闇夜の世界と消滅者
十話 剣技決闘(デュエル)開始! 後編
 イルディーナが魔法を唱えた直後、圧倒的な質量を持つ黒い球体が出現した。
世界が反転する。
そう表現するしかないほど、戀は危機を感じていた。
そして戀はこの現象に見覚えがあった。それもかなり前に見た光景だ。
(あいつがミルティーナ・ベルファの娘って聞いた時点で嫌な予感はしていたんだ………)
戀はイルディーナの母であるミルティーナとは面識があった。だがそれは知り合いは知り合いでも友人としてではなく…………
「まさかあの時にくらった魔法にもう一度出くわすなんて考えないだろ普通は!?」
敵同士だった。
二年前のある戦争で、戀はとある女騎士と戦いを挑んだ。
その時に受けた魔法が、まさしくイルディーナが発動した魔法と合致しているのだ。
(あの魔法は上級魔法。破滅魔法と大差ないだろうがっ)
もしあの魔法がこのまま発動場合、おそらくだがこの学園はかけら一つ残さずに消え去ることだろう。
「アレを使うのは躊躇いがあるが………仕方がねぇ。少し派手にやるか」
そう言って戀は刀を構え直す。
その姿を課実況席から見ていたティナが目を見開き何かを叫ぶ。
だがそんなことはお構いなしに、戀は放つ。
「三觜島一刀流修羅ノ型ーー【波久礼】」
一突き。
ただ刀を前に突き出す、簡単な動作。
しかし、その突きに込めた全体重が累乗し、速度は軽く音速を超える。
たった一突きではあるが、すべての運動エネルギーを一転に集中させた一撃は全てを破壊し、貫通する。それが音速を超えるほどの速度であるならば尚更だ。
貫通するのは物質だけではない。魔法も通用する。もちろん上級魔法の魔法ともなれば、魔法を破壊するのは容易ではない。
だが戀は、普通の人間ではない。
『殺鬼』の切っ先が黒い球体に触れた瞬間ーー消え失せた。
その場を静寂が襲う。
観客席はおろか、あのティナですら開いた口がふさがらにようだ。
やがて言葉を発したのは、やはりイルディーナだ。
「なんで…………いったいどうやって…………?」
掠れた声でイルディーナは問う。
「今のは、あんたの魔法に俺の魔法をぶつけて相殺したのさ」
「魔法相殺…………」
魔法が主力であるこの世界おいて、魔法相殺という技術は別段珍しいことではない。それこそ授業でも習うほど、基本的な技術である。
だがそれはあくまで低級魔法
上級魔法はおろか中級魔法ですら魔力相殺することは難しいというのに、彼はそれを成し遂げたというのだ。
到底信じられるものではない。
だが信じなければ今の光景が説明できない。
「俺はただの学生さ………」
戀はそう言いながら、倒れた。
「おおぉぉっと!! 三觜島選手、上級魔法を相殺したかと思いきや、魔力切れで倒れたああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「…………上級魔法を相殺したからね。かなりの魔力を消費したと思うよ」
そう言うティナの顔は険しい。だが天塚はそんなことには気づかず実況を続ける。
「しかし三觜島選手。エリクサーは所持していないのでしょうか?」
魔導士にとって、魔力が底を尽きるというのは、死に直接繋がるものである。
だから学園などでは魔力が尽きることのないよう、エリクサー(魔力を補充する液体)を常に携帯するよう促している。ちなみに定価は256円である。安い。
「魔力が底をついちまったようだ…………悔しいが今回はあんたの勝ちだ」
「おおぉぉぉと!? 三觜島選手、魔力が尽きたことにより、試合続行は不可能と申し出たあぁぁあ!! ここで試合終了! 勝者はベルクリオ学園生徒会長であるイルディーナ・ベルファ選手だぁぁあ!!」
オオオオオオオォォォォォ!! という観客たちの歓声に包まれ周りに笑顔を振り撒くイルディーナ。そして視線を目の前に戻すと、いつの間にか戀の姿が消えていた。
「あれ!? 三觜島選手の姿が見当たらない! これはどういった……って学園長も!? いったいどこに行った~!?」
実況席から天塚の声が響き渡った
世界が反転する。
そう表現するしかないほど、戀は危機を感じていた。
そして戀はこの現象に見覚えがあった。それもかなり前に見た光景だ。
(あいつがミルティーナ・ベルファの娘って聞いた時点で嫌な予感はしていたんだ………)
戀はイルディーナの母であるミルティーナとは面識があった。だがそれは知り合いは知り合いでも友人としてではなく…………
「まさかあの時にくらった魔法にもう一度出くわすなんて考えないだろ普通は!?」
敵同士だった。
二年前のある戦争で、戀はとある女騎士と戦いを挑んだ。
その時に受けた魔法が、まさしくイルディーナが発動した魔法と合致しているのだ。
(あの魔法は上級魔法。破滅魔法と大差ないだろうがっ)
もしあの魔法がこのまま発動場合、おそらくだがこの学園はかけら一つ残さずに消え去ることだろう。
「アレを使うのは躊躇いがあるが………仕方がねぇ。少し派手にやるか」
そう言って戀は刀を構え直す。
その姿を課実況席から見ていたティナが目を見開き何かを叫ぶ。
だがそんなことはお構いなしに、戀は放つ。
「三觜島一刀流修羅ノ型ーー【波久礼】」
一突き。
ただ刀を前に突き出す、簡単な動作。
しかし、その突きに込めた全体重が累乗し、速度は軽く音速を超える。
たった一突きではあるが、すべての運動エネルギーを一転に集中させた一撃は全てを破壊し、貫通する。それが音速を超えるほどの速度であるならば尚更だ。
貫通するのは物質だけではない。魔法も通用する。もちろん上級魔法の魔法ともなれば、魔法を破壊するのは容易ではない。
だが戀は、普通の人間ではない。
『殺鬼』の切っ先が黒い球体に触れた瞬間ーー消え失せた。
その場を静寂が襲う。
観客席はおろか、あのティナですら開いた口がふさがらにようだ。
やがて言葉を発したのは、やはりイルディーナだ。
「なんで…………いったいどうやって…………?」
掠れた声でイルディーナは問う。
「今のは、あんたの魔法に俺の魔法をぶつけて相殺したのさ」
「魔法相殺…………」
魔法が主力であるこの世界おいて、魔法相殺という技術は別段珍しいことではない。それこそ授業でも習うほど、基本的な技術である。
だがそれはあくまで低級魔法
上級魔法はおろか中級魔法ですら魔力相殺することは難しいというのに、彼はそれを成し遂げたというのだ。
到底信じられるものではない。
だが信じなければ今の光景が説明できない。
「俺はただの学生さ………」
戀はそう言いながら、倒れた。
「おおぉぉっと!! 三觜島選手、上級魔法を相殺したかと思いきや、魔力切れで倒れたああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「…………上級魔法を相殺したからね。かなりの魔力を消費したと思うよ」
そう言うティナの顔は険しい。だが天塚はそんなことには気づかず実況を続ける。
「しかし三觜島選手。エリクサーは所持していないのでしょうか?」
魔導士にとって、魔力が底を尽きるというのは、死に直接繋がるものである。
だから学園などでは魔力が尽きることのないよう、エリクサー(魔力を補充する液体)を常に携帯するよう促している。ちなみに定価は256円である。安い。
「魔力が底をついちまったようだ…………悔しいが今回はあんたの勝ちだ」
「おおぉぉぉと!? 三觜島選手、魔力が尽きたことにより、試合続行は不可能と申し出たあぁぁあ!! ここで試合終了! 勝者はベルクリオ学園生徒会長であるイルディーナ・ベルファ選手だぁぁあ!!」
オオオオオオオォォォォォ!! という観客たちの歓声に包まれ周りに笑顔を振り撒くイルディーナ。そして視線を目の前に戻すと、いつの間にか戀の姿が消えていた。
「あれ!? 三觜島選手の姿が見当たらない! これはどういった……って学園長も!? いったいどこに行った~!?」
実況席から天塚の声が響き渡った
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