2度目の人生を、楽しく生きる

皐月 遊

67話 「魔術禁止令」

「今日の訓練は、戦闘訓練だ。 2人1組でペアを作り、各自戦闘を始めろ」

戦闘訓練か……

よし…

「アリス! 組まないか?」

俺はアリスをペアに誘った。

クリスはいつもナーシャとペアを組むからな。

アリスは多分女子の中で1番強いだろう。 だから凄く勉強になるのだ。

「はい、別にいいですけど…珍しいですね。 ルージュさんから誘うなんて、いつもは私達がジャンケンし終えるまで待ってるのに」

そう。 俺はいつもアリス、セレナ、フィリアの内の誰か1人と組んでいる。

モーナから「女子3人で組んでもいいんだぞ」と言われたらしいが、セレナが「そうするとルージュが1人になるから」と言ったらしい。

セレナ…なんて優しいんだ…

「ははは…アリスと戦うと色々勉強になるからな」

「それは私もですよ」

俺は意地でも30人以内に入らないといけない。
もし30人以内に入れなくてドーラ村に帰れなかったら、ディノスになんと言われるか……
考えたくないな…

久しぶりディノスやフローラに会いたい。 そして今アルカディア家にいるであろう女の子にも会いたいしな。

その為には勝ち残らなければいけない。

「ここら辺でいいか?」

俺達はクラスメイト達から少し離れ、向かい合う。

俺とアリスは木刀を構える。

戦闘訓練は何を使ってもいい、剣術でも魔術でも武術でもだ。 だが剣を使う場合は木刀を使わなければいけない。

「前にアリスと戦ったのは確か…」

「一ヶ月前くらいですね、最近はジャンケンで勝ち続けてましたので」

一ヶ月か、その間にアリスは強くなってるんだろうな…

「そうか、んじゃ早速…」

「始めましょうか!」

先に動いたのはアリスだ。

アリスにしては珍しく突っ込んできた。

珍しいっていうか、初めてだぞこんなの⁉︎

石弾ロック・シュート!」

走ってくるアリスに石弾を撃つが、難なく躱される。

閃光連打せんこうれんだ!」

そしてなんと、アリスが俺の腹を殴ってきたのだ。
それも何度も。

俺は飛ばされて地面を転がる

「いってぇ……アリス、お前武術なんて…」

聖水連球セイクリッド・ウォーターマシンガン!」

立ち上がろうとする俺に無数の水球が向かってくる。

土壁アース・ウォール!」

土壁でなんとか防いだが、危なかった。

俺は木刀に炎を纏わせ

風加速ウィンド・アクセル! 」

風加速で一気にアリスの元へ向かう。

炎斬えんざんっ!」

そしてアリスに向かって炎斬を撃つ。

水柱ウォーター・ピラー!」

だがアリスは水柱を出し、炎斬を消す。

……ならその水柱、ありがたく使わせて貰おう。

氷結フリーズ!」

氷結を使い、水柱を凍らせる。

これで氷の柱が完成した。

そして次に氷の柱にピッタリと右手をくっつけ、魔力を込める。

爆発エクスプロージョン!」

土と火の複合魔術、爆発の魔法を使う。

めっちゃ腕が痛いが、肩が外れなかっただけマシだ。

爆発により氷の柱は崩れ、色々な大きさの氷の塊がアリスを襲う。

「なっ…⁉︎ せ、聖水壁セクリッド・ウォーターウォール!」

アリスが壁を作るが、そんなものでこれは防げない。

竜巻サイクロン!」

アリスがいつの間に覚えたのか、風の中級魔法を使う。

…って、今竜巻なんか使ったら…!

「マジかよ…⁉︎」

アリスの方に向かっていた氷の塊が全て竜巻によって俺の方に向かってくる。

「くそっ…土壁!」

土壁を作ったが、すぐに壊れるだろう。

俺は土壁が耐えている内に風加速で横に走り、なんとか当たらずにすんだ。

「まだまだ行きますよ!」

安心する間も無くアリスが木刀を振り下ろしてくる。

咄嗟に木刀で防いだが、剣術でアリスに勝てるとは思えない。

「剣術だけじゃないですよ?」

「え…? うわっ⁉︎」

アリスの木刀を防ぐ事だけに集中しすぎていたせいで、アリスの足払いによって尻餅をついてしまった。

「はあぁっ!」

「うおっ⁉︎」

容赦無くアリスが剣を振り下ろして来たが、俺は地面を転がってなんとか回避した。

アリスってこんなに容赦無かったか…?

「次はこっちから…!」

木刀に炎を纏わせ、アリスの方に走ろうとしたが、足を止めた。

アリスが居合切りの体制で待機していたのだ。

一歩も動かずに、ただ俺を見つめている。

「……一撃勝負か、上等だ!」

最初は斬撃を撃とうとしていたが、やめた。

俺は炎を纏った剣を握りながらアリスの元へ走った。

迎え撃ってやるぜ…!

「………風の太刀」

………一瞬。

一瞬だった。 アリスが動いたかと思うと、何故か俺は地面に仰向けで倒れていた。

腹にも痛みがある。 何があったんだ?

「戦闘訓練終了だ!」

モーナの声が聞こえ、俺はアリスに負けたのだと自覚する。

「ルージュさん、大丈夫ですか? すみません…少しやり過ぎましたね」

「い、いや…」

あの居合切り…あれも技の一種なのだろうか。

……やっぱり、アリスは凄いな。

俺なんかよりも魔術の使い方も、剣術も上だ。

「…アリス、頼みがある」

「はい?」

「トーナメント戦までの間でいい、俺に剣術を教えてくれないか?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「常に相手の目を見てください! 手じゃなくて目です」

「お、おう!」

今は放課後、俺はグラウンドでアリスに剣術を教えてもらっていた。

「ルージュ頑張れー!」

「……なんでセレナ達も居るんだよ」

何故かセレナ、クリス、フィリアも俺の特訓を見に来ていた。

「だって暇なんだもん」

「僕も暇だからだな」

「私は別に…セレナに連れてこられただけよ」

「……そうか」

見ても面白くないと思うけどなぁ…

「まずルージュさんは足さばきからですね。 ただ真っ直ぐ走るんじゃなく、常に左右に移動しながら走れば予測されませんよ」

「なるほどな…」

確かに俺はいつも風加速で突進していた。

だが左右に移動しながらとなると風加速の制御が難しいな…

「では早速やってみてください」

「おう!」

アリスから少し離れる。

足さばきは基本中の基本なんだろう。 

ディノスは多分足さばきよりも実践を優先させたんだろうな。

「いくぞ! 風加速ウィンド・アクセル!」

風加速を使って言われた通りに左右に移動しながら走るが、なかなか上手くいかない。

上手くいかないどころか、制御を間違えて転んでしまった。

「んー…難しいな…」

「分かりました」

「ん?」

アリスが真っ直ぐ俺を見る。

何が分かったんだろうか。

「ルージュさんは何をするにも魔術を使ってますよね?」

「あぁ…そうだけど…」

「それ、禁止にしましょう」

「へ…?」

「これからトーナメント戦までの間、魔術の訓練以外で、一切魔術を使わないで下さい」

魔術を使わない…? 

「魔術を使うのをやめて、剣術だけに集中すれば、きっと強くなれますよ」

確かに、剣術だけを練習すれば上達するとは思うが……

「俺…魔術使わなかったら多分かなり弱くなるぞ?」

炎斬も風加速も使えないとなると俺って何の取り柄もないだろ……

「だからこそですよ。 絶対に魔術を使ったらダメですからね!」

「は、はい…」

この日から、俺の魔術禁止生活が始まった。

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