ロシアンルーレットで異世界へ行ったら頭脳派の魔法使いになっていた件【三部作】
17-145.ミサンガみたいだな
「では、パーティー登録しますね」
ラルルはカウンターの下から分厚い台帳を取り出した。カウンターの上で、ぺらぺらと羊皮紙をめくる。びっしりと書かれた文字の列を上から順に指で辿っていく。横書きの文字列に沿った羊皮紙の端には穴が開けられ、色の付いた紐が括り付けられている。先程ラルルが持ってきた組紐と同じものだろうか。異なる色の紐で編まれたそれは、羊皮紙をカラフルに彩っていた。しばらくして、ラルルはきらきらした瞳とヒロに向けた。
「はい。パーティ名の被りはないようですね。では『アラニス・エマ』で登録いたします。チーム名は王国各地にある冒険者ギルドに通達されます。大体、二蓮月くらい掛かります。名前がまだ届いていないギルドでは、パーティとしての依頼は受けられませんので御注意ください。それまでは、此処のギルドでの依頼をお勧めします。登録名の変更は何時でも可能ですけど、最初に登録したギルドでしか受付できませんので、此処のギルドでお願いしますね」
ラルルは笑顔を見せながら、先程カウンターに置いた組紐を勧める。
「こちらの中から、お好きな紐をお選びください」
「何だい? これは」
「ギルドに登録したパーティには、必ずこの紐を所持いただく決まりになっています。ギルドに登録しているパーティなのかどうかの身分証明になりますので、無くさないよう御注意願います。殆どの方が手首に巻いたり、首に掛けていたりしますね。紐は色の組み合わせが全部違ってまして、紐を見ればどのパーティか分かるようになっています。生憎、今ご用意できるのは、これだけしかありませんけど、この中から選んでいただけますか?」
組み紐は三色の紐を編んだものだ。よく見ると編み方も微妙に違う。長さは一メートル半くらいあった。
(ミサンガみたいだな……)
ヒロは、その中から青、水色、白で編んだ組紐を手に取った。特に理由はない。強いていえば、元居た世界での地元のサッカーチームを連想したからというくらいか。
「これにするよ」
ヒロは後ろを振り返って、パーティの仲間に組み紐を見せた。皆、うんと頷いて承諾の意志を示す。特に異論はない。決まりだ。
「はい。では少しお預かりします」
ラルルはヒロが選んだ組紐を受け取ると、小さなナイフで指一本くらいの長さを切り取った。次いで慎重な手付きで、羊皮紙の端に穴を開け、そこに切り取った組紐を通して結んだ。最後に今通した組み紐の横に、「アラニス・エマ」と書き込んだ。
 
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