転生先は現人神の女神様
12 女神の体と帰宅
「まだ試してなかったのよね。試してみようかしら」
ここで《身体強化》についての説明を聞いた。
ついでに魔力漏れについても聞いた。
防衛戦の時に魔力を抑えたが、あの時は完全に抑えてる人間が居なかったため、それを参考にしたルナは常時漏れていた。
「魔力が多すぎて抑えきれなかったと言う言い訳は通らないかしら?」
「言い訳と言ってる時点で無理ですね……」
……そりゃそうだ。さっさと全部隠そう。
「よし、これでいいわね。……あれ、まだ漏れてる?」
「そうですか?」
「あ、この漏れてる魔力で《身体強化》すればいいんじゃないかしら?」
やってみようかな。
……? あれ、できない? 体に魔力を通すだけじゃなかったっけ?
私ができない? そんなバカな。魔力増やしてみるか。
「「「ひっ……!」」」
ん?
「る、ルナフェリア様!」
「何? ……どうしたの皆」
なんで皆座ってるんだ? ……あ、はい。やめますね。
《身体強化》らしきものをやめたら皆の力が抜けた。
やっぱり原因はこれか、なんだろう。
「魔力は意識して漏らしたり、相手に向けたりすると威圧できるんです」
「向けたつもりはないから、漏れてた?」
「ええ、かなりの濃度が……」
「うーん、《身体強化》だから漏れるわけがないのだけど……」
なんで? リングでスキルを確認したけど《身体強化》が無い。
「……私が《身体強化》できないのはどういうこと? 魔力を使うことで私が?」
納得がいかない……。
そもそも抑えたはずの魔力がまだ漏れてるのはなんでだ?
何かを勘違いしている可能性は……。
むー、創造神様に聞くという手もあるが……。
そういえば漏れてる魔力を抑えるとき、なんか違うな。
体の中にある魔力を体から出ないように抑える。うん、やっぱりまだ漏れてる。
まだ漏れてるのを抑えると、髪から漏れる。髪を抑えると体から漏れる。
体と髪を抑えると……口と目、鼻と耳もか……。これは嫌だな……。
そこも抑えてしまおう。これでどうよ。
…………あ、なんかヤバイ!
解除っ! 解除っ! 全部抑えると爆発しそうになるってなんだ……。
いや、ほんとに何だ? 魔力は抑えても問題ないのに? ……魔力じゃない?
人間、ヘルムート隊長が綺麗に抑えている。もし同じように爆発してたら?
まあ、既に死んでるだろう。じゃあ大丈夫な理由は? 私との違いは魔力量?
全然違うはずだ。一定量以上無いと爆発は起こらないと言う可能性。
そして1番有り得そうなのが、そもそも魔力じゃない可能性……。
って、そうだったね。魔力じゃないね。そもそも色違うじゃん?
なんで気づかないのか。私の魔力は紫だ。マナはスプリンググリーン。
そして私から漏れてるのは白っぽい。なにこれ? なに……これ……?
『創造神様ー。へるーぷ!』
『…………はーい、何かなー?』
お、通じた。
『私の体から漏れてる魔力じゃない物と《身体強化》が使えない? 理由が知りたいです』
『あー? あー、ちょっと待ってね』
『あい』
『えっとね、体から漏れてるのは恐らく神力。神通力と言えば分かりやすい? まあ、能力と言うよりエネルギーというか、そんな所。月の女神が周囲のマナを活性化させるのは、その神力によるものね。精霊も周囲のマナを活性化させるけど、あなたの場合はその精霊すらも活性化させるからちょっと別物』
『ふむふむ……』
『それで《身体強化》が使えない理由だけど、多分体が精霊に近い。妖精や精霊はマナの塊で、《身体強化》は体に魔力を通す必要があるけど、そもそも体自体がマナでできているため意味が無い。あなたの場合は神力でできてそうだから余計に意味が無い。そういう意味では精霊やあなたは常に《身体強化》以上の状態と言えるわね。 むしろ神力によって何かしらの影響が出るはず。その辺りは現人神じゃないと分からないわね……』
『試した時は威圧? が発生してたっぽいですねぇ……』
『……魔力の増幅かしら? マナが活性化するのだから、魔力が活性化して増幅されても不思議じゃないわね』
『なるほど。神力って操れないんですかね?』
『できると思うわよ? 私はできるし。ただ、そっちの世界にそんなスキルは無いから、完全に自力ね』
『ふむ……。のんびり試してみますかね……。ありがとうございました』
『全然いいのよー。じゃあねー』
接続が切れた。
おかげで理由が分かった。
つまり私の体は魔力やマナ以上の出力エネルギーがある神力の塊である。
強化しようにも弱い魔力じゃ強化出来ない。よって《身体強化》は意味が無い。
漏れているのは魔力ではなく、神力。よって現状抑える事は出来ない。要練習。
と言うか、もしかして抑える必要がない。まあ、抑える抑えないは良いとして、操れるようにはしておきたいかな?
謎は解けた。スッキリした。
「うん、私に《身体強化》は使えないようね」
「そうなんですか?」
「ええ、体質……のようなものかしら?」
「(体質……女神というのに関係が?)なるほど」
さすがヘルムート隊長、よく分かってる。
「せっかく広い所いるし、少し練習してこうかしら」
「練習ですか?」
「ええ、ここに来る前に説明した奴をね」
「あ、あれですか……」
苦笑してるけど知らん。
部屋の中で軽く回すだけしかできなかったけど、ここなら問題ないしね。
「近づかないように」
「ええ、分かってますとも」
うむ。
初級は既に試してるから、中級からだな。ランス8種で良いでしょう。
《並列魔法》で8種を選択し《魔導武装》で一気に武器にする。
この《魔導武装》選択した魔法を何かしらの武器にできるようだ。
形の選択肢は【武闘】にある物。魔法は攻撃魔法であることが条件。
元となった魔法によって威力や効果、切れ味や耐久性が変わる。
さっきスキルを見た時にちゃっかり【その他】に増えてた。
そして無属性は攻撃魔法が超級なので、純粋に魔力の剣を手動で作る。
9本の武器がルナの周囲をくるくると回る。
紫色に光る剣。青白くメラメラしてる大剣。常に流れてる青い斧と緑の短剣。
金属光沢のある黒い鎚。軽く発光してる白いロッド。光を飲み込む黒い槍。
青みがかったクリスタルのレイピア。青白くバチバチしてる刀。
順番に《無魔法》《火魔法》《水魔法》《風魔法》《土魔法》《光魔法》
《闇魔法》《氷魔法》《雷魔法》から生まれた武器である。
これらを《並列思考》を使い《無魔法》の”プレスティージオ”でそれぞれ操る。
これにより縦横無尽に操れるようになる。動いてないのが出たりはしない。
斬る、突く、殴る、叩きつける。自分の周囲を縦横無尽に死角なく。
うん、体捌きとか気にする必要無いし、こっちの方が楽だな。
魔法って言うのもあるんだろうけど。
さっきから周囲を飛び回ってる妖精を避けるように武器を振っていく。
当たっても大丈夫なように同じ属性を向けるか。
楽しそうだし練習にもなるからいいか。
女神の力が強いのは結構だが、圧倒的経験不足。
こればっかりは中身の問題だからなぁ……。
まあ、まだ2日目だし当然だけど。
おっと、危ない危ない。当たるところだった。
この子達はそれぞれの属性魔法無効持ち。
当たったところで効きはしないけど、15センチの子を攻撃するのもね。
精霊だと30センチでそれぞれの属性魔法吸収。
属性1個とは言えパッシブな分楽そうだね。
私は属性とか関係なく分解できるけど、アクティブだからね。不意打ちはNG。
私相手に魔法で不意打ちできるかは知らないけど。
《月の魔導》で感知できるっぽいんだよね。多分《魔力感知》の上位機能あり。
ふむ、こんなもんでいいでしょう。とりあえずやり方は分かった。
面白いし多分主力になるだろうから、ちまちま練習しよう。
火、光、闇、氷、雷は人には使えんな。風も微妙。
無と土なら刃を潰すなりで行ける。
水が1番安全かな? 流してアクアカッターにしたり、ウォータージェット切断仕様にさえしなければ当たっても濡れるだけだし。訓練は水かな。
さて、帰るか。結局朝と昼食べてない。お金は稼いだし夜は食べる!
「じゃあ帰るわ。しばらくギルドに捕まりそうだから、落ち着いたら来るわね」
「ああ、素材ですか」
「ええ、誰かしら来るでしょう」
「マーストの商人が食いつくでしょうね」
「商業国家ね。まあ、お金さえ出してくれるなら売るけれど」
「鱗を北の技術国家、テクノスに持ち込むだけで相当でしょうね。お肉は我が国の高級レストランが喜びそうですね」
「ふむ。そういえばお勧めのお店はあるかしら? お金貰って直でこっち来たから、まだ何も食べてないのよね」
「それでしたら、ルナフェリア様の敷地の向かい側が有名なレストランですね。高いのから安いのまで幅広く置いてあります」
「そうなのね。じゃあそこにしましょう。行ってくるわ」
「はい、また後ほど」
……歩いて帰ろうかな。急いでないし。
とことこ撤退。
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