闇夜の世界と消滅者

三浦涼桜

十三話 あくまで可能性

「戀君が彼女を殺すんだよ」

 そう放たれたティナの言葉にイルディーナは絶句する。
「殺す、ね………随分と物騒だな」
「仕方ないじゃない。なにせこの学園のトップである生徒会長がそんな怪しげな罠に引っかかったとなったら、この学園はおろか八柱聖域サンクチュアリを担うほかの学園にも迷惑がかかる。だからそのことをなかったことにするために殺すしかない」

「なるほど。面子を立てるために生徒会長には犠牲になってもらう。こういうことか?」
「概ね間違いじゃないね」
「そ、そんなのあんまりです!」
 そうイルディーナが叫ぶ。

「ただ学園のためを思って行動するのに、殺されるってどういうことですか!?」
「イルディーナさん。気持ちはわかるけど少し落ちついて。別に必ず殺すとは言ってないから」
「…………?」

 イルディーナは訝しげにティナを見やる。
「あくまで相手の術中にはまったらという可能性だから。それに戀君がいるし、たとえ何かあっても戀君が何とかしてくれるよ」
 いや、そんなに期待されても困るんだけど。
 そう言いたいのはやまやだが、戀は心の中にしまい込んだ。

「じゃあ決まりだね。戀はイルディーナさんと一緒に行動すること。学園に通いながらだから行動するのは夜になっちゃうけど」
「別にかまわない。それじゃあ、今度こそ失礼するぜ」
 そう言って戀は校長室を後にした。

 ………………………………。
 ティナが思い出したように呟いた。
「そういえば、戀君って宿どうするんだろ?」
「あ………………」
イルディーナの気の抜けた声が校長室に木霊した。

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