまでも汚し尽くしていた。
「――主様ッ!」
絶望して立ち尽くすライガたち一行の中で、最も素早く動きを見せたのがリエルだった。
彼女も航大とは関係が深い人物であり、少年のことを『主様』と呼び、彼を助けるために力を使ってきた。その表情に強い焦燥感を滲ませたリエルは、軽やかな身のこなしで闘技場の観客席を飛ぶと、今まさに命を散らそうとする主の元へと急ぐ。
「俺たちも急ぐぞッ!」
「でもッ、近づいて大丈夫なのッ!?」
「なに言ってんだよッ! あいつらは俺たちの仲間だ。もし、まだ間違った道に進もうとしてんなら、それを正してやるのが俺たちに出来ることだッ!」
リエルから遅れること数秒。
弾かれたように顔を上げたライガも飛び出していく。
ユイが正常でない可能性を考慮したシルヴィアであったが、ライガはそんな後先のことを気にした様子は見せない。
「どうしますか、シルヴィアさん?」
「――私も行く。二人を助けたいからッ!」
逡巡したのも一瞬。
シルヴィアはその表情に強い意志を灯してライガの後を追うようにして飛び出していく。
「やれやれ……やはり、貴方たちは強い絆で結ばれているようですね……」
ライガたちが飛び出していく様子を見て、エレスも小さなため息を漏らしながら駆け出していくのであった。
◆◆◆◆◆
「――ダメじゃ。治癒魔法が効かないッ!」
「おいおいッ、魔法が効かないってどういうことだよッ!」
「そんな……それじゃ、航大は助からないの……?」
「リエルさん。私もお手伝いします」
倒れ伏す航大の元へ、ライガ、リエル、シルヴィア、エレスの四人が集まっていく。リエルは必死の形相で治癒魔法を唱え続けるのだが、呼吸が浅い航大の身体には一切の変化が現れない。
右腕を航大の鮮血で汚したユイは、茫然自失といった様子でその場でへたり込んでいる。
「くッ……これは……呪いの力……」
「の、呪い……?」
「ユイから漏れ出た負の力が、主様の身体を侵食しておる。だから、治癒魔法が効かないのじゃ」
一秒。また一秒と時間が過ぎるにつれて、航大の身体から血液が失われていく。
それを止める術をリエルたちは持っておらず、このままで数分後には完全に航大の命が潰えてしまう。
――絶望。
そんな言葉が全員の脳裏に浮かび上がった瞬間だった。
『――まだ、ここで貴方を終わらせる訳にはいきません』
北方の女神・シュナが漏らした言葉。
それは航大にだけではなく、女神と同じ血を身体に通わせた少女・リエルの脳裏にも響いていた。
「……姉様?」
次の瞬間。
航大の身体が静かに凍結を始めていく。
その変化をリエルはいち早く察することができたのだが、航大の見た目には変化が現れないため、ライガ、シルヴィア、エレスの三人は気付くことがない。
「……これが、姉様の選ぶ道」
「な、なんだよリエル。どうしたんだよッ!」
「……静かにするんじゃ。姉様の声が聞こえない」
航大の意識は既にない。
しかし、彼はまだかろうじて生きている。
腹部にぽっかりと空いた穴は呪いの力によって塞ぐことが叶わず、このままでは航大は死ぬことに間違いはなかった。そんな航大の運命を女神・シュナは許すことが出来なかったようである。
自身が持つ魔力を使い、宿主である航大の身体を凍結させる。
それは現状からの回復を諦め、現状を維持する道を選ぶということ。
治癒魔法が効かない事実を、女神・シュナは理解していた。しかし彼女は航大の命を諦めてはいなかった。
『……リエル』
「……姉様」
『今、彼を助けるための力を、私たちは持っていません。それは分かりますね?』
「…………」
『彼を助けることが出来る人物。それは、バルベット大陸の西方に住まう女神だけ』
「西方の女神……?」
『彼女なら、航大を助けてくれるはずです。私の魔法で、彼はひとまずの命を繋ぎ止めることができる。ここから治癒するには、西方の女神である彼女の力が必要です』
「主様を連れて行けばいいんじゃな?」
『……お願いできる?』
今、北方の女神・シュナの言葉を聞くことができる存在。それは、宿主である航大と実の妹であるリエルだけ。
「…………」
「おい、リエルッ……航大は、航大は大丈夫なのかよッ!」
気付けば、航大の身体はその全身を凍結させていた。
触れる箇所が冷たい。命の鼓動を感じることが出来ないほどにまで、彼の身体は凍えてしまっていた。それは絶望ではない。一縷の望み、希望を掴むための措置である。
「女神・シュナの力により、主様の命はひとまず無事じゃ」
「どういうこと?」
リエルの言葉にシルヴィアが険しい表情を浮かべる。
「詳しいことは後で話す。じゃから、今は帝国から脱出するんじゃ」
「……ちゃんと話してもらうからな」
「はぁ……分かんないことだらけなんですけど……」
「しかし、リエルさんの言葉にも頷けます。ここは敵の本丸。急いで脱出しなければ、追手が来てしまいます」
重苦しい雰囲気が漂う中ではあるものの、今すぐに動かなければならないのも事実である。
「航大は俺が背負う。とりあえず、急ぐぞッ!」
その言葉に全員が頷くのだが、その中で一人、ユイだけはペタンと座り込んだ状態のまま動くことができないでいた。
「……ユイ、何してんの?」
「あ、うっ……わ、私……」
動きを見せないユイに、シルヴィアが声をかける。
「立ちなさいよ。何があったのかは知らない。けど、ユイをここに置いていくことはできない」
「で、でもッ……私、航大を……」
「ああもうッ! あんたの後悔とか懺悔とかは後でいいのッ! そんなの、後で詳しく聞かせてもらうからッ!」
「…………」
「でもねッ、それも生きてなかったら意味がないの。航大はまだ死んでない。ユイだって生きてる。とにかく今は帝国から逃げることだけを考えてッ!」
「…………」
呆然とするユイの手を掴むと、シルヴィアは強引に立たせる。
彼女がどうして航大と戦うことになったのか。
どうして彼の命を脅かさなくてはならなかったのか。
全員が彼女に聞きたいことが山のようにある。しかし、今はそれを抑えて進まなくてはならない。
「よし、全員行くぞッ――って、航大の奴めっちゃ冷たいんだけどッ!?」
「とりあえずは我慢せぇ。男じゃろ?」
「ちっくしょー、しょうがねぇなッ……それじゃ、行くぞッ!」
凍結している航大の身体を肩に担ぎ、ライガが走り出す。
それに続く形でユイ、リエル、シルヴィア、エレスの四人が続く。
航大とユイを奪還する。
その作戦は成功とは決して言えない結末を迎えようとしているのだが、それでも命があることを良しとして、ライガたちは帝国からの脱出を試みる。
その道程はまだ途中なのであった。
◆◆◆◆◆
「はッ、はあぁッ……くそ、帝国ってのは無駄に広いなッ……」
「まぁ、帝国兵士たちが邪魔してこないだけ、マシとしましょう」
闘技場を出てからしばらくの時間が経過した。大した邪魔もなく順調に帝国を出るための道を突き進むライガたち一行。
一行は帝国ガリアの第二層を疾走しており、もう少しで城下町が広がる第一層へと到達する。そこを抜ければひとまず帝国からの脱出は完了するはずだった。
「――――ッ!?」
順調に歩みを進めるライガたちは、全身を襲う強烈な存在感に目を見開く。
それは今までに感じたことのない存在感であり、瞬時に脳から警告シグナルが発せられる。
「――もうお帰りかな?」
ライガたちの前に姿を現した存在。
それこそが、圧倒的な存在感を放つ張本人であり、ライガたちが最も邂逅することを回避しなくてはならない存在であった。
「てめぇッ――総統・ガリアかッ!」
立ち止まり、忌々しげにその言葉を呟くのはライガ。
眼前に立つ巨体を誇る男。それはこの世界において、負の権化たる存在・帝国ガリア総統ガリア・グリシャバル。その表情に笑みを浮かべるガリアは、ライガたちを見下ろしながらその道を塞ぐ。
帝国ガリアの脱出。
それはこの瞬間に最大の難関をライガたちに突き付けてくるのであった。
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