ロシアンルーレットで異世界へ行ったら頭脳派の魔法使いになっていた件【三部作】
16-131.内容はどこまで分かっているんだ?
ヒロ達三人は、エルテから彼女の生い立ちと今の状況について一通りの説明を受けた。ヒロには二度目であったが、初めて聞くリムはそれなりに興味をそそられたようだ。エルテの言葉にふんふんと相槌を打っている。一方、ソラリスは表情を変えずに聞いているだけで、一言も口を挟まない。
エルテの説明が一区切りついた後、ヒロが口を開いた。
「その噂の石板なんだが、その内容はどこまで分かっているんだ?」
エルテから謎の石板だと聞かされてはいたが、全く手掛かりがない代物なのか。ヒロは茶を一口含むと後、カップをソーサーに戻した。
エルテは目を伏せて小さく首を振る。
「申し訳ありません。石板の秘密はまだ解読されていないのです。石板に文字のような文様が刻まれているのですけれど、誰も読めるものがいなくて……」
ヒロの質問にエルテは困ったような表情で、そっと自分の右の耳朶に手をやった。
「読めない? 伝説のレーベ王の秘宝というのなら、その当時の文字で書かれているんじゃないのか」
ヒロは視線をシャロームに向けた。
「シャローム、当時の文字は古語として今に伝わっているんだろう? 君はアラニスの酒場で、うちのリムの字を古語だと言っていたじゃないか」
「ええ、確かにそう言いました。私もその石板の写しを見ています。けれども、石板に刻まれた文字は、私が知っている古語とは似ても似つかぬものです。大分昔になりますが、石板の写しを内密に知り合いの学者に見て貰ったことがありますが、残念ながら、誰一人読めるものはいませんでした。こんな文字は見たことないとね」
シャロームは小さく溜息をつく。
ヒロの心にやはりガセネタではないのかという思いが掠める。ヒロの顔色が僅かに曇った。
「ヒロさんには前にもお話しましたけれど、二つの石板のうち一つはフォーの迷宮から見つかったものです。そこに記された文様は、ラクシス家に伝わる石板と同じでした。父は、フォーの迷宮に行けば何か分かるに違いないと、大司教様に伝えていたそうです」
エルテは指先で耳朶を触りながら目を伏せる。彼女自身も確証は持てていないようだ。だが、彼女にしてみれば、父の名誉を回復し、ウラクト家を再興するために残された最後の手段だ。リスクを侵しても、やらなければならないものなのだろう。
――ここから先は石板を見ないと話が進まない。
ヒロはそう直感した。
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