二つの異世界で努力無双 ~いつの間にかハーレム闇魔法使いに成り上がってました~

魔法少女どま子

心の温かさを

 彼女がここまで話してくれているのだ。俺も心に決め、腹の内を吐露した。

「……前にも話したけど、向こうの世界では俺もいじめられっ子でな。特に女と関わるのが怖かった。いまはすこしは立ち直れたが……それでも時々怖くなる。人と話すことが」

 スクールカースト最底辺に位置する俺に、いじめっ子たちは容赦なかった。次々と「きもい」「死ね」などの罵詈雑言を浴びせたり、俺を化け物扱いしたり……

 登校拒否したくなる日も正直あった。それでも頑張って学校に足を運んだ。

 だが、いじめっ子はやはり容赦ない。胸の痛みを抑えてまで登校した俺に対し、またも「きもい」「臭い」……

 そんな奴らに復讐心が芽生えないはずがない。坂巻なぞは本当にぶん殴ってやりたかった。

 心の傷はなかなか癒えない。坂巻に「ごめん」と謝られたとしても、その人間不信は治りきらないだろう。そしてたぶん、彩坂もそんな状態なのだ。

「おまえの気持ちは俺が知ってる。その傷を治そうと頑張ってるのも知ってる」

「……うん」

「一気に治そうとしなくていい。俺だってその辛さはわかるからな。……だから、一緒に乗り越えていこうぜ」

 その言葉は。
 いままで深く傷ついてきた彩坂の心を、ほんのすこし温めることができたようだ。

 彩坂は目元に薄く涙を浮かべはじめた。

 俺はそんな彼女を丸ごと守ってやるように、ぎゅっと包み込んだ。彼女は俺の胸のなかでわあわあ泣き出した。

 その頭を優しく撫でながら、俺は優しい声音で言った。

「……こっちを、向いてくれ」

「うん……」 

 ゆっくりと顔を上げた恋人に。

 俺は唇を重ねた。

 突然のことではあったが、彼女が嫌がる素振りはなかった。
 俺は彼女をさらに強く抱きしめ、再び、さっきよりも濃密なキスをした。


     ★


 薄暗い部屋のなかで、ベッドランプだけがほんのり灯っていた。

 俺の横ですやすやと寝息をたてている彩坂育美の頭を、柔らかく撫でてみる。

「んにゃ?」

 うっすらと目を開けた育美が、甘えたような声を出す。

「がおー」
「にゃにゃにゃ!」
「がおがおー」

 アホくさいやり取りのあと、俺は頭を掻きながら謝った。

「すまんな、起きちまったか」 

「……ううん。このまま寝ると、なんかもったいない気がするし」 

 俺はふっと笑った。

「たしかにな……寝ないと明日に響くけど」

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