二つの異世界で努力無双 ~いつの間にかハーレム闇魔法使いに成り上がってました~

魔法少女どま子

現実

「あー、えっと」 

 後頭部をかきながら俺はぼそっと呟く。

 これで交際成立。
 晴れて俺たちはカップルになったわけだ。

 理想の恋人。
 かつて俺が欲し、そして諦めた、あまりにも届かなかった存在。そんな女性がいま、俺の目の前にいる。

 それが信じられなくて、だからなにも言えなくて。

 彩坂も同じ状態に陥っているのだろうか。同じくうつむいたまま、こちらを見ようともしない。

 けれども、俺はこの沈黙が嫌いではなかった。
 静かではあるが、心地のよい雰囲気。こんな空気を味わうのなんて初めてだった。

 だが。
 このまま感傷に浸ることはできそうになかった。

 俺はさっと周囲を見回した。

 ざっと三人というところだろうか。俺に気づかれないように気配を消しているつもりだろうが、たしかに微少な魔力を感じる。

「隠れてないで出てきたらどうだ」

 その発言に、まず彩坂が目を丸くした。続いて、「気づかれていたか」という男の声。

 もう隠れる必要なしと判断したのだろう。廊下から、まずは二人の生徒が姿を現した。当然ながら、頭の上にステータスが浮かんでいる。

「あ、あの人たちって……」

 彩坂がかすれた声を発する。

「リベリオン。わかるだろ?」

「そ、そんな……」

 顔を蒼白にして一歩引く彩坂。
 そんな彼女に向けて、リベリオンの構成員は歪んだ目を向けた。

「彩坂、これはどういうことだ。古山さんはそいつを殺せと言っていたはずだ。……まさか、そいつの顔に誑かされたんじゃあるまいな」

「ち、違う!」

 彩坂は怯えながらも、ここは毅然と反論した。

「吉岡くんは悪い人じゃないよ。だからもうやめて!」

「はっ。笑わせるなよ、リア充が」

「ど、どうして……」

 聞き入れてくれない構成員に対し、彩坂の表情が絶望のいろに染まる。

「そういえば、吉岡。さっきおまえの肉便器も殺してきたよ」

「に、にく……?」

 わけがわからず戸惑っていると、構成員はじれったそうに顔を歪めた。

「あいつだよ。えーっと、高城とか言ったか」

「な……!」

 すさまじい衝撃が頭からつま先までを貫いた。

 瞬間。
 さっきまで隠れていたらしい三人目の構成員が、ふいに廊下から姿を現した。

 その構成員はニヤニヤ笑いを浮かべながら、右手に掴んでいたものを放り出した。


《 高城絵美 レベル2

 HP 0/54 MP 31/60
 MA 1230 MA 210》


 HP……0。

「こ、これは……」
 俺は数秒間なにも言えず、ただ立ち尽くすことしかできなかった。

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