転生先は現人神の女神様

リアフィス

57 新年祭

ファーサイス新年祭。
それは言葉通りの、ファーサイスで新年を祝う祭りである。
ふとした拍子に亡くなってしまう事がある世界だからこそ、前世より遥かに重要で、無事に新年を迎えられた事に感謝をし、パーッと祝うお祭り。
お城では他国の王族までも集まって、最大規模のパーティーが行われる。

中央にある3大国の王族は勿論、西にあるダンサウェスト小国、更に東側の小国から来る者もいる。
今回そこに新たな王が参加する事になる。
聖域の森と言われ、未開の地だった4大国のど真ん中。
そこが開拓され人が住み始め国となった、アトランティス帝国。
そこの女帝がやってくる。

とは言えだ。
既に収穫祭の時に姿は見ている。ただ、どういった人物かと言う情報が少ない。
できたてとは言え一国のトップ。性格は知っておきたいだろう。
場所が場所の為、4大国全ての隣国となる訳だから無視はできまい。
良き隣人となるか、はたまた敵となるのか、見極めねばなるまい。

気にしている大国はテクノスとマーストの2国だけだが。
ファーサイスは言わずもがな。アエストは世話になったばかりだ。
テクノスとマーストはあくまで『ギルド』に用があっただけで、国に用があったわけではない為、特に接触はしていない。
ルナフェリアとしても正直、『面倒だから放っておいてくれない?』な状態だ。

大国より小国の方が面倒である。
できたての国で、4大国の中央、ダンジョン付き。狙い目だろう?
という訳で、警戒するべきは小国からのちょっかいだろう。


「会場の警備に彼らも貸してあげる」
「ふむ、それは助かるが良いのか?」
「私の回りに11人いてもしょうがないでしょう。ブリュンヒルデは付いてるでしょうし。護衛に関してはそっちに合わせた方が良いでしょう」
「それではちょっと話してきます」

騎士達10人を貸し出し。
私の側にはブリュンヒルデのみだが、シロニャンが頭にいるし、天井スレスレをエマニュエルが飛んでいたりするからな。
ホバリング飛行するフクロウである。航空力学? 知らない子ですね。翼と魔法が合わさり飛行能力は尋常じゃない。まあ、ホバリングは魔法で浮いてるだけだが。
たまにパタパタするだけで、翼は広げっぱだ。


「ベルンハルト陛下、お世話になります。そしてルナフェリア陛下、先日はお世話になりました」
「ん、ああ。パトリシオ陛下か、国はどうだと聞くのもあれか……?」
「御機嫌よう。……忙しいのは分かりきってる事だものね」
「忙しいのは確かですが、新年祭は参加してこいと言われまして……」

アエスト王国新王、パトリシオ。
自国の事で忙しいのは確かだが、ファーサイスの新年祭は他国の王族も集まる。
つまり、改めて顔合わせをして来いということだ。
王太子から正式に王となった事を、新年祭を利用して知らせるのだろう。


中央4大国の王同士はそこそこ仲がいい。
国は違えど同じ立場の人間だ。色々話が合うのだ。
国が荒れれば他国にも少なからず影響は出る。大国なら尚更だ。
『王として』と言うより『個人として』軽く相談したりする程度の仲である。
国としてそれなりに長い歴史があるのも関係あるだろう。昔からあるから付き合いも長いのだ。
ただ、他の国はそうも行かない。特に東側の小国同士は仲悪いのが多い。

そして大国の王だからこそ、その目は厳しい。この仲間に入れるかどうかはその王次第だ。仲間に入れる才覚があればこれほど頼りになる仲間はそうはいまい。
まあ、それに甘えるようではそもそも仲間に入れないだろうが。


軽めの感じで挨拶していたが、急に真面目な顔になるパトリシオ陛下。

「後程お話があるのですが、お時間はありますか?」
「ふむ……問題ないが」
「できれば2大国と……ルナフェリア陛下も聞いていただけると助かるのですが」
「ふむ、学園に関してね。分かったわ」
「学園か……重要だな。こちらからテクノスとマーストに声をかけておこう」
「お願いします。改めて先日の事を謝っておきたいとも思ってますので……」
「ディートリンデ、場所などの調整を任せるぞ」
「畏まりました」
「さて、一先ずパーティーだ。難しい話はその後だな」
「そうねー」

学園……か、どうしたものかね。
アエストはそれなりの被害が出ている。学園の修理に回す資金の問題。更に今回の事件もあり信用が怪しい。とは言え、学園を無くすと言うのも……と言うことで相談がしたい様だ。

……今あるのは経済法科、武闘、魔法の3学園だったな。
作ろうかなーとも思ったが、アエストにあるなら良いかと思ってた訳で。
無くなるなら作るかな?
ま、現状部外者だし4大国の話し合い次第か。
そんなこんなを片隅で思考しつつ会場へと向かう。


他国の王家が会場へ入っていくのを見送りながら準備をする。
準備とは言っても気持ちを切り替えるぐらいだが。

「さて、大体前回と同じでいいでしょう」
「「う?」」
「ああ、グラースとトネールはまだいなかったわね。ヴルカン達の真似をすればいいわ」

グラースとトネールはヴルカンを見て、見られたヴルカンはふふんと胸を張りふんぞり返っていた。
それを見たグラースとトネールもふふんと胸を張りふんぞり返った。
更にシルヴェストルも加わり4人がふんぞり返っていた。

……可愛いけど、そうじゃないんだよなぁ。
達とは言ったけど、ヴルカンの名前を出したのは失敗だったな……。
リュミエールとかグノームと言うべきだったか。

「……リュミエール」
「……はい」

さて、グラースとトネールはリュミエールに任せて……。

私は魔力を前回と同じぐらい放出する。
間違えちゃいけないのが神力じゃなくて魔力だ。私神ですって激しい自己主張することになるからな。

「アトランティス帝国、建国の女帝ルナフェリア様のおなり!」

うむ、では行こうか。


見た目は小さいけれど、強大な力を持った人ならざる者達。
同じ空間にいるだけでその場の空気が変わる。様々な意味で。
精霊達の影響により周囲の空気がこの世界の生物に適した物へと瞬時に浄化される。建物の中などの密閉空間でこういった急激な変化は違いがすぐに分かるだろう。
初期からいる原初の精霊6体に加え、新属性2種計8体の最高位精霊達の出現。
更に月神による精霊達への加護が加わり効果は劇的だ。

一応今回は2度目の事なので……初回ほどの驚きは無い。
とは言え、1度目と同じように静かにルナフェリア一行を目で追っていった。
これは慣れ云々関係なく、存在の違いだからどうしようもない。本能みたいなものだ。普段とは違いすぎる為、慣れるのも難しいだろう。
眷属となった騎士達は平然としているが。


そして前回と同じく、ファーサイス国王の挨拶がさくっと終わり、終わった瞬間に精霊達が料理に群がった。
具体的に言うとヴァルカン、シルヴェストル、グラース、トネールだ。
まあ、常にあの状態では他の者達がパーティーどころでは無いだろうから、気を遣ったと言うことにしておくべきだろうか。
ルナフェリアもさっさと魔力を引っ込め、注がれたお酒を飲んでいる。

今回は王族も立食寄りだ。
会場の端の方に料理がズラッと並んでおり、王族側の方には椅子も置かれている。
ルナフェリア一行はその椅子に直行し、陣取っていた。
そうだろうなーと思っていたブリュンヒルデもこれには苦笑していた。

貴族にとってパーティーとは戦場である。どんなパーティーでもだ。
それこそ身内の肉親のみとかの集まりじゃないと戦場と変わらないだろう。
少しでも上の、上位貴族とお近づきになる。
新たな繋がりを得る為に会話をする。
更に親睦を深めるためなどなどだ。

貴族には貴族の戦いがある。貴族に必要なのは情報だ。
その情報を得るため男は職場で仕事関係の情報を、女はお茶会で女同士のパーティーで情報を集め、子供は子供同士の交流をし、帰ったら家族と世間話で情報交換。
パーティーは家族で参加し、普段交流のない者と世間話をしてみたり、改めて知り合いとも話してみたり。

王族と言えどそれは同じではあるのだが、これである。
真っ先に突っ込んでいった精霊達を追っていった感じではあるのだが、前回も考えるとなんとも言えないだろう。
そこへファーサイスの国王が先陣切ってやってくる。

「相変わらず食ってるな……」
「人類にあるとされる三大欲求と言われるものは知っている?」
「食欲、睡眠欲、性欲……だったか?」
「私が満たせるのは食欲だけである。……しかもこれも満腹と言う感覚はない。『口にして美味しいと感じる』その瞬間だけの物」
「ふぅーむ」
「まあ、我々にそんなのは無いからただの趣味だけれど」
「おい……」
「だって三大欲求って生物の本能だもの。我々にそんな物ないわ。まあ、だからこそ気づいたらぼけっと数年経っていた……なんてことがあるらしいけど」
「なるほど、長命種特有のあれか……」
「らしいわねぇ……。私はまだ未経験」
「……今の立場でぼけっと数年は洒落にならんぞ?」
「人間社会は一気に変わるものねぇ……。まあ、どうせ暇になんかさせてくれないでしょう。……最悪《多重存在》でなんとかするし」
「ああ、あれか……」
「今ももう1人の私は絶賛お仕事中である……。パーティー参加も仕事と言えば仕事だけれど……あの分身体は執務室から出たことがない。人類ならとっくに死んでるわね……」
「……文官は?」
「知っての通り来たのは脳筋ばかりよ。流石のブリュンヒルデもこればかりはね」
「まあそうだな。聞いたことを上の者に知らせると言う事は徹底してるが、判断するのはその上の仕事だからなぁ」
「ま、今回のことで広がるだろうから、雇って……育てながらかしらね」
「そう言えば、貴族作るのか?」
「一応そのつもり。完全実力主義でね。爵位持ちの魔物すら貴族になれるかもね」
「まじか」
「この国だって似たような物じゃない。『立場に相応しい実力を、能力を』ってね。ファーサイスは人間の国だから上は基本的に人間だけれど、うちは種族なんぞ些細な物だからね。モラルの能力があれば言うことはない。ああ、でもドラゴンは流石に困るわ。サイズ的に。人化必須ね」

しばらく緩い雑談をして過ごしていると、会場に音楽が流れ始めた。
会場の一角に陣取り演奏をするファーサイスに雇われた楽団がいた。

「へー、劇団ねぇ」
「ああいった物には興味なしか?」
「いいえ、音楽は好きよ」
「ほう、そうかそうか。あの者達は新年祭での演奏を頼むぐらいには有名でな」

新年の初めに国で行われる最大規模の大事なお祭りで、他国の王族や貴族も来る場所に呼ばれる者達が優秀でない訳がない。
ただし……。

「前世の音楽はどうだった?」
「そうね……前世の……100人を超えるオーケストラを知っている私からすれば物足りないと言わざるを得ないでしょう」
「100人超えだと……!? この楽団で世界最大規模なのだが……」
「こればかりは世界の違いとしか言えないわね……。世界という前提が違いすぎるもの。魔物の有無の差は大きいわ」
「ふむぅ……」
「とは言え、逆に私は人数が多ければいいと言う訳でもないと知っている。人数が増えれば確かに壮大だけれど、その分合わせるのが難しいしね。少なかろうが良い物は良いのよ。好みは確かにあるけれど、私は不快にさえならなければ別にソロ演奏でも構わないし、楽器も問わない」
「これでも十分満足できると?」
「十分よ。そもそも文化どころか世界が違う物を比べたところで仕方ない。どちらが優れているかは確かに分かるけど、それで彼らを否定する理由にはならない」
「そうか」
「ええ。それにもう少ししたら発展しそうではあるからね」
「む……?」
「彼らはこの国に住んでいる訳ではないでしょう?」
「違うな。旅の者達だ」
「この世界の移動は基本的に馬車。前世にあったような人間サイズの楽器を持ち運ぶわけにはいかないでしょう? ただ、今後魔法の普及により"インベントリ"か"ストレージ"が使える人間が増えれば……」
「なるほどな。今までは無理だったサイズの楽器ができる可能性があると」
「そう。楽器は結構繊細なの。一週間も二週間も馬車で整えられていない道をガタゴト運んでいたらすぐダメになるわ。それが解決するなら喜んでするでしょうね」
「ふむ、それは楽しみだな」
「国家として使える前世の知識を1つ教えるとするなら、コンサートホールと言われる建物かしらね。音楽を聞かせるために考えられた構造の建物などがある」

流れる音楽を聞きながら、ダンスする貴族達を眺めながら、ちょっと国に絡むような話しもしたり。
この世界は娯楽が少ない。ならコンサートホールなどは国が運営した方が良いだろうな。国営として楽団と長期契約を結び、定期的に演奏をして貰うのだ。
まあ、言うだけならタダだしどうするかは国が決めることだ。

「ところで、他の王族達と話しておかなくて良いのか?」
「隣国な訳だししよかなーとは思ったんだけれどね。正直そっとしといてくれればそれで良いかな、感が強いのよね。それにこの後顔合わせる事になるようだし。ぶっちゃけ話すことがない。生産ギルド、商業ギルドとの仲は良好だし」
「ふむ……。確かに国よりギルドの方がどちらかと言うと良いのか」
「ファーサイスは欲しいの野菜だから貿易になるけど、テクノスとマーストは用があるのギルドだけだったから、一切接触してないのよね。ほいほい王が行くもんでもないでしょうし?」
「まあなぁ……」
「そもそも使者がいなかったんだけど。ハハハハハ……あ、そう言えば姿を変えて自分で行けばよかったのか?」
「姿ってそんな変えられるのか?」
「基本的に自由ね。あくまで今のこの姿が基本なだけで、いくらでも変える事は可能。変装するような感覚ね」

現在の姿は完璧なデフォルト状態。つまり年齢10歳翼あり。
これが1番自然体であり、楽な状態だ。軽くくびれ始めた巨乳幼女型である。
エロい体つきをしているが、別に愛や性を司ってはいない。

元々林太郎ルナフェリアは巨乳好き。
しかし創造神様との会話中、思考を読まれ2次元が基礎になる。そうなると当然男の願望の詰まった素晴らしい体になるわけで。
そのまま行けばよかったのに、林太郎は子供好き(性的な意味ではない)でもある。
それで何故か融合され、2次元幼女体ベースでボンキュッ?ボンになった。
そこは普通に美少女のままにしておいて欲しかった林太郎であった。
美少女じゃなくても美幼女で美であることには変わりないし、別に良いかと速攻で流したのもどうかと思うが、切り替えは早かった。


まあそれはともかくとして、切り替え自体は自由にできる。
精神生命体、霊体系魔法生物などに共通する事だ。
当然それらの上位存在である神も該当する。
基本的に物理は効かず、魔法にも高い耐性を持つが、自分より高い魔力持ちには為す術なく消し飛ばされる極端な奴らだ。
後自分の肉体、霊体? を維持するための魔力を失くしても消滅する。
まあ、幽霊の生前の形がデフォルトで、慣れれば自分の姿変えられるもんだと思えばいいだろう。
吸血鬼はコウモリになれるというが、あれより理解できるはずだ。


「そろそろ時間か。ベアテとセラフィーナを呼びたいのだけれど構わない?」
「ベアテにセラフィーナ?」
「従魔と……エルフのうちの子。ベアテは人化させるから心配しないでいいわよ。いつもあの子達はお留守番だからねぇ……ご飯作るのも面倒だし」
「……理由は半々というところか」
「ハハハハ」
「まあ良いだろう。許す!」
「助かるわ。料理する分身体増やす手間もあるし」

開催国の王の言質取ったら勝ち組。
会場に張られている魔法の封印結界をガン無視し"ゲート"で2人を呼ぶ。
格が下の結界なんぞ無いも当然よ! 故に万能とはいい難い。
《防御魔法》である結界にも当然種類があり、普通のシールド系と設置型の結界が存在する。設置型は少々特殊な張り方をするのが基本だが、これはまあ、別の機会にしよう。

"ゲート"から健康的に焼けた肌、赤い瞳に黒い髪のクール系美女と……髪はショートポニーの黒、切れ目で暗い赤の瞳のこれまたクール系美女。更に金髪にエメラルドグリーンの綺麗な瞳で白い肌をしたエルフの幼女がやって来た。
最初がベアテ、次がアストレート、最後がセラフィーナだ。
セラフィーナがトコトコやって来て、ぽふっと抱き付いてきたので撫で撫ですると嬉しそうにニコニコしていた。
精霊達と料理を啄いていたエマニュエルがベアテのところへやって来て、ベアテの腕に止まる。うむ、クール系美女だから似合うな。

ちなみにベアテに渡した人化には2パターンがある。
1つは今のベアテ。完全な人形ひとがたモード。
もう1つは所謂この世界の獣人モードだ。

獣人とは動物の特徴の一部を持った者を獣人と呼ぶ。
亜人とは人の体と動物の体、両方を持った者を亜人と呼ぶ。

つまり獣人は人の体に、狐の耳と尻尾、狼の耳と尻尾と言った特徴の一部。
そして亜人はベアテの普段の様に人の部分と蜘蛛の部分、ケンタウロスの様な人の部分と馬の部分を持った者の事を言う。
亜人と魔物の違いは非常に曖昧で、結構厄介な問題になっているようだ。

つまりベアテの獣人バージョンだと蜘蛛部分が何処かに残るはずなんだが、どこに残るんだろうね。
背中に手として足生えるのが妥当か? 後蜘蛛のまん丸尻尾かな?
まあ、今は完全な人形モードだ。

さて、ベアテは1人でいいだろうが……セラフィーナはダメかな。
となるとブリュンヒルデに任せるのが1番か?

「おや……? もしや……ハイエルフでは?」

テクノスの国王に見つかったようだ。そう言えばこの人はハイドワーフだったな。
流石にこの人には分かるか。ただ、そのまずさも分かっているようで小声だった。
聞こえたのは私とファーサイスの国王だけだろう。驚きはした様だがしっかりポーカーフェイスで隠していた。
セラフィーナがビクッとしたけど撫で撫でしておく。このおっちゃんは大丈夫だ。
ある意味同類だからな。ハイドワーフ……自身も苦労したろう。お陰でこちらを見る視線が少々強い。私に下心なんぞ微塵も無いぞおっちゃん。
永く生きてるだけあってスキルも高いし、人類だと間違いなく上位に入るだろう。
おや? レア種族だ! って助けてきたからある意味下心丸出しだったか?
まあ、いいや。良いことをした事に変わりはない。うむ。

「そうよ。一応ステータス偽装のアクセサリーを付けさせてるけど、流石にハイドワーフにはバレるようね」
「なるほど、かなり曖昧な気がするのはそのせいか。かなり強い偽装だ」
「まだ自分を護るすべを持たないのだから当然でしょう。召喚で護衛と精霊達もついているけれど、狙われる原因が分かっているのだから隠すでしょう?」
「ふむ、確かにな……。その懐き具合……問題なさそうだな」
「うちの子に手を出す者がいるのなら、私が相手になりましょう」
「ふむ……」
「ブリュンヒルデとアストレート、セラフィーナとベアテを連れて行って好きなの持ってきなさい。ついでに私のもよろしく」
「畏まりました」

あの面子なら大丈夫だろう。
ワルキューレ、超級召喚体、皇帝種と魔王種、更に上級精霊達まで付いているからな。いったい何と戦うつもりなんだ。
私? ハハハ、足りんな。神様嘗めんな。
まあそれはそうと、セラフィーナが席を外している間に話をしておこうか。

「あの子はベリアドースに行く最中に拾ってね。奴隷商に捕まって運ばれてる最中に転移して連れ出してきたのよ」
「となると親は……」
「あの子の前でね。だからそのまま育てているのよ」
「そうか……」
「でも特にトラウマにはなってなさそうなのよね。夜は誰かしらの布団に潜り込んでるようだけれど。強いわよあの子は……」
「村か? そっちの方は?」
「こちらからは何も言ってないわ。迫害していた者達にわざわざ言う必要も無いでしょう。彼らには不要のようだしね。あの子も戻ることは望んでいないし、親もそれを望むでしょう。エルフにとっては我が国は天国でしょうし」
「迫害……か。未だにあるか……そこまで恐れる必要はないだろうに……」
「勝手に恐れて勝手な正義を掲げ攻撃してくるのだからふざけた話よね。まあ、パーティーの最中にする話じゃないわね」

セラフィーナ達が帰ってきたので話を終わらせ、テクノスの王も加わって食事タイムである。精霊達が既に半分ぐらいテーブル陣取ってるが気にするな。
我々にとってパーティーとはご馳走を堪能するチャンスなんだ。

食べるだけでいいから楽!

いやだって、普段作るの私とジェシカだし。
ブリュンヒルデも騎士達も料理は出来ないからなー。
王宮料理人絶賛募集中。我々のためにご飯を作り続ける簡単なお仕事です。
解体ナイフがあるから前世より楽なのは確か。野菜にも効くし。

「ああ、皆さん御一緒しても?」
「パトリシオ陛下か。断る理由はあるまい?」
「構わないわよ」
「うむ。構わん」
「ありがとうございます」

アエストの新王も加わり更に狭くなった。主に精霊達のせいだが。
そしてこうなると……。

「おやおや、お集まりで」

当然マーストのトップもやってくるよね。テーブルギリギリである。
しかし誰も精霊達には文句を言わなかった。
まあ、無駄使いしてるわけでもなく、料理が盛られた皿が並んでるだけだからな……。その隙間を縫いながら好きなの食べてる精霊達。
まあ可愛いのもあるが、何より簡単に消し飛ばされるから下手なこと言えないんだがな。
ファーサイスの王とテクノスの王はそもそも言うつもりが一切ない。
ファーサイスは国として精霊達の加護には感謝しているし、テクノスの王はハイドワーフだ。テクノスは国的にも鉱石として精霊達の恩恵を受けている。
他の2人も特に気にしていない模様。王の器とでも言うべきなのか?

ルナフェリアからすれば、こいつらは他所にやると何するか分からんから、どけるつもりは無い。近くに置いておかないとヴルカンとシルヴェストルは危険だ。
最近はグラースとトネールも便乗するから余計に。やんちゃな奴らである。

「ヴルカン、もう少し落ち着いて食べなさい。誰も取ったりしな……するわね」
「シルヴェストルに持ってかれる」
「ふっふっふ」

だめだこりゃ。
と言ってもヴルカンもシルヴェストルの食べてるから最早関係ないな。


そんなやり取りをしつつも、収穫祭は無事に、何事もなく、終わりました。
絡まれなかった! まあ、大体他の大国の王族といたからな。
来たら勇気あるわ。

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