転生先は現人神の女神様

リアフィス

閑話10 お悩み解決、女神様!

とある教会にて、悩みを抱える聖職者の女性がいた。

『私にはお慕いしている方がいます……ですが、私は聖職者。女神様はあまり好まれないとか……』

とか言う悩みであった。
本来なら笑ってスルーする所だが、本人が余りにも深刻に考えているようなので、暇潰しも兼ねて相手する事にした。少々気になる事もある事だし。


教会へと一柱が舞い降りる。

「え……」
「笑い飛ばしたいところだが、余りにも深刻そうだったのでな」
「め……女神様!?」
「で、何故そんな悩んでいる? 妾としてはそんなつもりは一切無いのだが?」
「えっと……その……」
「神眼でバレるのだから、無駄だぞ? ……聖女一行に法国が原因か」
「うぅ……」

神眼で思考や過去が見える。
例え言いづらかろうが、神々にはバレるのだ。
ただ過去を遡り続けるのは面倒なので、実際に話して思考を誘導する。
すると、すぐに分かるわけだ。

「ふむ……。まあ結論から言えば、好きにすると良い。子供作らないと種として詰むぞ? ……ジェシカやエブリン、それと法国はどちらも極端な例だからなぁ」
「よろしいのですか……?」
「構わん。誰が誰を好きになろうが妾は口出さんよ。眷属達やフィーナになると話は別だが……まあ、それは置いておこう」

これではい終わり……としたいのだが、そうもいかないな?

「ジェシカとエブリンは確かに生前未婚だった。だがこれはあいつらが決めた事。妾は一切何も言っていないぞ」
「そうだったのですか……」
「所謂一般的な女性が考える幸せ。『素敵な人とくっついて、子供を授かり、子育てして……』とかなんだろうが、奴らがそんな事に見向きもしなかっただけだ」

いや、ジェシカとエブリンにとって、素敵な人は確かにいたんだな。
それが異性ではなく、同性だっただけだろう。
ジェシカにとってはエブリンが。エブリンにとってはジェシカが、確かに素敵な人だった。ただそれが『愛』や『恋』ではなかったと言うだけだ。
確実に2人は支え合い、お互いに影響しあって生涯を終えた。これは間違いない。

「2人は実に我が儘に、生前を過ごしたぞ? あれほど我が儘を通せた者はそうはいまい……王とて無理じゃないか?」
「え……お二人が我が儘……ですか?」
「そうだぞ。奴らは生涯、自分がやりたいことをやって死んだからな、うん。まあ、それを許可したのも妾だが」

ジェシカとエブリンの2人は元々法国の人間だ。
だが自国のやり方が気に入らず、家と縁を切り飛び出し旅を始めた。
そして治療しながら街や村を周り、いつしか聖女一行と呼ばれるようになった。
『聖女』などという使えるコマを法国が放っておくわけもなく。
それでも尚我が儘に、自分達のやりたい事だけをやり、処分されそうになった所で女神……シュテルに拾われた。
その後はシュテルの所でのんびりしつつ、アトランティス帝国ができてからはそこでシュテルのお世話、フィーナの相手、治療院で治療……と。

「やりたい事だけやってたな。休めって言うと、フィーナと遊び始めるんだあいつらは。基本自分の好きな事しかしてないから、疲れを知らん。いや、むしろその疲れこそが奴らにとっては幸せだったのかも知れん。やりたい事をやった、充実していたからこその『疲れ』だな。後は布団に潜り込んで熟睡だ」

別に2人の我が儘は悪いことではない……むしろ世間的には良いことだ。
貧しい村々を周り、お金または2人分の少ない食材を貰い、治療して次の村へ。
だからこそ聖女と呼ばれ、妾が拾った後も特に何も言わず、好きにさせていた。
奴らの食べる食材はこっちで用意した物だ。食材の買い出しなんか行かないぞあいつら。羨ましいぐらいに自分達のやりたい事を、生涯やっていたわけだ。
女神という特大のバックアップを付けて……な。
ただ幸運だった訳ではない。奴らの行動の結果、妾が奴らを拾ったのだから、2人の行動の賜物だろう。

「ある意味幸せで、ある意味不幸……それがあの2人だ」
「幸せで……不幸?」
「そうだな。あいつらはお前のように『恋』などは知らん。世間一般的に言われる女の幸せとは無縁だ。だが、他の者には不可能と言えるほど、己を貫き我が儘に好きな事だけをして死んだ。奴らの生き方は極端だったんだ」
「…………」
「だが2人に生前を問えば、それはもう幸せだったと答えるだろう。人は我が儘な生き物だ。そして、幸せかどうかなど決めるのは本人だけだ。世間一般から見ればどうであっても、奴ら2人からすれば十分に幸せだった」

他者の言葉を気にしすぎる必要はない。
結局は自分がどうなのか……それが全てだ。
他者に全く迷惑をかけないと言うのはまず無理だ。迷惑をかけてかけられ、それでも笑って生きられる奴らを大切にしろ。
人類全員に好かれるなどとうてい無理な話だ。あの聖女一行とて、邪魔と言う理由から殺されかけているのだからな。

「お前の人生、決めるのはお前だ。そこに我々神々を気にする必要はない。お前が恋をして、好きな者とくっついたならそれはそれで良しだ。聖職者とは、神々に祈りを捧げる者達……そこに男女も、既婚未婚も、年齢も関係ない。お前がそう選んだのなら、その選択を尊重しよう」
「女神様……」
「そもそも、妾も女神になる前は人で、既婚者だったからな」
「え……えぇ!?」
アトランティス帝国うちでは結構有名な話なんだが、この辺りでは知らないのか? いや、そもそも知ってたらそんな悩みはしないか。ハハハハ」
「な……なんと……」
「ところで、問題は法国の方だ。その考えはどっから来た?」
「え? えっと……子供の頃に読んだ女神様のお話……でしょうか?」
「法国に関しての話はある意味、人間達への戒めの意味もあるから、結構バッチリ書いてあるはずなのだが……そうか、子供用か」

あの件に関しては、人によって認識が違うのは地味に問題があるのだが……数世代も変わればそんなものか?
まあ、それはともかく。

「教会なら原本のコピーがあるだろう? 子供用じゃないしっかり書かれた物が。今すぐにでも読み直してこい。法国に関してはそれで解決するだろ」
「は、はい! あの、ありがとうございました」
「うむ。では妾は戻る」

いつもの場所へと転移して帰る。
残された女性はお祈りした後、言われた通り原本のコピーを読みに行き、悩みが解決した。
無事くっつく事ができるかは……別の話だが。

コメント

  • ノベルバユーザー320547

    内容も具体的で分かりやすくて面白かったです!!!

    0
  • 音街 麟

    あぁ。読み終わっちゃった。すっっっっごく面白かった‼︎面白い作品をありがとう!

    0
  • Admiral

    ものすごく面白かった!気づいたら、18時間経ってたくらいにはね!最高だね!じゃ、2週目にいってきまーす。

    4
  • お砂糖鈴御

    とっても楽しかったです。有難うございました

    1
  • 破壊神フラン

    すぅっっっっっっっごく面白かったです!

    5
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