転生先は現人神の女神様

リアフィス

08 初依頼

アンデッドにするべきか……値段的にも……。

「いったい何ごとだ?」

ギルマスが来た。そこに騎士が話し始める。

「港街シーフープの近海にシードラゴンが確認されました!」
「なん!?」
「シードラゴンだあ!?」

ギルマスどころか周りも大騒ぎである。
ほーん。シードラゴンねぇ。この驚き様だと強いのか、レアなだけか。
まあ、前者だろうなぁ。ドラゴンだし。

「シーフープに来そうなのか!?」
「このままだと来るそうです!」
「あっちの冒険者は?」
「今いるのは最高でもCだとか!」
「こっちも皆出払ってるからな……Bのあいつらだな」
「ギルマス勘弁してくれよ。シードラゴンは無理だって。手段が無い」
「……だろうな。そもそも1PTで行ったところでなぁ」

まあ、海にいるんだろうしなぁ。《月の魔眼》で見れば良いのか。
ファーサイスにある港街は……。
ああ、王都の南にあるな。これがシーフープか。
で、確かに近くの海から馬鹿でかいのが街に向かってるな。
40メートル近いんじゃない?水の中にいるせいでよく見えない。
残念。

「……そうだ。素晴らしい戦力がそこにいるじゃないか」

あ、やっぱこっち来たか。まあ、アンデッドよりはこいつが良いな。
姿見せないかなぁ。

「ルナフェリア嬢、指名依頼をしたい」
「……内容は?」
「そうだな……。シードラゴンの討伐と言いたいが……」
「ちょ、ちょっと待って下さいギルドマスター。あの少女にですか!?」

騎士の人がすかさず突っ込む。
が、続くギルマスの言葉に驚愕する。

「ああ、そうだ。戦闘力は保証する。と言うか、俺も勝てる気がしない」
「は……?」

このギルドマスター、元Sランク冒険者だったそうだ。
顔の傷は現役時代に付いた傷らしい。

「で、内容なんだが、シーフープの近海の安全確保でどうだ?」

そして騎士が固まってる間に話を進めるギルマスである。

「万が一他のも居た場合そいつも頼む!」
「……それって、このアンデッドの制圧より報酬高い?」
「アンデッド?」
「ここにある白依頼のアンデッド」
「ああ、あれか。そりゃもちろん高い。なんたって今回はシードラゴンだ。亜竜じゃない完璧な龍種だからな。それこそ桁が違うと思うぞ」
「……ほほう。素材も売れる?」
「もちろんだ! むしろ売ってくれ!」

にんまりしてしまう。
ギルマスもにんまりしてるが、子供泣くわ。凶悪すぎる。
一気に稼げそうだから受けるとしようか。お困りのようだし。

「なら受けるわ」
「よしよし、じゃあこっち来てくれ。手続きをしよう」

ギルマスが何やら操作をしている。依頼を作ってるようだ。そうだ。

「ねえ、騎士さん」
「な、なんだい?」
「お城にもこの話し行ってるの?」
「ああ、もちろんだ」
「じゃあ、王様か第一王子、後は宰相さんか近衛の隊長か副隊長、もしくはヘルムート、ヨハン、ハンネの3隊長の誰かに私が動くと伝えといて」
「……は?」
「ああ、こっちで伝えておくから気にするな」
「そう? じゃあよろしくね。伝えれば落ち着くでしょうし」
「ああ、そうだろうな。これやったら伝えておく」
「よろしくー」

これでバタバタしているであろうお城も落ち着くでしょ。
さて、シードラゴンか。間違いなく海上戦になるな……。
《雷魔法》なんかぶっ放したら大惨事になりそうだからやめておくとして……。
火は……やめとくか。効率が悪い。と言うかヘタしたら水蒸気爆発しそうだし。
空中戦になるだろうから《土魔法》もいいや。風、光、闇、氷のどれかだな。
完璧な状態で素材が欲しい。そうなると光と闇はやめておくか?
闇の超級魔法”ソウルブレイク”でシードラゴンの魂を消し飛ばすのもありだが……いや、なんか嫌な予感がするからやめておこう。
風で首を切り落とすか、凍らせるかが安定か。
40m級のシードラゴンを凍らせることは可能。魔力つぎ込めばいいだけだからそこに問題はない。問題があるのはドラゴンって凍らせただけで死ぬのか?
”アブソリュートゼロ”ならいけるか? 殺すだけなら簡単なんだが……。
周囲に極力被害を出さず、素材をなるべく完璧な方法でって魔法じゃ難しくね?
むーん。

「よし、できたぞ。リングをかざしてくれ」
「ん」

球体にリングをかざしたら両方淡く光って収まる。
リングをチェックすると、港街シーフープ近海の安全確保、と言うクエストを受注していた。

「よろしく頼む!」
「なるべく海に被害出さないようにするわ。……主に私の魔法による被害を」
「お、おう。そうだな、頼む。《雷魔法》は最終手段にしてくれ!」
「いくら効きそうだからといって海に《雷魔法》ぶっ放すほど馬鹿じゃないわ」
「いや、うん。……前にいてな」
「……まじ?」
「ああ、幸いと言って良いのかは謎だが、魔力量は人より多少多いぐらいだったから、致命的な被害はでなかったんだが……」
「言わずにはいられないってやつね。私がやったら間違いなく壊滅するでしょうし……」
「ああ、魔法の才能があるからと言って頭がいいとは限らないんだよ……」
「……そう。今のところ《風魔法》か《氷魔法》でなんとかしようかと思ってるけれど」

話してるけどシードラゴンの動きはちゃんと見てるよ?
《月の魔眼》が超便利。ギルマスも効果は知ってるし、私が行くわけだから非常に落ち着いてます。慌ただしいのは周りです。

「なんでそんな落ち着いてのんきに話してるんですか!?」
「だって、なあ?」
「移動だけでも半日近くかかるんですから!」
「勝手に行くから大丈夫よ」

私は普段通り。知ってるギルマスとテアさんは苦笑。
何も知らない周りが大騒ぎ。

「ところでギルマス? ドラゴンって凍らせただけで死ぬ?」
「は? 知るか! 見たことねぇわ!」
「うーむ……」

ですよねー。どーしようかなー。
海にいるまま絶対零度なんかしたら周囲も凍って行くよなぁ……。
まずは《水魔法》で周囲の水ごと打ち上げて、シードラゴンから水を離し、空中で凍らせ、その氷に《雷魔法》をぶっ放すのが1番かな?
おっと、そろそろ行ったほうが良いかな。結構街に近くなってるし。

「じゃあ、そろそろ行ってくるわ」
「分かった。俺は城に連絡入れるかな」
「さて。……”テレポーテーション”」

《空間魔法》の上級魔法で転移する。
瞬時に視界が切り替わり、強面のおっさんから港に変わる。
既に住民は避難しているため、ほとんどいないが騎士や冒険者がスタンバイしている、その人達の前にでる。

海風によって運ばれてくる川とは違った潮の香り。
太陽によってきらきらと光る海面。
非常に綺麗な光景である。波の高さに目を瞑れば。
天気は良い、海も透き通って非常に綺麗! だが! 大荒れである。
不思議な光景ですね。

40メートル級のドラゴンが海面近くを泳いでたらそりゃ荒れるわ。

にしても、風が吹くと帽子を抑えてしまう。抑えなくても揺れるだけで飛んでくことは無いんだけどさ。
まあ、それはともかく。

「さて、やりますか」
「いや、やるってなに……!?」

後ろにいた人達が何か言おうとしたけど、翼出したらまた固まっちゃった。
ここで戦ったら船が潰れるか。となると、やっぱ沖に出るか。
数時間ぶりの空です。《空適正》もあるから実は飛んでた方がいいんだよね。

一度真上に飛び上がり、沖に向かって加速する。
まっすぐ沖に向かったらパンツ見えるじゃん?

スピードはそんな出さず、船より前に行き、空でスタンバイ。
さあ、魔法の準備をしましょう。
まずオリジナル魔法で水ごとやつを打ち上げる。浮いたら余計な水を退ける。
そしたら《無魔法》の”プレスティージオ”で落下の防止。
即座に《氷魔法》の”アブソリュートゼロ”で凍結。
その後に《雷魔法》で電気を死ぬまで通す。
念の為に《結界魔法》の”マナシールド”も準備しておく。
私が敵の攻撃を避けたら後ろの街がね?
準備よーし、いつでもいいよー。

ん? あ、頭出した。おお、水色の綺麗なうろこ。結構つぶらな瞳。
思ったより可愛いかもしれんな。

目と目が合う~。……おや。

瞬間、口を開けて青いレーザー。
挨拶代わりの《竜魔法》”ドラゴンブレス”ってか?

イラッ☆

掌で受け止めるように右手を前にし、準備していた”マナシールド”を展開。
派手な音と共に”ドラゴンブレス”が”マナシールド”に当たり、弾ける。
ふむ、5秒か。魔力量といいなかなかの強個体だな。
いや、初見だから知らないけど。

”マナシールド”に当たり水飛沫となった”ドラゴンブレス”だった物が、太陽光を反射しキラキラと輝きながら落ちてゆく。

「うむ、ではこちらの番だな?」

つぶらな瞳で可愛い? 知らんな。死ぬがよいトカゲ野郎。
掌を向けていた右手を捻り、指が下になるようにする。
そしてそのまますくい上げるように上に。

「水よ、天へと舞い上がれ」

爆音と共に縦長の40メートルにも及ぶ範囲の水が天高く舞い上がる。
丁度いい高さまで上がったところで、腕を真横に振るい、余分な水を散らす。

「散れ」

それで適度に水に包まれたシードラゴンをすぐさま”プレスティージオ”でその場に固定。真横に伸ばした腕を天へと伸ばしながら……

「”アブソリュートゼロ”!」

ピシ! ピシピシピシピシ! と凍りついていく。
シードラゴンはバタバタと暴れているが、当然そんな行動に意味はなく、レジストなんかできずに凍りつく。
そして天へ伸ばした腕を前に振り下ろす。

「”サンダー”!」

その言葉と共に天からの落雷が凍りついたシードラゴンに直撃する。
直撃した瞬間凄まじい音と共に青白く輝き中のシードラゴンを蹂躙する。
この落雷により、シードラゴンは一切の身動きもできずに命を引き取った。


さて、途中から楽しくなってきちゃってノリノリでやってしまったが。
いや、深く考えるのはやめよう。堂々としてれば良いんだ、うん。
I Believe キット ソウ.
後半が日本語だ? 気にすんな。

ふむ、パット見完璧な状態。肉食べれるのかな? 雷で焼けてないと良いけど。
とりあえず仕舞うか。

「”ストレージ”」

”ストレージ”は《空間魔法》の中級魔法。
アイテムを入れられる別次元の倉庫で、サイズは術者の魔力量次第。
初級にある”インベントリ”との違いは、”ストレージ”は時間経過が無いこと。
”インベントリ”や”ストレージ”は生きている生物を仕舞うことはできないので、死んでいる証拠にもなる。


ん、んー。シードラゴンだけかな?
《月の魔導》で探っても他に魔力量が飛び抜けてるのは感じないな。
うん、じゃあ帰ろうかな。

港に戻り、降りると同時に翼を消し、騎士や冒険者達に話かける。

「シードラゴン以外に飛び抜けた魔力持ちはおらんかった。よって、依頼達成ということで私は王都に帰る。後処理は任せた」
「は……」

ふむ、脳内処理に時間がかかっているようだな。だが待ってやらん。
脅威は倒した、後は知らん。ギルド前でいいや。

「”テレポーテーション”」

そして目の前の扉を……

バァァン!

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